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どじっ娘JKは宇宙人でこの世界を征服するそうです。  作者: 春槻航真
第3章、クラスメイトとボーリング大会
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16枚目

「へ?」

 あまりにも急な質問だったため、え?というつもりが変なh音が入り込んでしまった。対面している出森は、まるで肝が据わったかのようなまっすぐな目をしていた。そしてその表情を保持したまま、彼女はさらに続けた。

「いや、最近有田君と仲いい感じじゃない?だから…そうなのかなって」

 まあ最近になって有田と話すようになったことは自他ともに認める歴然とした事実である。というかそもそも高校入学から1年と1か月、高校内で話す人間すらいなかった今までが異常なのである。宇宙人であるためにクラスになじめなかったあの頃がおかしいのだ。

 確かに、これまであまり話さなかった、というか変人扱いだった女子が、ここ1週間ほど会話し始めたら怪しむのもわかるかもしれない。元々の水準が低いから、ちょっと普通の人間に近づいただけでも変な邪推を生んでしまうのであろう。全く迷惑な話だ。

「別に…狙ってないし、狙う気もないよ」

 宇宙人だからね!という言葉を、なぜか飲み込んでしまった。理由は不明である。

「私、クラスに馴染めてなかったから、それでいろいろ面倒見てくれてたんじゃない?ほら、先生が優秀な生徒より出来の悪い生徒の方が面倒を見る、みたいな…」

「ふーん」

 そう言うと出森はまたスマホに目線を落とした。私はとても不快な気分になった。私渾身の例え話をこいつ、ふーんの一言で終わらせやがったぞ。どうゆうことだ。そもそもお前から振ってきた話題じゃねえか。

 難しい。日本の女子高生の考えることは難しい。いや、女子高生だけでなく男子高生もだなと結城を思い出して訂正した。結論としては、若者は何を考えているかわからない、だろうか。これはアルフェラッツ星の住民たちも頭を抱えるかもしれない。

「もしかしたら、有田君がむしろ家田さんのこと狙っているかもね」

 出森は目線をこちらに合わせないまま、そんなことをつぶやいた。それもあり得ない話なんだよなあとココロの中だけで否定した。これは遠くで有田が手を振っていたからだけではない。学校のプリンスに好きな人ができたこと、そしてそのプリンスが恋愛に関してはてんでヘタレであること。そんなことを伝える義理もないし、謂れもない。

「それは…ないでしょ」

 私は簡単な否定だけをして、歩いてくる有田に手を振った。そして続々と、クラスメイト達が集まり始めたのだった。


「それじゃあ、ボーリング大会を始めます。まずは組み分けからかな、どうしよっか」

 クラスの中心人物の一人、阿部が有田の顔を見ながら言った。

「もうめんどくせーから事前に決めたのでいいか?出席番号上から3人ずつのやつ」

 私はここでとても嫌な予感がした。ちなみに私の出席番号は3番である。ア行から始まってワ行で終わるのだから、イから始まる私の苗字が上の方に来るのは特に違和感がなかった。そうではなく…

「んじゃ、最初のグループは阿部ちゃんと俺と、家田さんだな」

「や、ちょっと待って!」

 私は反射的に声を上げた。私があげなければ、クラス中に潜伏する有田ファンが暴動を起こしかねなかっただろう。おいお前、ただでさえ私は今お前との関係を疑われてんだぞ。さっきだって出森が…うわ出森がめっちゃ睨んでる。スーパーであった陰口女子たちもめっちゃ睨んでる。そりゃそうだ。彼目当てでこの集まりに来たやつだっているのに、こんなどこの星の骨かよくわからないスクールカーストぶっちぎり最下位電波系宇宙人JKが選ばれるなんて、煮え湯を飲まされた気分だろう。

「ほ、ほら!くじとかどう?誰と一緒になるかドキドキ感があった方が…お…面白そうじゃない?」

 私は後ろをちらちら見ながら言った。やっべクラス中が私を見てる気がする。少なくとも陰口女子三人衆と出森は確実に私の方見てるよ。でもわかっただろ?私は有田とかどうでもいいと思ってるんだよ。わかったか?

「でもくじなんて用意できるか?この人数だし即席で作るのは時間かかるだろ?」

 しまったあ。時間があるうちにくじ作ってこればよかったあ。まさかこんな展開になるとは…というか、こいつは何で私と同じ組に入れたがっているのか?私を狙っているのか?それは嘘だろう。たとえ本当だとしても、こんな短い間に狙いの女の子を乗り換える男なんて、こちらから願い下げだ。

「だ、誰か持っている人いない?」

 陰口三人衆の一人、高見がみんなに訊いた。まさかいないよな、そんな準備の良いやつ…

「こんなこともあろうかと、持ってきたぞ」

 どこからか声がした。それが神からの福音に聞こえた。私はその人を救世主としてあがめたいとさえ思った。いったい誰だ?私を救ってくれたメシアは誰だ?声の主は、丸坊主の頭を一つ抜け出して、前に出てこず言った。

「ここにちょうど今日の参加者分の36本の棒がある。これの1〜3、4~6、7~9…といった感じに分けていけばいいんじゃないか?」

 結城かよおおおおお。なんでこいつくじなんて持ってたんだよ。しかも割り箸36本なんて、こんな展開になると予知してないと無理だろ。ほんと不思議な奴だ。いや、でもこれは結城GJだ。これでくじをする流れになるだろう。心なしか、クラスの一部女子からの冷ややかな目が落ち着いた気がした。

「なんだよ結城、そんなに出席番号順が嫌いなのか?」

 そう言うことじゃねーんだよ。有田!むしろなんでお前はそんなに出席番号順にこだわるんだよ。周りの雰囲気読め。空気を察しろ。自分の恋がヘタレで周りの恋に気付いてないとか、お前どこのラブコメの主人公だ。

「まあでも、こういうランダム要素があってもいいんじゃない?出席番号だと、もう結構仲いい人とかもいるだろうし」

 そうだそうだ結城!いったれいったれ結城!私は彼と知り合ってから初めて心の底から彼に感謝した。何考えているかわからないやつだが、今回はその何を考えているかわからない彼に助けられるとは…地球人と関わるなんて野暮だと思っていたが、これは考えを改めなくてはなと思った。

 場の流れはくじの方向へと切り替わり、皆立ち代わり結城特製のくじを引いていった。クラスの中には有田を中心に数名不満な顔をしているものもいたが、概ねのみんなは前向きにくじ案に賛成してくれた。私もウキウキしながら、それでももしこのくじでまた有田と一緒になったら嫌だなあと思いつつ、まあそんな低確率なこと滅多にないだろうと高をくくってくじを引いた。そして、1グループ3人ずつ班分けをした。私の班はどうなったかというと…

「お、不思議ちゃんっすねークラスで話したことあったっすかねー?覚えてないっすわ。あーそうそう!俺の名前覚えてるっすか?沢木泰斗っす!漢字はー沢木泰斗の沢に、沢木泰斗の木に、沢木泰斗の泰に、沢木泰斗の斗で、沢木泰斗って言うんすよ。これからよろしくっす」

 丸坊主のお調子者と…

「よろしく、家田さん」

 丸坊主の自殺志願者だった。いやこれ、もしかしてくじ引く前の方がよかったのではないか…そんなことを考えてももう、後の祭りだった。

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