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どじっ娘JKは宇宙人でこの世界を征服するそうです。  作者: 春槻航真
第18章、家田杏里とけいおん活動
143/166

132枚目

「ではこれから第1回文化祭何の曲やるか会議を始めたいと思います」

 時刻は午前11時を少し回った所、場所は駅前の一般的なカラオケ、集まっている人数は5人だった。これからバンドとして中心になっていくメンバーなのだが、私は半数弱誰かわからなかった。

「そうは言っても、何をする予定なんだ?俺は早く家に帰ってジャコ・パストリアスのワードオブマイスを聞きたいんだが」

 そう言っていたのはともざわゆうきというライン名の男だった。ちなみにこのともざわゆうきとは、本名ではないらしい。なんなら彼は友沢でもなければ、勇気でもないらしい。意味がわからないって?それは私も同じだ。因みにそんな中二設定とは裏腹に、顔は平凡体格も平凡、纏っているオーラも平凡な男だった。

「まあたそさんそういわずに、何もいわないでな」

 そうケタケタ笑いながらフォローを入れていたのが、ともたそ24世というラインの名前の男だった。有無を言わさぬ目をしていた。眼光が鋭く、顔立ちがシャープで、尚且つすらっとした体型をしていた。身長だけでいくと190センチ、いやもっとあるかもしれない。

「にしてもすごいメンツ集めたわね、魅音。無所属のピアニストとベース奏者2人を積もるなんて、中々な腕前だと思うわよ」

 濱野がそう感心した声で褒めたたえていた。

「いやあ、折角なら軽音部以外から集めたいなって思ってね。軽音部だけだったらいつだってできるじゃん。今回はそういう垣根を越えてやりたいなって」

「それでも私は入るんだね」

「まあ、恵ちゃん暇でしょ?」

 暇と言われて、濱野恵華は少ししかめっ面になった。私だって少しくらい予定はあるんだぞと言わんがごとくの目だった。お前の予定なんてどうせ、本屋に行って哲学関係のよくわからない本を読み漁ることくらいしかないだろ。そう突っ込んだら確実にグーパンチを食らうので、自重することにした。

「暇ではないわよ」

「あ、そうなの?」

「あんたがいるからバンドやるのよ!忘れないでよね」

 そういいつつ彼女がこちら側を見ていたような気がするのは気にしては負けな事象である。私がいるからバンドをやるだなんて、なんて自己満足な話だろう。それは都合のいい思い込みというやつだ。浜野がそんなこと願っているはずがないだろう。せいぜい興味本位での話に過ぎないだろう。

「まあ、とにかく自己紹介から始めよっか。初めて会う子もいるからね。私はこのバンドの発起人、武田魅音。魅音先輩と呼びなさい」

 そうか魅音先輩か。私も魅音先輩と呼ぼう。同じクラスだけれども。

「で、こっちの背がちっこくて生意気そうな目をしているのが……」

「適当なこと言わないで、おろすわよ」

 ギロッと睨んだまま、濱野は口を開いた。

「2ー8の濱野恵華よ。ドラム担当、のはずよ。で、隣に座ってんのが同じクラスの……」

 不意に振られて、私はあたふたしながら答えた。

「……家田杏里、ボーカルです」

 ボーカルという単語は最近覚えた。歌う人のことを指すらしい。私は楽器が弾けないからそれを取られていてはここにいる意味がない。

 他の2人はどう写ったのだろうか。ともざわゆうきはやけに視点が合わないなと思ったら、私の目よりも私の包帯をマジマジと見ているような気がした。もしかしたら同類に思われたのかもしれない。いや、それは大きく違う。私は宇宙人だ。片目に世界の終焉を齎す力を宿したアルフェラッツ星人だ。お前のようなチープな設定とは違い、こちとらガチなんでな!謎の対抗心を芽生えさせつつ、私はもう1人の方を見た。

 ともたそ24世は対面に座っていたのだが、すらっとした身長は座っていてもありありと感じられた。3人用のカラオケルームに案内されたせいで、隣に座るともざわゆうきが少し狭そうにしていた。この人は、本当にのっそりした人なのだろう。

「俺はこの世の全てを司る男、ともざわゆうきだ。覚えとくんだな」

「ちなみに本名は田中慎たなかまことだから」

「ふふ、それは仮の名前さ、魅音先輩」

 仮の名前だというのであれば、もう少しぶっ飛んだ名前にすればよかったのに。ルキウス・アントニウス・アキレウスとか、そんな風にどこぞのギリシャ神話横取りして名前つければよかったのに。なんだよともざわゆうきって、ほとんど日本人名じゃねえか。私はガチモンのガチ側として、ついそんな突っ込みをしてしまった。

「あ、俺は中島智樹っす。1-5っす!平々凡々な名前なんで、ともちん24世と呼んでください」

 長い長い長い、なんだその名前。どこから24って数字が出てきたんだ??好青年な出で立ちからよくわからんことを言われるこの展開は、実は有田今野で慣れてたりする。いや彼らよりは幾分マシだ。名前が変なだけなのだから。

「キーボードっす。つうかキーボード以外できないっす。よろしく」

「いやあ、なかなか個性的なメンバーが揃ったね」

 魅音がそう感心していっていたが、私はちっとも感心していなかった。なんだこの変人ライオンの檻に入れられたような感覚は。いやさ、私だって普通の人間じゃないさ。生憎ながら宇宙人を名乗らせてもらっている身だけどもさ。この地球人の変な奴をるつぼににしたようなメンツが揃っているじゃねえか。どういうことだこれ??そう思ってふと自分の人間関係を思い出したら、なるほど変な奴しかいねえと納得できた。なんだ?私が疫病神なのか?私が変人を引き寄せてるのか?

「それじゃあ、なんの曲歌おっか?」

 魅音がカラオケのデンモクに目をやりつつ尋ねてきた。周りの様子を伺う暇もなく、声が上がった。

「はい!!」

 びしっと手を挙げたのはともたそこと中島だった。

「俺、洋楽したいっす!特にヘビメタ、ヘビメタ系の!」

「スリップノットとかメタリカとか?」

「そうそうそう!!あーゆうの超やりたい!!」

 ふるふる、ふるふる、首を振った。反応の仕方がわからなかったのだ。

「それ、キーボードいるっけ?」

 濱野が辛辣なことを述べた。

「いるいる!要らないならアレンジして勝手に載せてやるっす」

「いや、もっと楽してみんなでいける曲があるでしょ?ほら、サカナクションとか、キーボード使うJ- Rockバンドがいいんじゃ……」

「えー日本のバンドやんの?それはそれでなあ」

「お?そっちの方が目立ちやすいっすよ?っすよ?」

 ?????何を言っているのだろう。皆目見当もつかない見当付かないまま、濱野はこちらに振ってきた。

「で、家田さんはどうなの?」

 その顔がいやにしたり顔だったことを、私はひどく克明に覚えていた。

「……みんなに、任せる」

 いやこれしか言いようないだろ??私が地球の音楽とかわかるわけないじゃん。本当は有田とか結城あたりに聞きたかったけど、なんか、聞くの忘れてたんだもん!!

「ははははは愚民共。申し訳ないが俺もベースは弾けるがベースの曲しか弾いたことがないから期待をするんじゃないぞ!!いいな??絶対だぞ!!」

 おいともざわ!お前も同レベルじゃないか!!それだと田中だぞ!!田中レベルだぞ!!同類の人が見つかった嬉しさから、私は変なテンションになっていた。

「ふううう、魅音は?どう……」

「みんなでさ、オリジナル曲作らない?」

 魅音は不意にデンモクから視線を外すと、濱野の語尾を待たずにこう言った。

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