ゆらりゆらりと貝殻
*黒森冬炎さまご主催の「恋のリフレイン」企画参加作品です。
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ゆらりゆらりと貝が降る
裏返って水底に
君は戻ってくるのだろうか
別れも知らず空虚も知らず
日がな一日駆け回り
君と集めた貝殻だけが
ゆらりゆらりと貝が降る
金魚が遊ぶ水槽に
君は迎えにくるのだろうか
あの砂浜の赤貝マテ貝
名前も知らぬ小巻き貝
持っておいてと笑った君は
ゆらりゆらりと貝が降る
水草陰に金魚たち
君は私を忘れたろうか
窓辺に置いた貝殻たちは
白く色褪せ潮気もぬけて
金魚の住み処を飾るだけ
一人の日々を縁取るだけで
ゆらりゆらりと貝が経る
ガラスの壁に人影映る
「金魚に貝殻あげちゃったの?」と
野太い声が子ども言葉で
ゆらりゆらりと貝が降る
指輪をくれたあの砂浜で
君が選んだ貝が降る
by 黒森 冬炎さま