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SIESTIA GIRLS  作者: 矢滝 夏
5/5

Number4:Day−Human rights look out over A地点”

ガギィィン…ィィ


ー崩壊の鐘とともに鳴り響く重く鈍い高音

波紋状に音は広がる


ギィイイイ


「隠れたって無駄だぜ?」


教会の扉の銀装飾の金具に洸夜鉄と金鉄鋼で出来た頑丈な扉は折れ曲がり、中の木材が剥き出していた。


左腕の傷が、ドクッドクッと脈をうち、ヒリヒリと疼く。


血が溢れて止まらない。


突き刺すように痛む熱傷は、じわじわと確実に体全体を蝕んでいた。


「ここまで、逃げたのは褒めてやるよ、子猫ちゃん」


ふひひっ……フハハハハハハ


ー手のひらを、目にあて天を仰ぐ男。


逃げて、隠れてみっともねえなあ〜



!………うっ


今にも意識が遠のきそうだ。

脳が揺さぶられ平衡感覚を失った体を厚い木片と一緒に体の内に抱き寄せる。


………


ーーーーー


何百万と世界各国で招集、戦地派遣された人々


家族を持ち、養う立場にあった人間ですら、国家を守る為に犠牲になった。


アリスに狩られる為の道具であり、餌だった。


人類の過ちの結果と最大の屈辱がはらんだ禁忌

ーアリス殲滅作戦


突如として現れた

1人のアリスが成し遂げてしまった行為は、「最初のアリス」という名で畏怖と脅威を世界に知らしめた。


人類が持ちうる全ての武器、兵器は意味を無くし、核さえも効かない。街を次々と犠牲にしても無意味だった。


世界を救う戦士として猛々しく戦場へ向かった男達は、

数秒の命が経過した後、酷い顔に変貌を遂げた。

泣き叫び、助けを求め、無惨に何も言えぬ悔しさを残して、戦場で消えていく。


彼女達は、数々の戦争と紛争で通りすがり、出くわした女、子供も見境なく〇〇した。


過去のデータベースに残る記録には、

その時のアリスの顔は、笑っていたと言う。


赤い涙を流して………。




そう、そうさ。


それがあの時の俺だ……


そうだった……。


フハハハハハハ


思い出したぜ


あの日、憎くて憎くてどうしようもなかった。

この気持ちを何処にやればいいのか、もがき苦しんだ。


俺は無性に何かに駆られ、ただ何を残すでもなく、使命感のようなものだけが突き動かしていた。


掠れる意識を目の前に見た最後の光景は白く細くにやけた笑み。見下す軽蔑の眼光。

その大きな悪意の前に、どうしようもなく無力な自分。

膝をついて、助けをこう。全力の叫びが胸から、かよわき息とともに放たれる。


両親、姉の亡骸を踏みつけ、笑い続ける顔が目の前に来たとしても、一緒に笑うしかなかった。


「無様だな…人間」


泥臭い香りを嗅がれ、高揚してゆく赤き目。


髪を掴まれた後に、皮膚ごと引きちぎられた傷跡は、男の頭に証として残っていた。


去り際に魅せる背中、手を口にあて、キスの動作をする。


それは、まるでアリを捻り潰すの楽しみ

微笑む人間の残虐性が産んだ怪物そのものだった。


垣間見える喜びとは何なのか。


虐殺行為を行なってきた人類の歴史をも消し去る程に卑劣極まりない強烈なこの出来事は、人類のブラックボックスとなっている私達アリスに強大な重荷として残った。


ーーー


不動の存在と謳われた最初のアリス含む○体のALICE1シリーズは最終的に人類が作り上げた絶大な力を誇るもう1人のアリスによって滅ぼされた。


戦場に残った傷跡は、世界に永遠に語り継がれる。




恐れられたアリスの名が泣くぜ?

無敵、残虐非道な人体兵器様がよぉ。

迫り来るものを全て薙ぎ払う


あぁ、…またか……

夢を望んで見ようとしないアリスが見る夢

あの男の記憶……


ティアは、壇上の大きな十字架を前に目を虚に見開く。


息を整え、精神を集中する。


身につけている十字架のペンダントにキスをした後、礼拝堂の壇上の影に沿って服に絡まった木片を投げ捨てる。


カラン…カランカラン………。


「なんだぁ?もうおしまいかぁー?」


「わたしは、逃げるつもりはない」


「フハハハ、それがあの世に行く前に残す最後の言葉かよ!」


巨大の体を動かし、ガトリングで掃射する。


それに反応した黒き影は赤く目を照らし、俊敏にラインを描く。


重厚なレンガ造りの壁を伝い、天井の〇〇〇が描かれた「〇〇〇〇〇」に黒い芽を残しては、咲き乱れる花びらの様に弾を交わしてゆく。


動き続ける目標にヒットすることなく、粉々に砕けちってゆくステンドグラス


「おい、まて!、生きて捕縛しろとの命令だ」


「うっせえ!今いいとこなんだ」


「俺様に任せときゃいいんだよ!おらあ!」


身を潜め、グロックに弾を装填する。

ー残り弾倉に余裕はない


手鏡を男の方へ、そっと向ける。


ーなんだろう、やはりあの男だけ、雰囲気が違う。


「やめろ!」


「仕方ない…」


男が擬似魔導銃を無数の銃弾を放つ男に向けた時、切り裂くように鋭い鎌が巨大男の前に突き刺さる。



「やめなさい」



ー諭す


美しく律儀で切実。


さっきまで威勢よく弾を乱射していた男が、萎縮しているのがわかった。掠れた声で小さく反応する。


「おぅ……」



カツッ……カツッ……。



ーハイヒールの音



つるやかな声で教会全体に透き通るような高い声で背丈が低い女が入ってくる。


「ハイデン」


「〇〇か」


No.051AO3の相手は〇〇に任せて私たちは帰還するわよ


緊急の要件か?


コクッ…


緊急の要請通信連絡が〇〇から直接入った。


わかった、すぐ向かおう


黒い髪に、青の瞳の少女は、ティアに気づくも颯爽と去ってゆく。



「………」


男はニヤリと笑って魅せた。


「これで、たっぷり遊べるな」


「ズタズタに切り裂いてやるぜ」


「………」


「口がついてねえのか?」



頭にプチプチっとポップコーンが弾けるくらいの血管の血流の跡が男の額に枝状に表れ、顔が真っ赤になっている。


「この白髪のアリスもどきが」


「アリスは嫌われるべき忌むべき存在だ」


「ゴミ屑と消えろ」


男が大きく身を乗り出し、聖火殿に備え付けてある大鉈を手に勢いよく襲いかかってくる。


その時っ…!



パリンッ


ー!?


「ちょっと待ちなさいよー!」

「ききづてならないわね!」


壊れたステンドグラスから姿を表す2人組。


「なんだぁー?おまえら」


「このわたし、〇〇〇〇〇〇〇が来たからにはもう大丈夫よ!」


「安心しなさい、ティア」




「戦闘中だ、ボケェ!」


大男の全身の筋肉が膨張しては、収縮して白煙の蒸気を発しながら白眼でガトリングのトリガーに引き金をかけようとしていた。




「デルフィン!」




すかさず、手を前に差し出し、目標に向かって命令する。


「貴様、我が主人に不敬を許さん」


「いけすかねえ野郎だ、木っ端微塵にしてくれる」


「かかってきな、眼鏡の旦那」


「後悔しないことだ」



男は、アリス契約の証、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇の十字架〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇



???


「散れ、げろう、貴様は美しくない」


???


「•••




クソッたれが…


男は膝から崩れ落ちる


「…


一瞬の沈黙を前に、現実が1つ消えゆく。


大量の血が静かに噴き上げながら、教会全体を満たす。

肉塊の噴水を前に、眼鏡の男は、容赦ない眼光を倒れた男に向け、血に染まった鑑賞展示用の花瓶を手に取り、花だけを男の脇へそっと置く。


後ろに結んだ黄茶髪の女は、ゴシック調の黒薔薇と赤、黄色の奇抜なデザインファッションの服を身に纏っていた。


壇上の上に散らばった硝子を跳ね除けて、座った女は、左脚を右脚に組み、左手を頬にあてていた。


私、いつも思うんだけど、そのセンスのない後始末もろもろ、どうにかならないのデル。


「はっ!申し訳ありません、お嬢さま」




「まぁ、いいわ、No.051AO3無事?」


「問題ない」


スカートに被った埃をはらう。



ティア……



ん?



ティアって呼んで



あまり、その呼ばれ方、好きじゃない…。



そう? …



女が彼女の前に、身を移す。


じゃあ、ティア、


あなた 悪いけど 今ここで死んでくれるかしら?


えっ………なにっ



パンッ!



最後には、地面で踊る空薬莢の音だけが、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇された十字架の前で轟いた。


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