Number0:SIESTIA GIRLS and weapon
夜は冷たい。
儚く散ってゆく願いは何処へ向かって行くのか。
列車の中の小窓に軽く息を吹きかけると透明なガラスの先に見える風景が曇ってゆく。
黒い髪に黒い瞳の少女は、帽子を深く被り、つまらなそうにしていた。
銀コートのポケットから、カセットテープを取り出す。
外に見える光景に、視線を委ねながら顎に手をのせ、車窓の淵に肘をつき、目を静かに閉じる。
ハードロックにも似た、それでいて洗練された静かなメロディーを奏でる曲調のカントリーミュージックに気分をのせて走らせている。
とても心地よい時間が、彼女を包む。
車列前の扉から、黒いコートを羽織った女が彼女の対面に座り、腕を組みながら、脚をもう片方の脚にのせた。
「仕事だ」
黒いサングラスをかけたその女は、胸の内ポケットから銀製の愛用しているであろうタバコケースとオイルライターを取り出し、煙草に火をつける。
黒コートの女が視線を向ける曲を聴いていた彼女は、アリスと呼ばれる先天的、後天的に超人的な素質を持つ者の1人。
少女の名は、ティア。涙の意味を介する彼女は、国営の孤児院で育てられた。出生は不明。唯一身につけていたペンダントが、彼女自身を証明するものになっている。
裏には涙と孤独の意味を刻む文字が彫られいる。
特殊加工が施されている文字は、どんなに傷つけようとも消えない。それは過酷な運命から少女を守ると言いたげだ。
ペンダントの中身には、1枚の写真、ティアの父と母らしき人物と真ん中には赤ん坊の小さな彼女が母親の腕の中で抱かれていた。
表には、家紋なのか紋様と未知の物質とも呼ぶべき宝石が埋め込まれていて、外せない。
「いつみても、得体が知れないなその宝石は」
「うん…そうだね…」
「好きではないな」
「どうして?…」
「不確定要素が多すぎる物は、判断を鈍く異質にさせる。」
「幸か不幸か、それは身を預ける者の選択では決められないものも、世の中にある」
「たとえばお前の持っているその愛銃」
−グロック17を改造したグロックM19
「武器という概念が明確に行動を左右する」
「武器そのものであるから安心出来るんだ」
「人は安心出来なければ、脆く不安定になる」
「全ては1つに繋がり互いに影響するんだ」
「お前は殺し屋に変わりない。」
「しかし、自惚れは破滅を誘う」
「私達がしている事は、秘密裏に帝国の今後を左右するものになる。」
「無関係とは程遠い…よく考える事だ」
「わかってる……」
「そうか……ならいい」
手に嫌な汗が滲む。
今更、何を怯えているのか。
「お前に本部からの指令が下った」
「先にこれを渡そう」
二つ折りの紙を渡される。
黒コートの女は、颯爽と席を立ち、来た方向と逆の扉から出ていった。
渡された紙の中身をじっと見つめる。
寒さが残る2月。
少女の脚のホルスターは鉄の重みと生命の重みを噛み締める様に振動を感じながら、列車を後に駅を旅立つ。