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どじっ娘JKは宇宙人でこの世界を征服するそうです。  作者: 春槻航真
第14章、イグアナ君と親戚の子ども
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106.5枚目

 女の子が好きだ。

 可愛い女の子が好きだ。かっこいい女の子が好きだ。綺麗な女の子が好きだ。美しい女の子が好きだ。

 ちょっとどじな女の子が好きだ。ちょっと天然な女の子が好きだ。ちょっと強がってる女の子が好きだ。ちょっと頑張ってる女の子が好きだ。

 好きだ。好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ!!!大好きだ!!!!

 ………なんてこんなこと、言えないんだけどね、いつもは。

 ………なんてこともなく、結構言っちゃってたりするけどね、今では。

 まあ、核心的なことは言ってないから、そこは許して欲しかったり、欲しかったり。

 でも、流石にあなたが欲しいはやりすぎというか、意味不明だったな。反省である。

 そんな私にも、1人だけ好きになれない女の子がいた。この人だけは恐らく一生かかっても好きになれないだろう。

「ねえ??大丈夫??うちのぐーちゃんは元気にしてるかな????」

 夕方、いきなりかけてきた電話の主は実の姉だった。そもそも画面に姉の名前が出た瞬間に反射的に切ってしまって、これは2回目のコールだった。どうせ要件は1つしかないだろう。彼女の飼っているイグアナの様子を聞きにきたのだろう。

「知らないわよ」

「何よみかん、そのやる気ない返事は!!!」

「やる気のない返事にもなるでしょうが!!あんた私にイグアナ部屋入れさせてくれないでしょ?」

「当たり前よ!!!大体元々はあんたがぐーちゃんの飯の分量間違えたり、室温設定間違えたからでしょ??今年の2月それくらって、もう2度とあんたには頼まないって私決めたんだからね」

「じゃあ黙って待ってろよ。まだ合宿終わってねえんだろ?」

「それができないからあんたにかけてんでしょうが!!!!」

「というか彼氏に聞けよ。私と違って出禁くらってないんだろ??」

 しばらく黙った姉のさくらに対して、もう切りたいと思った私だった。

「沢木は………今頃落ち込んでるから」

「あーまあそうでしょうね。せっかく願掛けてイグアナの面倒を見させなかったのにね」

「やっぱり……落ち込んでた?」

「まあ試合後は、ね。というか連絡とってるでしょ?」

「く、詳しく聞けるわけないじゃない!!!あんた相手の気持ちってのも考えなよ!!これだから……」

「ぼっちは嫌だってか?」

 また向こうが黙った。

「良い加減にしないと本当に切るよ」

「や、ちょっと言い過ぎた。とにかく、よろしくね!」

「家田さんから鍵もらって、明日の朝ともちんに渡して、それを回収して夜あんたに渡すんだよね?」

「おー流石!さすが我が妹」

「今更褒めても無駄よ」

 冷たく言い放った。

「それじゃ、家田さんにありがとうって言っといてね!私も言っとくから!」

 そう言って一方的に切れてしまった。私は姉に切れそうになっていた。まったく、いつものことといえばいつものことだが、傲慢で命令口調で自分勝手。なおかつ可愛くないし、綺麗でもない。嫌いだ。外面も内面も嫌いだ。まあ外面は、私も似たようなものなんだけど。

 やっぱりバレー部に入ったのは失敗だったかな?髪の毛に制限がかかってしまったせいで、ただでさえ似ている2人がこれまで以上に似てしまった。家田さんにも間違えられるし……今からでも軽音とかに入り直そうかなあ。楽器1つもできないけど、ユニゾンとか好きだし行けるでしょ。舐めすぎか。

 まあでも、あの子が私に鍵を託さなかったら、家田さんにも遠垣さんにも会えなかったって思ったら、怪我の功名というやつかもしれない。少し感謝すべきなのかもしれない。認めたくないかもしれない。

 家田さんは可愛い。本当に可愛い。1年生の頃からずっと思っていた。包帯の巻いた姿は奥ゆかしさすら感じられるし、片目のキラキラした目は小動物的な可愛さがあるし、何よりも身長とどじなところが魅力的で仕方がない。可愛い。本当に可愛い。もっと仲良くなりたい。姉が羨ましい。

 時々本気でわからなくなる。私は、女の子が好きだ。でもこの好きは、所謂恋慕のようなものなのではないかと。私は男の子ではなく女の子を好きなんじゃないかって、そう思ってしまう時があるのだ。

 男の子に何の食指も動かないのだ。かっこいい男の子の話とかになっても入っていけないのだ。イケメン芸能人を見ても心動かないのだ。ジャニーズよりもAKBの方が好きなのだ。仮面ライダーよりも朝ドラのヒロインを見たいのだ。乙女ゲーよりもギャルゲーがしたいのだ。そんな私は、異常なのだろうか。異端なのだろうか。人として間違っているのだろうか。

 怖くなってしまう自分がいる。いつか、この人に添い遂げたいと思えるような男の人が現れるのだろうか。もしかしたら一生、女の子を好んで生きていくのだろうか。そんな不安が、ちょっとだけ付きまとってしまうのだ。

「あら?みかん出掛けるの?」

 家を出ようとしたらそう呼び止められた。

「どこにいくの?」

「ちょっと遊んでくるー」

「そうなの?なんか最近、朝早くとか夜遅くまで外にいるわよね、みかんもさくらも」

 母親は不安げなことを言いだしていた。そりゃそうだ。母親には内緒で飼っているのだから。

「それに最近、お金せびる機会が増えてね」

「おねーちゃんが?」

「そうそう。なんか、悪い男の人に引っかかったりしてないかしら」

 まあ普通はそういう風に考えるよな。朝とか夜に出掛けるようになって、お金をせびるのだから、そう考えるのが妥当っちゃ妥当だ。私はあえてにっこり笑ってこう言った。

「大丈夫だよ。おねーちゃんはそういうの疎いから」

 嘘だけどな。夢中になってるオスも、夢中になってる男もあの人にはいる。いないのはむしろ私の方だ。

「そ、そうかしら」

「じゃ、いってくるよ」

 そうして外に出た。マンションに向けて歩を進める。家田さんから鍵をもらうのだ。そのために私は、3つ隣の街まで乗り継いでいく。

 ふと家田さんの顔を思い出した。まるで小動物のような見た目と、必死に何かを隠して頑張るあの姿を思い出すと、胸が踊って仕方なかった。もしかして、おねーちゃんが沢木君やイグアナと接してる時も、こんな感じなのだろうか。これが、恋愛ってやつなんだろうか。わかんないけど、でも今は、会いたい人に会える喜びをかみしめよう。いつになくセンチメンタルになりながら、私は夜道を歩いていたのだった。

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