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お隣の男子

 その日の朝、1年2組教室入口。


時任ときとう君、おはよう」


 いつもの様に音無おとなしが声をかけてくる。


「おはよう」


 それにいつもと変わらない挨拶で応えた。


 教室に入り、自分の席に座ったところで声をかけられた。


「おはよう、ひかる


「……お前、よく飽きないのな」


 そう言って隣に座る男子に目を向ける。


「だって僕達友達じゃない」


「平然とそんな事いわれてもなぁ」


「友達が友達に挨拶するのは普通の事だと思うけど?」


「違うクラスなのに1人待ち受けてるのが普通だっていうならな」


「いいじゃない別に。仲良さそうに見えて」


 ほんと、なんてめんどくさいヤツなんだか……


依人いひとは本当、友達想いだよ」


「そう言ってくれると嬉しいな」


「依人は本当、重い友達だよ」


「そう言ってくれると嬉しいな」


「……依人は本当にキモイ友達だ」


「そう言ってくれると、嬉しいな」


 何、若干効いてんだよ。頑張れよ。


「……ねぇ光、やっぱりキモイって人を殺す言葉だと思うんだ」


「そんな事よりさ、お前毎朝そこに座るのやめたら?」


「そんなことよりって……」


「さすがに音無も迷惑だろ」


「いつも彼女が来たらすぐにどけてるじゃない」


「でもいつもそこで待ってる」


 教室入口を指さす。


「そうだったんだ。それは知らなかったよ」


 そう言うと依人は教室を出て行った。


「音無さん、いつもごめんね。チャイムが鳴るまで僕の席に座っててイイよ」


「え? えと……」


 さすがにフォローに入る事にした。


「そんなことお前にしか出来ねぇよ」


「そうかな? 僕に出来るなら、音無さんにも出来るんじゃない」


「俺の分使っていいから、もっと他人を想ってやっておくれ」


「僕は別に、出来ない事を出来るなんて言ってないと思うけど」


「は?」


「だって音無さんこのクラスに友達いないじゃない」


 俺は、音無へと視線を飛ばす。


「あ、ハハ……」


 ……本当、依人こいつってやつは。


「依人、友達がいない人なら誰でも違うクラスに行けるわけじゃないんだよ」


「どうして? 友達のいない自分のクラスから友達のいない余所よそのクラスに行く事がどう違うっていうの?」


「自分の席がないだろ」


「だから僕の席を自分の席だと思っていいよって言ってるのに」


「そこは進藤しんどう依人の席でしかない」


「座れれば同じ、いやむしろチャンスじゃない」


「なんでそうなる?」


「簡単な事さ、僕の席に余所のクラスの子が座っていたら誰かにどうしてそこに座ってるの? って声をかけられるかもしれない。あとはそこからの展開次第では友達まで発展しそうじゃない?」


「本気でそう思うなら、そこからの展開とやらを音無に教えてやれよ」


 そう言われた依人は不敵に笑いだす。


「フフッ……友達なんかいなくても、楽しくやっていけるよ」


「わからない事はわからないと元気に言えよ。そして、さっさと帰りなさい」


「あ、の……」


 そんな無駄な言い合いをしてると、音無が割り込んできた。


「あまり、みんなの前で、友達がいないとかって言い合わないでもらえる?」


「どうして?」


 依人は不思議そうな顔で問い返した。


「まだ入学して2週間しか経ってないのに、そんな事広められても迷惑というか……」


 音無は少し苛立ちを含ませて言葉を発していた。


 だけど、依人にそんな事は関係無い事だった。


「入学して2週間も経ったのに、浅い話をし合うという意味も含めての友達がいない君に、僕がどう迷惑をかけたっていうの?」


「お前は鬼か」


「ッ!? ひどいよ光、僕のどこが鬼だって言うのさ」


「心だよ、心」


「こ、心かぁ……」


 そのハトが豆鉄砲くらったみたいな演技なんなの? と思っていると、少しの間黙っていた音無が口を開いた。


「……少なくとも、私の席に座られるのは、迷惑」


「僕は君がきたらすぐにでも席を離れるつもりだったよ。そこに居させ続けたのは君という事になるんじゃない?」


「……」


 黙り込んでしまった音無になおも依人は続ける。


「それなのにあたかも僕が悪いみたいに言いがかりをつけるなんて、そうなっていたのは君が勝手にそうしていたからだっていうのに」


「だから、鬼かって」


「光。僕は心を鬼にして言っているんだよ」


「なんでいい人っぽいんだ。気のせいなのに」


「お~い、チャイムとっくに鳴り終わってんぞ~さっさと戻れぇ」


 そうこうしてる内に担任から注意されてしまい、依人は口で応える。


「先生、ちゃんとチャイム聴こえてましたけど?」


「だったらさっさと帰れ! ボケェ!」


「はっ!」


 依人が謎に驚いた顔を見せた。


「忘れていた……ICレコーダーのスイッチ入れるの忘れていた!」


「お前、ホント怖ぇよ」


「僕の日々を音という形で、保存していくつもりだったのに……」


「どんな生き方してんだか」


「OOOO! XXXX! △△△△!」


 キレてしまった担任から怒声が飛び出している。


「なんかすごい怒らせちゃってるな……」


「大丈夫じゃない? あれプレステ語だから」


「OX△□! XO△□! X□O△!」


「俺にはとんでもない事を言ってる様に聞こえるんだけど」


「そう? あれくらい普通なんじゃない。僕は幼稚園児に☆#%※にダイナマイトぶち込んだろか! って言った人知ってるから」


「そのお方なら俺も知っている……俺らで伝説を語り継いでいこう」


「でもまぁさすがに帰るよ……じゃあね」


 そう言って依人は自分のクラスへと帰っていき、俺も音無も自分の席へとついた。


「……よくあんな人と、仲良く出来るね」


「仲、良くはないと思うけど……」


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