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どじっ娘JKは宇宙人でこの世界を征服するそうです。  作者: 春槻航真
第15章、夏休みの宿題とサッカーの試合
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108枚目

 私は悩んでいた。これは、広げていい話なのだろうか。詳しく聞いていい話なんだろうか。もしかしたら、この雑なファッションは、自分が女らしいと何か弊害があるからという理由でこうなっているのだろうか。もしかしたら、家では女だからといって蔑まれているのではないだろうか。もしかしたら、冗談っぽく言って誤魔化しているけどあまり言って欲しくない話題だったのではないだろうか……そんなことを考え始めると、言葉に詰まってしまうのもごくごく妥当に思えた。いや、これが妥当だと通じるのは、おそらく全宇宙で私だけだ。こういう所が、私がまだ地球人になりきれていない所以にも思えた。

 ふと思い出してしまうのは遠垣の顔だ。強烈に思い出してしまうのは結城の顔だ。前者には未だにその生態について突っ込んだ話ができなくて、彼女の本性というか、本質というか、そう言ったものに触れることができないまま暫く経ってしまっていた。後者に関しては思い切って突っ込んだ話をして見たのだが、結局、逆に相手を怒らせてしまう結果となってしまった。どちらにしても、良い思い出ではないことなど言及するまでもなかった。

 さて姫路には、どう対処すれば良いのだろう。詳しく聞くのか、そのまま黙り込むのが、うまいこと別の話題に転換させるのか……ネイティブ地球人ではない私からしたら最後の選択肢は厳しく、かといって詳しく聞く勇気もなかった。だから暫く黙ろうと思っていた。そこに、まるでそんな私のよくわからない葛藤を間近で見ていたかのように、姫路が口を開いた。

「私の家、空手の名門なんですよ」

 空手、それは日本独自の格闘技。私は空手について、ウィキペティアの最初の2行分しか熟知していない状態だった。

「それで、よくお弟子さんが稽古にくるんですよ」

「へええ、すごいね」

「それどころか泊まり込みで修行する人とかもいて……」

「ええええ???」

 予想外だった。そこまでするということはなかなかに有名な空手道場なのだろう。

「それでね、うちのお父さんがですね。『女連れてきたら弟子達の練習効率が下がる!!』って言って、遊びに誘っても家はダメになるんですよ。申し訳ないです」

 そう言って姫路はぺこりと頭を下げた。そんなそんな、私は急に恐縮になり、

「や、そんなそんな謝らないで!!!」

 と下げてる頭を解除するよう要請した。

「でもそれって、姫路さんはどうなるの?」

「私ですか??そんなそんな私なんて女の子らしさ1つもありませんから、私を見て変な気を起こす人なんていませんよおー」

 そう言いながらも姫路の胸は横にプルプルと揺れていた。いやいやいや、その胸!その大きくて包容力のある揉み応え十分そうな胸!それで発情しない男がいるとしたら、強情な無欲主義者かロリコンだけだ!私は姫路がさらっとついたダウトに、ついギロッとした視線を送ってしまった。なんだそれは?私に対する当てつけか?

「それに、父上が怖いからか、たまに何か食べ物とか持っていってもめちゃくちゃ改まってるんですよ。私、あなたより結構年下ですよ!?!?みたいな感じなのに」

「敬語使われたりするの?」

「敬語なんか比じゃないですよ。まるでお妃様のような扱いを受けることもあるし……一体なんでなんだろう……」

 まあ、父が厳しくて怖い人なんだろうな。娘に手を出そうものなら、死ぬまで殺してきそうな人なんだろうな。私は勇猛な戦国武将の顔グラフィックをそのまま姫路の父親に当てはめた。うーん、しっくりくる。

「あ、でも父は厳しいですけど面倒見は良いですよ。私、剣道部に入ってるんですけど、時々特訓だっていって練習に付き合ってくれたりするんですよ!」

 特訓……そういや昔、姫路に電話をかけた際に、電話越しに図太い声の男の人がそんなことを言っていたような気がする。

「空手の、人だよね?」

「そうですよ!姫神流って言うんです!」

「剣道もできるの?」

「武道なら大体出来ますよ!最近はフェンシングを始めたいとかいってました!」

 いやそれ武道じゃなくて騎士道だから!そう突っ込んだのは心の中だけだ。

「特訓って、なにするの?」

「別に普通ですよ!竹刀持ってひたすら素振りして、構えに乱れがないかと同じフォームを続けられるかチェックしてもらったり、あとは実戦形式で教えてもらったり、ですね」

「素振りって、何回くらいやるの?」

「何回……?」

 少しだけ、コメディーのような沈黙が流れた。

「数えてないですね」

「あー時間で区切ってるの?」

「いや、父上が良いっていうまで振ってます。あ、私の家の武道場、時計がないんですよ!だからどれくらいかはわからないですね」

 なんだその、格闘家みたいな話し方は。そもそもなんで、家に武道場があるのか。思っていたより、姫路の家は色々ありそうで面白かった。それも、良い方に。

「娘さん思いなんだね」

「そうですね。ちなみに中学校の時は柔道をしてたんですけれども、父上も柔道黒帯で、毎日畳に投げられ続けてました」

「あ、そうだったんだ!」

 でっきり昔から剣道ばかりしてきたのかと思っていた。そもそも、空手道場の娘なのに、なんで剣道をしているのだろう。私はついに、恐る恐る自分から質問した。

「そういや、なんで剣道を始めたの?」

「あーいや、それは単純な話でして、うちの学校、柔道部がなくて合気道部と剣道部しかないじゃないですか」

 そうだな。人気がないからか何故か柔道部は廃部となっていた。入る気もなかったが。

「で、どっちかに入ろうという話になったんです」

「他の部活は考えなかったの?」

「いやー、球技は苦手ですし、歌も下手ですし、楽器も触ったことないですし、絵もそんなに上手くないしで、選択肢がなくなってましてね。もっと柔道とか少林寺とか合気道とかレスリングとか、そういう習い事以外もやっとくべきだったなあとその時反省しましたよ」

 うん、この子も十分オールマイティな武道家じゃないか?武道系の習い事など1つもしたことのない私からしたら、そう思えて仕方なかった。

「で、剣道はまだ本格的にしたことがなかったので、せめてここで冒険しようかなあと」

「小さな冒険だね」

「ほんとですよ。そうして、今は剣道部にいるって感じですね」

 なるほどー。私は感心していた。他人の事を聞くのって、上手くいけばこんなに面白いんだなと、そう実感していた。もっと他に、質問してみよう。そう思ってまた、少し指を震わせながら問いかけてみた。

「姫路さん、そういやいつ勉強してるの?帰ってから特訓してるんだよね?」

「いやいや、特訓はそんな毎日やってるわけじゃないですよ。平日は基本帰ってから勉強してます。で、勉強が終わって、父上も暇だったら特訓をするって流れなので……」

「あ、そうなんだ」

「むしろ宿題終わるまで他のことはするなと育てられてきたので、結構勉強熱心なんですよ、うちの親」

「それは、お母さんが?」

「いえ、母はニコニコしながらご飯を作ってくれるだけです。だけって、それが1番ありがたいんですけど……特訓に付き合うのも、勉強させるのも父上ですよ」

 これは意外だった。大体こういうのはどちらかがどちらかの側に立つことが多いイメージを勝手に持っていたからだ。

「良い家族だね。お父さんも、お母さんも」

「はい!出来れば家田さんや、他の人たちにも紹介したいのですが……」

 そう言って少ししゅんとなった姫路を、フォローするように私は言った。

「まあ、機会があったら会いたいね!姫路さんの家じゃなくていいから!」

 この言葉、本心100%込めて姫路に送った。それを感じたかどうかはわからないが、姫路はまたニッコリ笑った。


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