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どじっ娘JKは宇宙人でこの世界を征服するそうです。  作者: 春槻航真
第11章、家田杏里と夏休みの計画
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87枚目

 球場はここからほど近い所で行われるみたいだということがわかり行く意志が少しだけ増した状態で、またもスマホが鳴った。なんか今日はよくスマホが鳴るなあと思いつつ、私は地図アプリからホーム画面に戻りlineを開いた。今度の相手は武田からだった。正確には武田と濱野と誰かと誰かのグループlineだった。そこにはこう書いてあった。

『ここから一週間以内で、空いてる日っていつですかー?一回集まろう!!』

 こんな内容が、ギターを持った青年バンドマンがデフォルメ化されたスタンプとともに送られてきた。これはいわゆる文化祭でのバンドのlineだ。都合2名名前も顔も知らないがそれはご愛敬である。ご愛敬ですまないがご愛敬である。このlineに、一瞬で既読4がついていた。

『最後の3日しか無理ですーすみません((+_+))』

 こう打っていたのはかわい子ぶった濱野だった。

『月水金は午前中だけ、それ以外は終日大丈夫』

 ともたそ24世というふざけたlineの名前をしたやつはそんな何の面白みのない返信をしていた。

『問題ないさー!!』

 という質問に答えていない上に訳の分からないスタンプ1つで対応している奴はともざわゆうきというやつだった。名前普通なのに、コミュニケーション取れてないじゃねえか。

 というかこれ、そんなに早く返さないといけないのか???私は少し焦りながらlineを打ち始めた。ここまでの所要時間、僅か1分。みんな1分も経たずに返信をしていたのである。一方で私はというと、まず脳内で予定を確認し、ついでlineを打ち始めていた。遅い。圧倒的遅さ。完全に速さが足りなかった。えーと、日曜は遠垣のメイド喫茶、月曜午前は野球部の応援、金曜は結城たちが家に遊びに来るから……それ以外かな。案外覚えているものだなと少し笑みを浮かべつつスマホをタプタプした。

『日曜と月曜午前と金曜はだめ、それ以外は大丈夫』

 私は速さ重視で端的に送った。これを打つのにも5分かかっていた。おいおい華の女子高生。こんなことでいいのか……

『私、火曜開いてないから木曜日でいい?場所はいつものとこいつもの時間で。やりたい曲とか考えてきといてね』

 いつもの場所のいつもの時間って、なんだよ!!!私分かんねえよ。そう思いながらも、他のみんなはOKだの了解だの送っていた。こいつらなんだ?超能力者か?サイコメトリストか?そう思っていたら今度は武田からの個人lineが入ってきた。

『ここに午前11時集合でお願いします!!なんかしたい曲とかあったら言ってね』

 そうして指定された場所は前言ったカラオケだった。ふーんここによく集まっているのか。実は前のクラス会の時のせいでカラオケ=疲れるイメージがついていたから、恐らく一番疲れるであろう金曜日の前日にあるのは少し億劫だった。それでもまあ、約束を守るのが我がアルフェラッツ星人だ。

『わざわざありがとう』

 と送ると、親指立てたバンドマンのスタンプが送られてきた。やはりスタンプを送るのが普通の女子高生ということだろうか。いやそれよりも曲のことだ。相変らず私はこの星の音楽について疎い。少しくらい勉強してから行かなければ、恥をかいてしまうかもしれない。それは嫌だなと思い、私はYouTubeを開いて楽曲を漁ろうとした。適当に聴いていたら好きな曲にあたるだろう。そういえば、カラオケに行ったときに武田が色々アーティストの名前あげてたな。なんだったっけな。

 思い出し作業に入ろうとしたところで、またスマホに通知が届いた。相手は阿部からだった。これはまた意外な人からの連絡だ。というかなんでこんなにも個人lineを知っているのだ。いや阿部は病院に行った時に知っていたのかもしれない。

 通知内容はこうだった。

『ごめん!!!本当にごめんだけど、杏里ちゃん私の一生のお願い聞いてくれない????』

 ほう、あのしっかり者の阿部が私に頼むことなんて、一体何なのだろう。これは気になるな。

『どうしたの?なにかあったの?』

 私はそう打ってから少し肌寒くなってきたのでクーラーの温度を少しだけ上げた。今日スマホしか見て無くないかと思ったが、突っこんだら負けである。

『私のペットの世話、してくれない???』

 ん?私は一瞬硬直してしまった。すると詳しい説明が後からついてきた。

『私明日から4泊5日で部活の合宿なんだけど、ペットの世話をする人が火曜日だけいなくてさ。朝と夜にご飯あげるだけだから、お願いできない??何をどうすればいいかとか細かい説明はちゃんと資料送るからお願いできますか??』

『親御さんは??』

『……ここだけの話だけど、親には内緒で飼ってるんだ』

 ほうそうなのか。それは確かに世話する相手に困ってもおかしくない。あの子はコミュ力もあるししっかりしているし、爽やかだし気配りもできるしで悪い点が見当たらない少女なのだが、そんな彼女でもペットの世話する相手探しに苦慮しているということなのか。少し腑に落ちなかった。いやでも、そんな明るい阿部の周りには、同じく予定がいっぱいつまっている友人だらけなのかもしれない。そう考えたらこの暇人代表格の私に話が来るのも普通だな。私はそう自虐しつつ、

『そうなんだ』

 とだけ送った。そして少しだけ間をおいて、

『いいよーその日暇だし』

 と送った。本音を言うと動物はあまり好きではないし、爬虫類とか虫とかにもあまり耐性の無いのだが、どうせ水曜は開いているし餌をあげるだけなら大したことないだろう。そう高をくくり、私は快く了承した。

『ほんと!?!?!?ありがとう、めちゃくちゃありがとう!!!!!本当に恩ききるよ!!!!今度なんか奢るよ!!!!』

 阿部の返信はその内容を見ただけで喜んでいるなあと感じられるものだった。この後に土下座のスタンプが5回くらい流れてきた。どれだけ困ってたんだよと少し毒づきつつも、あまり嫌な気はしなかった。

 そうして暫くしてから、彼女から写メが送られてきた。おお、ペットに関する注意書かな?私はそう思い何気なく開いたら、一番最初の行を見て固まってしまった。そこにはこう書かれていたのだ。

 正しいイグアナの育て方、と。

 思い出した。完全に思い出してしまった。前に結城の家に泊まった際、結城が言っていたじゃないか。阿部と沢木は今日イグアナの世話をしていると。これは秘密に飼っているから外に漏らすなと。私はバント眼前に乗り出してきた記憶に卒倒させられそうになった。何故、この話が来た時に思い出せなかったのだと自分を責めた。イグアナなんて、私が一番苦手な爬虫類じゃないか。

『注意事項はこの写メに全部あるから、困ったら見てね!!』

 そう言いながら写メはどんどんと送られ、最終的には10枚以上にもなった。私は断りたかった。全力でお断りしたかった。しかしあんなに喜ばせてしまったのだ。いまさらそんなことは言えない。そもそも、何のペットか聞きそびれた私にも責任はあるのだし。

 私は苦渋の顔をしながらこう打った。

『ちゃんと読んどくよー!合宿頑張って』

 彼女の喜ぶ顔を壊すわけにはいかない。私はそう思いながら、送られてきた写メに目を通し始めた。その瞬間に、またスマホがバイブ音を鳴らした。

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