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どじっ娘JKは宇宙人でこの世界を征服するそうです。  作者: 春槻航真
第11章、家田杏里と夏休みの計画
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86枚目

 夏休みが始まると何かが変わると思った私が間違いだったのだ。とこんな書き出しで章のでだしを始めてしまうならば、またこのアマしょうもない憂鬱になりやがったと馬鹿にされてしまうかもしれないが、そういう落ち込んだ心情ではない。むしろ、しみじみとした実感持った感情である。隠居してのんびりと社会について語る兼好のような心持である。お前は何歳だって言われそうだが、まあその辺のJKよりは精神年齢が高い自信はある。

 相変わらずのひとりぼっち。家で完全なるひとりぼっち。これからはマリアもいないから本当にひとりぼっちだ。私はクーラー完備された自分の部屋からキッチンに出た瞬間の熱気にやられて、また再び部屋に出戻りしてしまった。お腹は空いたが外に出ていきたくない気持ちが勝ったのだ。外に出て水を飲みに行くよりも、クーラーに訊いた部屋でゴロゴロとしている方が私にはあっていたのだ。

 ゴロゴロとベットでしながら携帯を開いてみたが、携帯には誰からの返信もなかった。lineにもメールにも全く反応がなかった。……こんな女子高生でいいのだろうか??いや?まあ私は本来宇宙人であり、高貴で気高いアルフェラッツ星人であるから別に良いだろうが、もしももしも私が普通の地球人JKであったとしたらこれほどまで寂しいものはないだろう。華の女子高生だというのに家に籠ってだらだらと過ごすうえに、SNSにすら話す相手がいないなんて、悲惨と以外言うことがないだろう。もしかしたら学校にいるときよりも孤独かもしれない。

 それでも仕方ないかと思ってしまうのは、ここ数年で染みつききってしまったボッチへの慣れであるだろう。私はネットサーフィンを始めた。1人でクーラーの聞いた自室でひたすらスマホでネットサーフィンなんて最早板についてきた感まであった。寝返りを打ちながらニュースをいろいろと調べていく。うーん、流石にのどか沸いてきたな。お腹も減ってきたな。私は一瞬だけ外に出ることにした。

 キッチンに出て、エアコンをつけて、そして冷やした水をコップに入れていく。パンをオーブンに入れて、再び自室に戻っていった。何?電気代の無駄だって?それは許していただきたい。払うのは下宿先の両親なのだから。そもそも掃除とか洗濯とか炊事とか全部私がやっているのだから、これくらいの贅沢許していただきたい。そもそも日本という国は暑すぎるのだ。クーラーなしではやってられないなんて自然の摂理に反するではないか。私はそんな贅沢を最大限人のせいにしつつ、5分ほど待って自室のクーラーを消して部屋を出た。

 ちょうどよいくらいに食パンが焼き上がり、ちょうどいいくらいに涼しくなったキッチンで、私はパジャマのままブラジャーもつけずに生あくびを浮かべていた。だらしなくって仕方ない。まあたまにはこんなのもいいではないか。偶にはではないがな。

 時刻は朝9時半。私にしては寝坊助だ。暑い日には暑い飲み物を飲むのが一番という知識はあるものの、結局冷たい水に逃げてしまう自分である。全く意志薄弱者だなと珍しくネガティブで家田杏里であった?何いつものこと?その通りだ。

 ふぃにぶーぶーと携帯が鳴った。lineの通知だ。誰からだろう。私は食パンにマーガリンを塗りたくりながらスマホの指紋認証を潜り抜けた。送り主は遠垣だった。

『家田先輩!!家に引きこもってませんか???( ´艸`)偶には外に出て、クーラーの当たらない場所に出ることも大事ですよー( ´∀`)b』

 相変わらずよくわからない顔文字を駆使していた。これが女子高生の標準的なものだとしても、私には到底使いこなせないなあと思いながら顔文字も絵文字も使わない平平凡凡な使い方をしていた。

『ところで先輩明日暇ですかー??』

 ん?明日??家に来るのは来週の予定だろ?私はまだ眠たい目をこすりながらこう答えた。

『別に何もないよ』

 次の返信は食パンを4分の1食べ終わった段階できた。

『そうなんですか??( ゜Д゜)だったらメイド喫茶に遊びに行きません??(´・ω・)私のメイド喫茶でイベントがあるから、人集めたくてさ(*'ω'*)』

 なるほどそういうことか。

『別にいいよ。暇だし』

『本当ですか??ありがとうございます('◇')ゞまた詳細な日程送りますねー($・・)/~~~あ、私がメイド喫茶に努めてること知らない人には言わないでくださいね(*ノωノ)』

 うーむ、相変わらずチャラチャラしたラインだなあ。私はそう思いつつ朝ごはんを平らげた。明日は…何もなかったはず。私は女子高生という人種にしては珍しく手帳を持っていない。予定はすべて頭の中で完結させる。書くほど予定がないから悲しくなるという理由ではない。頭で覚えられるから必要がないのだ。

『明日?了解。楽しみにしてるね』

 そう打った後、私は顔文字を探し始めた。偶には私も送ってみよう。そうして探した顔文字を別に送った。

『('ω')ノ』

 すると遠垣からはスタンプが送られてきた。見たことの無い微妙に気持ち悪いキャラクターが『なんか違和感あるぅぅ』と言っていた。なんだこれ?スタンプ?

 スタンプという文化があることは私も知っていたが、正直なことを言うと顔文字以上によくわからなかった。そもそも流行に全くついていけていない系JKなのだから、スタンプにある公式キャラクターとかが元ネタよくわからなくてあまり使う気になれないのだ。今度その辺も勉強してみよう。私はそう思いつつ、ネットサーフィンでlineのスタンプの適切な使い方について調べようとしていた。その矢先でまたぶーぶーと音が鳴った。

『杏里ちゃん杏里ちゃん沢木っす。明後日の午前空いてるっすか?』

 沢木??お前にlineの番号教えた記憶ないんですけど…

『あ、連絡先は結城のから友達登録で追加したっすよ。で、どうっすか?』

 この追加連絡とともに野球ボールのスタンプが貼られていた。明後日か。特に開いてるなあ。

『明後日何かあるの?』

『野球部の応援に来てほしいっす!!明後日5回戦なんすよ!!』

 ふーん、そんなものあるのか。幸いながら明後日は用事がない。手帳などなくてもそんなこと容易に理解できる。それに、結城があんなにはまる野球というものを生で見たいとも思った。まあ結城はいないけどな。って、なんでそこで結城が出てくるんだよ!!!!私は紅潮した頬を誤魔化すようにブラジャーを取りに行った。

 パジャマを脱ぎ捨て上半身裸になった瞬間に、もうこのままでもいいのではないかという痴女的発想になってしまった。いやいやブラジャーはせめてつけないと垂れるからと思いそれだけはつけて、適当なTシャツを身に纏った。ブラジャーとは垂れたら困るからつけるものらしい。私もそれは嫌だからな。何?垂れるほどないってか?そう思ったやつはすり潰し確定である。

 のんびり着替えたのちに、私は返信した。

『いいよー予定ないし。応援するよ』

 そういったらすぐに試合開始時間と場所が送られてきた。私はそれを見ながら、野球場へたどり着くルートを探し始めようとしていたのだった。

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