無能の賢者、迅速の賢者を助けない。
前回登場した『迅速の賢者』、その覚醒を振り返り、無能の賢者のことを知っていこう。
私、迅速の賢者ことキリエ=クモガミは、無能の幼馴染だ。
幼稚園の頃、まだお互いに覚醒していなくて、お互いに、どっちが強いとかなかった。
「俺が賢者になって、魔王を倒してやるよ」
「おおー」
当時の私は容易く信じた。
それが15歳になると…
「おいクロイツ、お前おっせ〜な!」
「任せろ、賢者になったら早くなる。」
他の男子よりも、明らかに弱いクロイツ、それでも賢者になれば、パワー系でなくとも、確かに常人の数倍の運動能力を得る。
「賢者って、自分でなるとか、そういうんじゃなくね?」
私も、小学校低学年のときに言った。
「はあ、だから俺がなるのは確定事項だから」
謎の反論…
賢者になるねぇ…って思った瞬間、私の体が輝き出した。
「うお!キリエが光ってる!?」
教室中が、ざわついた。
「覚醒!?」
「覚醒だ!」
「うおおお!」
まわりが騒ぐ中、両手のひら光を見ながら、不思議な感覚に包まれた。
おそらくスキルを習得したことにより、感覚が鋭くなった…というより、新たな感覚が生まれた。
「出来る」
教室の窓から外に出た。
「うわ?はッや!」
私の能力は、素早く移動すること、それは空間を自在に移動でき、身体能力に依存するが、ピタリと止まれて、急停止の反動もない。空中でも止まれるし、上下左右関係なく、壁も天上も空間も、自在に走り回れる。
「これは…すごい…」
自身の力に驚きつつも、その日の家に帰ると、お迎えが来ており。
「では、王の下に参りましょう。」
王の謁見室に入ると、すでに王が座っていて、何故か私の隣にクロイツがいる。
「力に目覚めし、二人の賢者よ」
「はい」
クロイツ返事してる!?いつの間に?あっ返事!
「…はい」
「ある程度の戦闘や戦術というものは、習っているだろうが、最初に試させて貰う。」
「なにをすればよいのでしょうか?」
「簡単だ、演武場で魔物と戦ってもらう。」
「きたか…俺の力が解き放たれるとき…」
コイツ死にそ〜
「スグに死にそうやセリフだが、魔物といっても、賢者でなくとも倒せる程度、魔物と戦う覚悟を見る為のものだ」
合図を出すと、近衛兵が私達を案内してくれた。
「ところでいつ覚醒したの?」
「家に着く直前で、誰も見てない。そんで家についたら、お迎えが来てた。」
「ここですどうぞ」
賢者に対する近衛兵の態度は、礼儀正しいとのだった。
「うっわ、完全に闘技場じゃん」
クロイツの言葉もわかる。
足元は砂地、取り囲むように塀、観客席、そして観衆。
「キリエ、観客の中に賢者がいる。」
「本当だ!力の賢者もいるじゃない!」
すでに力の賢者は覚醒しており、超有名人だった。
「では、新たなる賢者の二人よ、お前たちには、ここで戦ってもらい、その能力と動きを見せてもらう。」
つまりは、他の賢者がそれを見て、どの賢者と同行させるのか決める。
出て来た魔獣はワードック二匹、鎧や装備がいつもより軽い、私の基本能力がバク上がりしているのがわかる。
開始の合図と同時に、緩やかな階段を走り込むように空間をかけ、ワードックの頭をサッカーボールのように蹴飛ばした。
感触でハッキリ、ワードックの頭蓋が割れたのがわかる。
もう一匹の頭も、私の足元の高さ、切り返しの反対の足で、蹴り飛ばすと、眼球を飛び出させて地に伏せた。
「おいおい、俺の分取っといてくれよ」
クロイツが最初に蹴った方に近づいた。
もう倒しているが、一応立っている。
「ごめんな、俺も一応、見せといたほうが、良さそうだからな」
かろうじて生きていたワードックが、最後の一撃を繰り出してきた。
この世界では、命を奪う感覚に慣れるため、食料にする動物の解体の授業があり、殺生でなく、必要なものだと習う。
右からワードックのハンマーが、クロイツの頭部を歪ませていく。
当然苦手なものもいるが、それなりに慣れていく。
歪んだ頭部は、一瞬三日月のようになり。
私は慣れて、何ともなかったのだか、目の前で人がとなると…
「うっわ、歪みすぎて、反対から汁飛び出てる!!」
血ではなかった、強化された能力で、ハッキリと、そのさまが見えた。
最後一撃を放ったワードックは倒れたが、魔獣に油断する愚かさを理解した。
心臓が信じられないほどバクバクしていて…
それは食らったクロイツは…
「死んだ……」
は〜い、次回の無能の賢者は〜
どうも、近所の猫です。
にゃーニャニャ
ニャ~ニャニャ〜ニャ
ニャ〜ニャニャ、ニャーーーニャニャ!!
三本で〜す。
じゃん、けん、にくきゅ〜〜〜う♪
口の中はドブの匂いニャ!んがくっく