お隣の女 1
――朝、目覚まし時計を止める。
「う~ん……」
……ふとんからゆっくりと起き上がる。
そして、カーテンを開く。
「今日もいい天気、と」
学校に行く準備をしようと洗面所へと向かう。
その途中、勢いよく窓が開く音がした。
「兄者ぁぁぁ! このお菓子メッチャ美味しいっすよぉぉ!」
振り返ると隣に住んでいる女が窓越しに立っていた。
「……ふぅ~」
差し出された手には、個包装されたお菓子が乗っている。
「このお菓子、メッチャ、美味しい、すよぉ?」
「お前はなんて優しすぎるんだ……」
「えへへへ、いやぁー私としては兄者とも喜びを分かち合おうと思っただけなんですけど」
普通に照れられた。
「ってかお前こんな朝早くからお菓子食べてんの?」
「まぁ、本当は今日のおやつタイムにでもと思ってたんですけど……我慢できなかったです」
「お前この間、何歳になったんだっけ?」
「20歳っす!」
「……」
そうか、これが幼児退行現象というやつか。
差し出されたお菓子を受け取る。
「これっていくらくらいするの?」
「270円くらいですね」
なるほど大人のお菓子を食べて興奮してるのか。
「ま、いいや。ありがとう。頂くよ」
「はい! ではでは~」
大場さんは眩しい笑顔を浮かべて去っていった。
「今度から戸締りはしっかりしよう」
そう言い聞かせながら、お菓子を開ける。
「……メッチャ美味しい」
なぜか「ニヤリ」と声が聞こえた気がした。