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どじっ娘JKは宇宙人でこの世界を征服するそうです。  作者: 春槻航真
第11章、家田杏里と夏休みの計画
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83枚目

 白浜という土地は、アルフェラッツ星でも有名だった。広大な自然と綺麗な海、そして美味しい海の幸と我々の星にないものが全て揃った場所であると紹介されていた。私はまだ訪れたことなどなかったが、何となく良さそうなレジャー先だと思っていた。実際に国内海外問わず観光客が訪れていると聞いていた。そうした点を考慮して、結城の提案はそこまでピントの外したものではなかった。しかしながら、一つ疑問がある。母親の実家に、我々のようなまだそこまで関わりの深くない男女4人が泊まりに行っていいものなのだろうか。

「母親の実家って…流石に迷惑じゃね?」

 有田は珍しくまともなことを言っていた。私も同じくそこが気になっていた。別荘とかではなく、母親の実家なのだから。

「いや、多分大丈夫!うちの実家小さい旅館経営してるから、むしろ喜ぶかもよ」

「それなら安心ですね!男女で部屋分けられそうですし」

 姫路はあまり疑問に思わず賛同していた。

「カフェにしてもあんたの家にしても、あんたどんだけ金持ちなのよ」

 私は冗談っぽく苦言を呈した。実際、彼の家庭事情は謎に包まれていたから、あまり突っ込みたくはないが一方で気にはなっていた。

「金持ちじゃねーよ。知ってるか家田。地球人の一般的な家庭はカフェと旅館を同時経営してるんだぞ」

 100%嘘だ。こいつ、アルフェラッツ星人を舐めているのか?しかし、少しだけ曇った結城の表情を見て、私は正論を引っ込めてしまった。

「へーそうなんだ知らなかったなあ」

 なるべく棒読みで言った。

「そうなんだぞ、しっかり覚えて、アルフェラッツ星でもそう伝えるんだぞ」

「ヘイボス!りょーかいしやした」

「先輩達知っててやってると思いますが、そんな家庭ほとんど無いですよ…」

 ふざけて対応していたら遠垣にマジレスされてしまった。

「それよりも日程じゃ無いですか?問題は。家田先輩以外みんな部活あるんじゃ無いですか?」

 と、ここで結城が少し複雑そうな顔をしていたのが印象的だった。

「夏休みの活動予定って、もう出てるの?」

 私は素朴な質問を飛ばした。2人は特に悩まず答えた。

「出てますよ」

「こっちも出てる、紙持ってくるわ」

 そう言って2人、鞄を漁り始めた。少し疑問を持った顔をする遠垣に、結城はフォローを飛ばした。

「この夏休みから、野球部引退したから」

 そう聞いた遠垣は、曖昧な笑顔をした後特に追及することはなかった。こういうところは、私達似た者同士だ。いやだって、ね。そんなこと事細かく聞かれるの、嫌だもん。人にされて嫌なことだから、自分も人にしない。人ととして、宇宙人として、これは当然のことだろう。こうした関わり方自体が間違っているというもう一人の自分からの指摘は、無視で答えることにした。

 すぐにプリントを出してきた姫路と違って、有田は結構な時間がかかっていた。しかもしわ1つ折り目1つついていない姫路のプリントと違って、有田のはしわくちゃの折り目だらけだった。果たしてどちらの方が健全な高校生の姿かというのは、読者の判断に任せるとしよう。

「そういや、遠垣…さんはバイト、いいの?」

 有田は少し遠慮しがちに訊いていた。というか、未だに遠垣さんなのか。彼も中々の奥手やろーみたいだ。

「まだシフト出す前なんで大丈夫ですよ。あ、7月に行くならちょっと考えなきゃ出すけど」

「いや、多分7月は私が無理ですね。合宿があるので」

 確かに姫路の予定は夏休み前半の方に立て込んでいた。

「俺は8月最後の週から冬の全国大会の予選が始まるから、その近辺から忙しいわ」

「冬の全国大会って、お正月にやってるやつ?」

 結城の質問に、有田は少しオーバーに首を振った。

「そんな時期からやってんだねえ」

 私は感心した声をあげつつ、2人の予定を見比べていた。すると、とあることに気付いた。2人とも開いている日程が、とある2日間しかなかったのだ。

「これ、17と18しかなくない?」

「ホントですね…先輩たち、相性悪すぎません?」

 そう言うと2人して膨れてしまった。でも確かにこの2日間しかない。

「で、でもさ。この時期ってお盆明けで、人によっちゃあ帰省したままなんじゃない?」

 私はふと浮かんだ不安を口にした。そして、

「まあ私は宇宙が故郷だからそんな心配ないけどね」

 と付け足すのも忘れなかった。無論こんな文言スルーされた。

「まあその辺は各自親に聞いてくる感じかな?」

「そもそも結城さんも連絡入れなきゃ出すしね」

「それもそうだな。姫路ありがとうすっかり忘れてた」

「多分私は大丈夫ですけどねー先輩方宜しくお願いします!」

 こんな感じに、まず一つ目の予定『海に行く』が纏まろうとしていた。私はまず、ゴーグルをつけないで邪眼を抑える研究に勤しまなければならないなと思ったのだった。最初にこんなことを思いつくあたり、本当に自分のメンタルが回復しているなと思った。そうだ。私は宇宙人だ。誇り高きアルフェラッツ星人だ。それで何が悪い。

「そういやさ、家田。いつお前の家行こうか?」

 う……忘れてた記憶が蘇ってきた。というか結城ぃ、私のメンタル回復している時にそんなゲージ削るようなこと言わないでいただきませんかねえ。

「え?え?何の話ですか??」

「あれ、遠垣さん知らなかったっけ?勝ったら何でもひとつ言うこと聞くって条件で亀成と結城勝負して、結城が勝ったんだよ。それで…」

「ん?ちょっと待とうか。有田、なんで結城の出した条件について知ってるんだ?」

 ん?あれは門外不出のはずなのに…まさか…私は自分の頭をフル回転してとある結論を出した。

「結城ぃぃぃぃぃぃぃ」

「ばれたー」

「ばれたあじゃないわよ!!!!!!!!何他人に言ってんのよ!!!!!!!」

 私は今日一の大声を出したが、結城はきょとんとしたままだった。なんじゃわれ!!!これは約束反故にもつながる暴挙だぞ!!!

「え?何言ってんの?」

 お前が何言っとんじゃ。私はぎろっと睨んだまま言い訳を聞くことにした。すると…

「お前ん家に行くの、みんなでだぞ」

 予想外の言葉が飛んできた。私のフル回転していた脳内完全にフリーズしていた。

「いやだって思い返してみろよ。俺が一度でも、2人きりでお前の家に行きたいといったか?」

 …………………確かにそうだ。そんなことは言っていない。

「俺は最初から、このメンバーでお前の家に行こうと思ってたんだけど…」

「いやあ、もういいですよ結城さん。家田さんは2人きりの方がいいって思ってたみたいですから♪」

 姫路はこう言ってニヤニヤした顔を向けてきた。

「ねー2人の時間を邪魔してもダメですからねー。先輩方、楽しんできてください♪」

 遠垣もそれに同調していた。うううう……私は返す言葉なく、机に突っ伏してしまった。頬が熱い。身体が火照ってる。すべて夏のせいだ。絶対に違う。

「全く、2人きりで何しようとしてたんかなあ」

「む、それは違う、それは違うぞ!!!」

 有田の下衆の勘ぐりに、私は全力で否定した。

「違うからな。違うからな。そんなこと考えてないからな」

「そんなことってどんなことかなあ~」

「ぜひご教授していただきたいですねえ、姫路先輩」

「本当ですよ。なにするつもりだったんですか家田さん!!」

 むむむむむむむむむむむー!!!私はぷいっと横を向いて言った。

「もう、みんな嫌い!!」

 にやにやとしてくる地球人の下衆な考えに辟易としつつ、私はトマトのように赤くなった頬の冷却に努めた。何?お前の方が下衆だろうと?そんなことはない……はずだ。

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