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別に好きな人ができたから婚約解消したいと友人とその婚約者から相談されました・・・

作者: 光井 雪平

「婚約を解消したい!?」


 俺は突然の友人の告白につい大声を出してしまう。友人であるエアルは焦った様子を見せる。俺はすぐさま大声を出してしまったことを謝る。そして、声を抑えて尋ねる。


「で、いきなりなんでそんなことに?お前と彼女別に仲が悪いわけじゃないだろ」

「いやそうだったんだけどな。そのな、あの」


 エアルはしどろもどろになり、言葉がつまりはじめる。俺は嫌な予感を感じ取り、そうではないことを願いながら尋ねてみる。


「ほかに好きな人でもできたのか?」


 エアルは突然の衝撃を受けたかのような反応をした後、黙り込む。その反応で十分だった。


「お前なぁ。いくら三男だから、家を継ぐ必要がないにしてもその理由で婚約解解消したいのか」


 俺は少し、いやかなり呆れてしまう。ため息がついでてしまうほどだ。


「わかっている。わかってはいるんだ。だけどな気持ちが抑えられないんだよ」


 俺はエアルのあまりの必死な様子に心が折れそうになるが、よくよく考えなくてもエアルの婚約者であるルミーナ嬢に不誠実すぎる。それにルミーナ嬢の今後のことを思えば全く承諾できない。そのところをどう考えているのだろうか。


 エアルにルミーナ嬢の今後について問う。


「ルミーナ嬢には悪いと思ってる。だから最大限今後も支援するつもりだ、できる限りの。それに俺の友人の一人である伯爵家の跡継ぎにもなるやつが婚約者を探してる。それにルミーナ嬢を勧めるつもりでもいる」


 そのあとも色々と言ってはくれたが、甘さを感じてしまう。俺のその内心がわかったのだろう。


「頼む。ルーク、お前しか相談できるやつがいないんだ。俺を見捨てないでくれ」


 エアルは懇願する。俺はそれをみながら、いたたまれない気持ちになってしまう。


「エアル、俺はお前の自分勝手な言い分に賛同できない。だが、友人のよしみだ。今後も話だけは聞いてやる」


 エアルは「それだけでも十分だ、ありがとう」と言ってくる。俺は今後のことを思うと、少し億劫なところもあるが、大切な友人のためにやれること、話だけは聞いてやろうと思う。それに話を進めれば、エアルの馬鹿な考えもなくなると思ったからだ。


 そして、俺とエアルは少し話をした後、別れた。


 俺は自分の家に向かう馬車の中で、大きくとても大きなため息をつくのであった。


 三日後、俺はまさかの相手の招待を受け、その人物のもとへと向かっていた。その相手はエアルの婚約者であるルミーナ嬢であった。エアルと話をして家に帰ってきた日、エアルについて話をしたいことがあると手紙が来ていたのだった。


 俺はどんな顔をして会えばいいのかと思っていた。エアルの本心を聞いた直後に会うことになる。もしかしたらエアルの様子がおかしいことに気づき、相談されるのかもしれない。俺はその時、どんな話をすればいいのだろうか。


 ルミーナ嬢に会うのを断ることもできたが、問題の先延ばしにしかならないと思い会うことにした。自分の胃がきりきりと痛みながらも俺はルミーナ嬢に会うことにしたのだ。その結果がどういうものになるかをあまり考えないようにしながら。


 ルミーナ嬢に会うと、ルミーナ嬢から「顔色が悪いですが大丈夫ですか?」と心底心配された。俺は「問題ないです、全く」と強く言ってなんとかルミーナ嬢をごまかす。


 だが、俺は全く予想だにしない話をルミーナ嬢の口から聞くことになったのだった。


「エアルとの結婚を解消したいのです」


 それを聞いた瞬間、俺は口がポカンと開いた。そして、「冗談ですよね?」と少し経って尋ねる。ルミーナ嬢は首を振り、「本気です」と答えた。俺はどういうことなんだ?と思ってしまう。こんな短期間にお互い婚約解消をしたいと言ってくることになるのか。お互いが協力して俺をだまそうとしているのかと思ってしまう。


 だが、すぐにそんなことをするメリットがないと思ってしまう。ゆえに恐らくこれは本音なのだろう。


「理由をお聞きしてもいいですか?」


 俺の問いに、ルミーナ嬢はとても小さな、か細い声で辛うじて聞こえる声で言った。


「別に好きな人ができてしまったのです」


 と。


 俺は天を仰ぐ。そして、ため息をつく。ついてしまう。


「わかっています。呆れてしまうようなことだとは、でも本気なのです」


 ルミーナ嬢は真っ直ぐこちらをみながら言った。俺はつい最近同じようなことを聞き、同じような視線を感じたなと思ってしまう。

 そして、俺はこれからどう対応すればいいのだろうかと思ってしまう。エアルも同じ気持ちであることを伝えるか、それとも伝えずにいるべきか。


 俺はしばらく、黙り込んで考え込む。ルミーナ嬢には少し悪いが。


 そして、俺は決めた。自分なりに考え、自分なりに二人のことを思ったがゆえの答えを出す。


「ルミーナ嬢、私は先日エアルからとある相談を受けました」

「相談?」

「ええ、その、ですね。ルミーナ嬢との婚約を解消したいとの相談です」


 俺は真正直に伝えることにした。間違っているかもしれないが、どちらかというと俺は解放されたかった。お互いの本心を聞いて、その中で相談を聞き続けるのは俺の精神がおかしくなると思ったのだった。


「それは本当ですか?」

「ええ。理由もあなたと同じです。別に好きな人物ができたのだと」


 俺は伝えてしまうことに罪悪感を感じながらも自分が知っていることをすべて伝えてしまう。ルミーナ嬢は少しショックを受けた様子を見せる。


「ルーク様。その、ありがとうございます。私にそれを伝えてくれて」

「いえ、お気遣いなく」


 そして、俺とルミーナ嬢は今後について話す。俺がエアルにルミーナ嬢に話してしまったことを伝えるということ、そして、エアルのほうからルミーナ嬢にその婚約解消についての話をしてもらうという風に話を決める。


「ルーク様。私たち二人のことで色々とご迷惑をおかけして申し訳ございません。そして、ありがとうございます。私たちのために色々と気を回していただいて」

「友人のためですから」


 俺は自分でもかっこつけな発言になるなぁと思いながらそう言った。


 そして、俺はルミーナ嬢と別れる。家につくやいなや俺はエアルに手紙を書く。エアルへの謝罪と今後についてすべきことを伝えるための手紙を。


 その手紙を書き終え、それをエアルに渡すように指示を出し終わった後、俺にどっぷりと疲れが襲い来る。俺は二人がうまくいくことを願いながら、そのまま机に突っ伏して寝るのだった。


 ルミーナ嬢と話してから一週間がたった。その間エアルには一度あった。その時、感謝と謝罪の言葉を口にして、二人で相談する機会を設けるとの話もあった。その相談が終わったのだろう。俺は二人に会うことになった。


 俺は話がどういうふうになったのか、二人にとってより良いものになることを願っていた。


 二人はさわやかな顔で俺を出迎えてくれた。そして、三人で話すことになる。だが、そこで俺はまた予想だにしていない発言を聞くことになる。


「「婚約を続けることになった(なりました)」」


 二人のそろった発言を聞いて、しかも爽やかな笑顔であったことに俺は驚きを覚える。


「えっいやいいのか。二人は婚約を解消したかったんじゃ」


 俺はひどく困惑した。だって婚約を続けることになったのなら、そんな爽やかな笑顔が出ると思わなかったからだ。


「いやあそのな、ルーク。まさかの事態があったんだよ」

「ええ、とてもびっくりなことがありました」


 ニコニコしている二人をみながら俺は何があったんだよと思っていると、その答えは全く予想だにしていないものだった。


「俺の別に好きなった人がルミーナだった」

「私もそのお相手がエアル様でした」


 二人のお互いに恥ずかしそうにみながらお互いをみながら言ったその発言を聞いて、俺は衝撃で固まってしまう。


「待ってくれ、どういうことだ?」


 俺は困惑しながらも辛うじて尋ねる。するとエアルが話してくれた。


 お互いが好きになったひとはお互い自身だったというのであった。お互いいつもと全く違う雰囲気にもなってしまう変装をしていた時に、会った。その時、お互いに好きになってしまったのだという。そして、それに婚約解消の相談の時に気づいたのだという。


「俺の心労はなんだったんだ」


 俺はそう言って、がっくしと肩を下ろす。何のためにあれだけ気を回し、疲れ切ったのか分からなかった。


「本当にすまない」

「申し訳ございません」


 二人は頭を下げてくる。続けて、二人は


「だけどさ、お前のおかげで。俺たちは幸せになれそうだ、ありがとう」

「ええ本当にルーク様のおかげです。ありがとうございます」

 

 と、俺に感謝の言葉を伝えてくれる。俺はそれを聞いて、少し報われた気になる。だが、それでも納得いかないというか、怒りは少しある。


「今度何かあっても、もう俺を巻き込まないでくれ」


 とつい言ってしまう。それを聞いた二人はもう一度謝罪をしてくる。息ぴったりで。


「まあでも良かったよ。二人とも幸せそうで」


 俺は二人が幸せだからいいだろうと思って自分を納得させることにした。二人に怒ってもいいのだが、怒ってもしょうがないという思いがあった。というかもう呆れてしまったのだった。


「本当にお前のおかげだ」

「ルーク様のおかげです」


 二人のその言葉を聞いて、俺は納得することにする。といっても完全に納得はできなかったので、俺が欲しかったものを買わせることにした。

 そして、俺は二人の幸せそうな笑顔を見て、まあ少しはよかったかとも思う。友人が幸せそうにしている。不幸せになっているところを見るよりかは良いだろう。


 そう思いながら、その後、俺は二人とくだらない話をするのであった・・・


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