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どじっ娘JKは宇宙人でこの世界を征服するそうです。  作者: 春槻航真
第11章、家田杏里と夏休みの計画
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88枚目

 今日は通知入るの多くないか?普段ぼっちな私からしたらこんな風に立て続けにlineが入ること自体珍しくて仕方ないのだ。次は姫路か、一体何の用事だろう。

『家田さん、来週の水曜日って時間空いていますか。』

 しっかりと句読点を忘れず打ってあるところが姫路らしいと思った。水曜日かあ。あれ……うーんと……予定どうだったっけなあ。

 えーと…………日曜日は遠垣のメイド喫茶、月曜日の午前は沢木の野球部の応援、火曜日は阿部のイグアナの世話、木曜日は武田その他と文化祭のバンドの集まり、金曜日はうちに来る日………うん、大丈夫だ。水曜日は何もない。私はこんな確認作業を数回してから姫路に返信した。

『うん、大丈夫空いてるよ。どうしたの?』

 私はそう送ったのち徐に冷蔵庫を開けた。昼ご飯どうしよう。時刻は10時半。気づいたらスマホと睨めっこしているうちに1時間も経過していた。というか、ここまで予定が組み込まれたというのに、肝心な今日の予定はまだ一つも決まっていなかった。うーんどうしようと思いつつ空っぽの冷蔵庫を直視していたら、またぶーっと鳴った。

『ありがとうございます。一緒に夏休みの宿題をやりませんか。』

 そう返信がきて、私はどてってこけそうになった。遊びの予定じゃねえのかよ!まあいいや。夏休みの宿題はコツコツやる方ではなく一気に片づけたい派だから、私にとっては好都合この上なかった。

『いいよーどこでやる?』

『学校の自習室で午後2時からでいいですか?午前は部活なので、お願いします。』

『わかったー』

 そう返信して姫路との連絡は終わった。彼女も彼女であんまり女子高生らしいlineの使い方をしているように思えなかった。まあ、その方が私としては心持楽だけど。

 というか、私の夏休みの予定やばくないか?いや、最初の1週間に予定が詰まりまくっているのだ。今日過ぎたら全日程で予定があるじゃないか。こんなの、人生初、いや、この星に来て初だ。しかも奇跡的にここまで日程が被っていない。普通直前にこれだけ予定が舞い込んできたら1日くらい被ってもおかしくないのだが、それが今の所なかったのだ。といっても、ここでゲームオーバー。もう予定は全部入ってしまっている。ここから先は断りを入れる方向で行こう。そう決意した瞬間に再び連絡が入った。

『家田ーサッカー見に行かね??Jリーグのチケット余ってるんだよ』

 有田からだった。気だるげなlineだなと思った。スタンプも顔文字もない。もしかして、案外男の子はそういったもの使わないのではないか?沢木は使ってた気がするが。

『そう言うのは遠垣さんと行ってきなよ』

『いやいや誘ったよ。でも2人で行くのは流石に恥ずかしいだろ?』

『恥ずかしいって何よ。デート行ってきなさい。そもそもいつなのよ』

『水曜日だ』

 水曜日か。その日は姫路と勉強会だ。しかも午後からだから、これは断れるだろう。にしても、先に予定があるからって断れるの、結構快感だな。そんなボッチ癖も晒しつつ、私はタプタプと指を動かした。

『ごめんね。その日は姫路さんと午後2時から自習室で勉強するの』

『ならいけるじゃん』

 ん?どうした有田。私は少し呆れた顔をしていた。何がいけるんだ?少しだけ返信を待つと、有田自身が補足を入れてくれた。

『うちの自習室夏休みは5時で閉まるだろ?試合開始夜の7時からだから十分間に合うじゃん』

 へ?私は目を丸くしてしまった。

『競技場、学校からバスで40分で着くから、今後どのバスか送るな。あ、チケットまだ余ってるから、姫路もよかったら誘っておいて』

 そしてなんでもう行くこと前提になっているのだ。そしてなんでそんなに遅い時間から試合開始なのだ。私はいらぬ喧嘩まで売りながら、はーいと答えた。そして姫路に今の話を連絡しながら、ふっと遠垣のメイド喫茶の話を思い出した。

『そういや、遠垣さんからメイド喫茶でイベントやる話って聞いた?』

 有田のこう送り付けた。彼は私以外で唯一メイド喫茶の存在を知っている人間だ。誘っても問題なかろう。

『あーうん聴いてるよ、家田も行くの?』

『行くよー』

『おけー』

 そんなやり取りをしてまたlineは止まった。そうか、もう誘われているのか。案外遠垣と有田は私が思っているよりも仲が進展しているのかもしれない。そう思いながらサッカー場の場所をチェックしようと思ったら、連絡が入った。差出人は結城だった。

 ちょっと待って、結城からの誘いか。私は少しだけした妄想を取り下げ、頭をぶんぶん振って正気に戻した。なんだろう。デートの誘いかな。ってバカ!!そんなわけないでしょ。でも……もしもそうだったらどうしよう。もう、空いてる予定はないというのに。どれか一つ断る??でも……もう既に全部了承してしまっているのに……そんなことしたら……でも結城と遊びに行きたいし……

 私は恐る恐る結城からの連絡を見た。そこにはこう書かれてあった。

『これ、お前の一族?』

 そしてその下には火星で過去に生命体が住んでいた記事が貼りつけられていた。私は少し前の逡巡していた自分を恥じた。そして照れ隠しを込めてこう返した。

『何回も言ってるでしょうが!!!!!!私の母星アルフェラッツ星はアンドロメダ星雲にあるのよ!!!!太陽系にいるわけないでしょうが!!!!!』

『アンドロメダ星雲ってどこにあるんだよ』

『まあ銀河系とはほど近くよ、ざっと97光年ってところかしら』

『ピンと来ねえ』

『光の速さで97年よ。途方もないでしょ?』

『いやぴんと来ねえよ』

『なぬぬ』

『ちょっと、今手元にプラネタリウムのチケットあるから天体について教えてくれね?』

『宜しい!!教えてしんぜよう』

 そう打った瞬間に、私は多大に後悔した。やばい、この日程で一体どこにプラネタリウムに行く余裕があるって言うんだ。いや、来週土曜日以降ならいける。そうだ。プラネタリウムなんていつでも生けるじゃないか……

『これ来週の木曜日までだけど、空いてる日いつ?』

 希望をへし曲げるんじゃねーよ!!!!私は画面に向かって突っこんでしまった。うーん、どうしよう。断ろうかな。いやいやでも……

『月曜日の午後からなら空いてるよ』

 そうだ。まだここに休みがあった。僥倖!!圧倒的僥倖!!

『ごめんそこ空いてない』

 なんでよぉぉぉぉぉぉぉ!!!私は憤慨していた。多大に憤慨していた。これは断るしかないか。そう思って断ろうとした瞬間だった。まるでタイミングを計ったかのように連絡が入った。

『ごめん木曜日駄目になった。来週土曜じゃダメ?』

 武田からの連絡だった。私は少しニヤッとしてこう打った。

『木曜日は?木曜日なら1日空いてるよ』

 そして私は、木曜日10時から結城とプラネタリウム、土曜日11時からカラオケでバンドの集まりという運びになった。

 ……んで、今日はどうしよう。

 とりあえず手帳買おうかなと思い着替えを始めた時だった。今度は電話が来た。相手は母親からだった。

「なに?」

 私はぶっきらぼうに答えつつスカートを手に取っていた。

「杏里?火曜日の昼間開けといて。親戚の子の面倒見るから」

 へ?私が呆然としていたら、電話は切られてしまった。この夏は、少し予定が多すぎやしないだろうか。私は前途に不安を抱えつつも、ぶつぶつと予定の確認に勤しんでいた。夏休み初日、私の夏休みの計画は、最初1週間に凝縮されたかのように固まり切ってしまっていたのだった。

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