無能の賢者、凱旋をしない。
無能の賢者の助けを借り、魔王のコアを完全に消滅させた力の賢者、国に凱旋となるが…
甲高い声が聞こえる。
「無能!力の賢者は大丈夫」
この赤髪ショートヘアーの女性は、迅速の賢者、魔王が倒されたことにより、他の魔族が消滅したり弱体化したことにより、無事勝利、一番にこの場に駆けつけた。
「俺の活躍で魔王は倒したぜ!」
クロイツは、ビッと親指で自分をさす。
「ふ〜ん…」
懐から、ギルド支給の鑑定眼鏡を取り出し、二人をマジマジと見る。
「この無能!なにが俺の活躍だ!アンタ経験値入ってねぇ〜じゃね〜か!!」
そう、まぐれでも、魔王を倒したのは力の賢者、どんなに重要であったとしても、結果と証拠が残ってないのである。
「クソがァア゙!!」
だが悲しいかな、常人以下の能力では、到底他の賢者には敵わない。
なんなら、戦闘に参加しない作戦参謀、知の賢者にすら勝てない。
「どうせ、なんか卑怯なことでもして、魔王の気を逸らした程度でしょ?」
「それがスッッッゲェぇ〜重要だっつーの!ッつーの!!」
「はいはい、おまろおもろ」
「力の賢者が目覚めたら!絶対に俺の活躍を認めるんだからな!!」
「はいはい、でも実質、無能に魔王を倒す力は無いでしょ!」
「はァア゙あん?だから何だっつーんだよ!」
「国民も、みんなそう思ってるって話よ!」
「いやだ!凱旋パレードでは俺こそがメインだ!!」
「だとして!」
「だとして?」
「国民がアナタに、どんな声をかけるか想像して!!」
「どうって…」
紙吹雪の中、笑顔で手を振る俺、国民達は笑顔で口々に…
「無能最高〜w」
「流石無能w」
「マジ無能w」
「無能が卑怯な活躍をしたってよ〜w」
そして沸き起こる無能コール…
「むッのッうッ!むッのッうッ!あっそれ!むッのッうッ!むッのッうッ!」
「あれ?なんだか俺なきそう。」
「いや!ないてるって!!」
目から涙があふれていた。
「ダメだ…俺、凱旋できない!!」
こうして、凱旋パレードを断念した俺は、城の塔から、賢者達の凱旋を遠く眺めていた。
「フッ…所詮オレは歴史の影…光の下では生きていけない…」
せめてものカッコつけの途中…
「無能!なにを言ってるの!」
縦巻きロールを後ろで束ねた、甘ロリファッションの少女らしき存在が声をかけてきた。
「わお!知の賢者か…なに怒ってんの?」
「お前!私はワサビと言ったの!」
「効いたんだから良いじゃん!?」
「な〜〜〜にが効いたからイイじゃんよ!!最終決戦で!奥の手薄めてんじゃねぇ〜わなのッ!!」
もとの作戦では、スライ厶系統の力も持つ魔王のコアを、強制的炙り出すために、目や鼻といった粘膜に浴びせ、生体反応を引き出す作戦だった。
「それをお前!直前に力の賢者が倒したイカのモンスター食うのに使うって!ッッッたく!な〜〜〜〜に考えてんの!!」
「イカ刺しにはワサビ醤油だから…」
「だからって!なんで半分も使うの!」
「だから量だけは何とかと思って…」
「無能がイカ食ってるから!最終決戦でも遅れるの!!」
「うう…ちゃんと活躍はしたのに…」
その頃、凱旋パレードでは、力の賢者が、国民に手を振りながら、迅速の賢者に話しかけた。
「無能のヤツ来なくて良かったのかな…」
「いいんですよ、あんなの」
「正直、ここまての戦いで何度も救われた。魔王戦だって、アイツが居なければ負けていた。」
「いいのよ、どうせ国民には、わからないし!経験値という証拠もないし…」
ったく、アイツったら…
「能力も結果もないか…」
力の賢者がそう呟いた頃、パレードを見下ろす城の塔では、無能が、よくわからない捨て台詞を言い、泣きながら走り去っていた。
「お前のか〜ちゃん、き〜せ〜き〜!!」
「私の母ちゃん奇跡!?なんなの?バカなの?」
いや…バカなのは…無能は間違ってなかったと、言えない私なの……
何事にも誕生がある!無能の賢者はどのように生まれたか?
次回 無能の賢者部活辞めるってよ!
次回もサービスサービス♪