リコーダーなんて大っ嫌い!!
わたしのなまえはヒナ
リコーダーが大っ嫌い
リコーダーの授業 受けたくないなぁ……
先生の言う通りに リコーダーの穴を指で閉じていく
『上のド』から『下のド』へ
ゆっくり ゆっくり 下がっていって……
あ!!
「ぴぅ―――――」
皆が『下のド』の音を出しているのに
私だけ『間抜けなレ』
やだやだやだ
これがやだ
いっつも小指が届かない
頑張って伸ばしても ちょっとしか穴が隠れない
「ヒナ、また変な音になってやがんの~」
となりのヤスダ君がひやかしてきた
「変じゃないもん!」
ヤスダ君はいっつもいじわる
ちょっと手が大きいだけじゃない
小指が届くだけじゃない
ひどいこと 言わないで
**
最初に1番下の穴を小指で閉じて
薬指 中指 人差し指 親指……順番にゆっくり閉じていく
(これなら大丈夫!!)
そう思ってリコーダーを吹いてみると
「ぴぅ―――――……」
『ド』じゃない音
でも『レ』でもない音
あぁ やだやだやだやだ
ほんとにやだ
小指を見てみると ちょっとしか穴が隠れていない
ゆっくりしっかり閉じたのに……
今すぐ小指が伸びないかな
ほんのちょっとで良いんだけど……
なんで爪は毎日伸びるのに 指は全然伸びないの?
こんなに困っているんだから 少しくらい伸びても良いんじゃない??
「ヤスダ君のバカバカおバカ! どうしたら小指が伸びるの?」
「すぐには伸びないだろ」
ヤスダ君はいっつも素っ気ない
困っているのが分からないの?
届かない小指が見えないの?
「だったら一緒に考えて。私、真剣なんだから!」
するとヤスダ君は 頭の後ろを手でかいて
「しょうがないなぁ……」とつぶやいた
「お前の小指が伸びるまで、俺が『下のド』を大きい音で吹いてやる」
「…え?」
それってつまり どういうこと?
「いいか? 小指が伸びるまでだからな」
そう言って
ヤスダ君はおもいっきり息を吸って
「プォ――――――!!!」
大きい音で『下のド』の音を吹いたのだった
やさしい『ド』に包まれて
ぽかぽか心があたたまる
ヤスダ君 ありがとう
バカって言って ごめんなさい
小指がもう少し伸びるまで
私はリコーダーが大っ嫌い!
<おしまい>
お読みくださりありがとうございました。
皆様のリコーダーあるあるお待ち申し上げます(笑)
もしよろしければ、感想にてお寄せください。
<おまけ・名付け由来>
ヒナ→「ひな鳥」から。かくまい、育み、守る。
ヤスダ→「嫌だ+安っぽい」から。名前をつけてから某有名絵本作品の怪獣と1字しか違わないことに気づく。しかし、他の名字ではしっくりしなかったのでそのままにする。……ってアレ? 山田じゃなかった?? え? 増田?? 結局1字違いかい!(笑)