154枚目
その日から私は、ノートを書くことにした。これまでの私を、君と出会ってからの私を、全て残しておくために。
僅かな時間しかなかった。だって、旅行までに完成させたかったから。本当に、腱鞘炎になっちゃうんじゃないかなって、そう思っちゃうくらい頑張ったんだ。毎日、毎日、色んなことがあったのを、克明に、詳細に、文章という形で残したかったんだ。まあその結果が、この有様だけど。
読みにくくてごめんね。時々文字とかミスっちゃっててごめんね。でもこれが、私から送る、君への嘘偽りない気持ちだよ。もう私は、嘘から脱却できた。それが出来たのも、君のお陰なんだよ。それを伝えたくて、伝えたくて、何回も何回もノートをくしゃくしゃにして、ようやく書き始めたかと思ったら長くなっちゃって……私って、本当に不器用。自分でも嫌になっちゃうくらい!不器用だ。
多分これは、世界一不器用なラブレターなんだと思う。
色んなことを話したくて、書き留めてきたこの物語は、ノンフィクションで間違い無いんだ。これまでの私も、これからの私も、全部が嘘じゃない。全部が現実なんだ。だから、今の自分だからこそ、昔の自分を描いてみたかったんだ。まだ虚夢から覚めていなかった頃の自分の気持ちを、残しておきたかったんだ。
もしも、引っ越しちゃっても、このノートだけは大事にしてくれると助かるな。長いし読み返されると結構恥ずかしいけど、でもたまには思い出して欲しいとか、そんなわがままなことを言っちゃう私はやっぱりJKだ。どじなJKだ。
向こうでは、お母さんの面倒を見て過ごすのかな?友達は作るのかな?これから何になりたいのかな?まだまださ、君には話し足りないことばかりなんだ。色んな君を知りたいし、今何をしているのかも知りたいし、とにかく何でも知りたい!わがままが過ぎるかな?でも許してくれたら嬉しいな。
後書きのついでに、今の私の状況をお伝えしておこう。現在は午前3時だ。墓参りをしてから、麻沙美は1度も男を呼んでいない。まあ遊んでいないわけではないようで、たまに家に帰ってこない日もあるが、家にいる日は私に料理を教えてくれとせがんでいる。この前は肉じゃがの作り方を教えた。君にもあげたいな!
そして明日旅行だというのに、全くもって寝れていない。もはや眠くなる気配すらない。そしてすごく心配している。何が?朝起きれないんじゃないかって?いやいやいや、これを君に渡せるのかを心配しているのだよ。まあ今もしも君が読んでいるのならいいが、私が読んでいるのなら今すぐ彼に渡してきなさい!そう説教しよう。
そういや、文化祭で歌う曲もできたんだ。ボクノオトって題名になった。ボクノートじゃないよ!それじゃ有名アニメ映画の主題歌になっちゃう!歌詞は私が書いたんだー!楽しみにしててよ!今は教えないから、文化祭で初披露するんだーって、頑張ってくから。遠いと思うけど、見にきてくれたら嬉しい。
さて、じゃあそろそろ私は寝るとするよ。これを読んでいる君、そう、結城仁智に届けるよ。
好きだって。
感謝してるって。
これからもよろしくって。
こんな不器用なラブレターを、どうかもらってください。
それじゃあ、また会える日まで
アルフェラッツ星人改め、家田杏里より。
ps.次の報告書をお楽しみにお待ちください。
次も手書きで差し出します。
ばいばい!




