行と列のタイルSheet1:挑戦状
その店はN市の歓楽街の外れにある。
スナック『エンター』。
性別不詳の店主アキラが営む小さな店。
従業員は自称異世界から転移したエルフのエルただ一人。
エルは耳の形がややユニークなだけで、特段魔法が使えるわけでもない。
客の大半は耳だって特殊メイクで、単なる客寄せの為の話題作りか厨二病をこじらせたキャラ付けだと思っている。
北欧系の顔立ちから不法滞在の外国人じゃないかと勘ぐる客もいる。
そんなスナックにはちょっと風変わりなホームぺージがある。
エルがスキルアップも兼ねて作った習作ともいえるシロモノ。
とはいえ風変わりなのはメインビジュアルだけで、構成はいたって普通である。
ある日、一応付けときました的なお問い合わせページからクイズの様なものが送られてきた。
エルの紹介に、
「特技はエクセル。IT全般お困り事がありましたら相談ください。」
とあったから、エクセルを使って解いてみろといういわば挑戦状みたいなものだろう。
こんな内容だ。
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お名前:薔薇筆
お問い合わせ内容:
『ギヨムスイタンテライジムンヲツノノラウイ』
パイ100コ。5個ずつ分けて小さい順に並べよう。
ヒント:頑張ればエクセル無しでも解けるよ。
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「どう思う?」
アキラは店の常連かつチーム『エクセレンター』の一員である育美に聞いた。
渡されたプリントアウトを見ながら、育美が言う。
「パイが100個ってたくさんありますね。普通は大きいのを切り分けるじゃないですか」
「だよなぁ、パイ生地のちっちゃいお菓子だろうか。ほらこういうやつ」
アキラは手元にあった"スナック盛り合わせ"の中の個包装された一口サイズのお菓子を取り出した。
「うん、これなら1人5個ずつで20人に分けられるか。あと"小さい順"は?小さい子から配るって意味かな?」
そんな事を話してると、ノートPCを持ったエルが店の奥から飛び出して来た。
「アキラ!分かった…あ、育美さんこんばんは」
「こんばんはエルさん。分かったって、コレの事?」
育美はプリントをヒラヒラと見せた。
勘の良い方ならもう見当付いてるかと思いますが、今しばらくお付き合いくださいm(_ _)m