Sheet3:昇順
アキラはエルに言われるがまま、5桁ずつに改行を入れた円周率をエクセルにコピペした。
「ほい、出来たぞエル。次はいよいよ暗号だな」
『ギヨムスイタンテライジムンヲツノノラウイ』
「これをまた一文字ずつセルに入れるんですよね?またテキストエディタで加工?」
育美が聞いた。
「いえ、今度はエクセルでやりましょう。円周率入れた隣の列にコピペして」
エルはアキラに指示を出す。
「うん、一番上にコピペした」
「じゃあまずそのセルの書式設定を開いて"折り返して全体を表示する"にチェックを入れて。そしたら列の幅を一文字より小さくしてみて」
暗号は縦書きの様になった。
「ん?これ、縦に表示されてるだけで、一つのセルだよな」
「んふふ、ここからですよ。」
エルは楽しそうだ。
「このメニューのとこ、"フィル"っていうのあるでしょ。その中の"文字の割り付け"選んでみて」
エルに言われた通りにすると、暗号は一文字ずつセルの中に収まった。
もう、アキラも育美も分かっている。
「これで準備万端だな、あとは円周率の列を"小さい順"つまり昇順に並べ替えるって事だろ」
アキラはエルの返事も待たず並べ替えを実行した。
『ツギノスイヨウライテンジンライムヲタノム』
「えっと、次の…水曜来店…ジンライムを頼む」
アキラが読み解く。
「次の水曜って…明日じゃないですか」
育美が言う。
「あっぶねえ、ギリギリだったな」
アキラはサイトのお問い合わせとか全く見ていない。
エルに任せっきりなのだ。
「えー、要するにこの暗号を作った人が明日店に来るって事?」
エルはちょっと不安になった。
接客業をして半年以上経つが、元来人見知りの性分なのだ。
「そういう事になりますね。私も明日また来ます。勝負に勝ったんですからドヤってやりましょうよ」
育美は乗り気だ。
アキラはというと、
「うーん、何かスッキリしねぇな…」
「どうしてです?」
育美の問いかけにアキラは、
「だってさ、クイズ出されて正解して、はいよく出来ました〜…で、こっちの勝ちになるのかな?どっちにしろ相手の手のひらの上って感じじゃん。何かこう、相手にも一泡吹かせたくないか?」
うーんと、育美はひとしきり考え込んだ後、
「じゃあ、相手がジンライムを注文する前に『あなたが"薔薇筆"さんですね』って特定するのはどうですか…出来たらですけど…」
「来る客全員に聞けばいいけど、それこそ負けた感じがするからな…まずは人物像をプロファイリングしてみようか」
育美とアキラはクイズを作った人物に興味があるんだなとエルは思った。
エルはクイズの出題者より次のクイズがあるのか、そっちの方が気がかりだった。




