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どじっ娘JKは宇宙人でこの世界を征服するそうです。  作者: 春槻航真
第14章、イグアナ君と親戚の子ども
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101枚目

 家に帰ってきてもまだ、母は起きてこなかった。相変らずのお寝坊さんである。もう少し早く起きるということを学習していただきたい。いくら私と違って地球人レベルの残念の脳みそしか詰まっていないからと言っても、それくらいの改善くらいあってもいいじゃないか。いくらお金に困ることがほとんどないからと言っても、後ろめたさなど感じないのだろうか。私はそうした日頃母に抱えている不満を片っ端から心に思いながら、部屋に帰ってきた。その瞬間に、阿部ちゃんから連絡が来た。

『ありがとう!!!!!!!ほんとうにありがとう!!!!!!今度スタバのフラペ奢るよ!!!!』

 ものすごいテンションの高いメールだった。イグアナの世話をしたことがそこまで嬉しかったのか。まあ夜にも向かわなければいけないのだが、そう思いつつも褒められて嬉しくないわけではない。しっかりと任務を遂行できた自分を誇らしく思いながらも、その直後に来たもう1人の阿部ちゃんからの連絡の詳細を見た。

『お疲れ様です!!!!夜は私も一緒に行くので、その時に鍵を返してくださいね!!!そのあと時間、ありますか???もっと、貴方としたいのですが……』

 何言ってんだこの人は。何をしたいというのか?よくわからんからとりあえず『また晩御飯食べたら向かうねー』と返しておいた。そして半分パジャマみたいだったTシャツを脱いで、こじんまりとしたブラジャーを体に装着し始めた。実はブラジャーなどつけていなかったのだ。ノーブラで外に出ていたのである。どうだ男子高校生諸君。興奮しただろう。夏だし良いではないかと思ったが、流石にTシャツの内側の布が乳房の先端に擦れて変な感じになってしまった。それに重力が少し下にかかっているような感覚もして、1日このまま過ごすのは無理だと判断した。そして洗濯したてのブラジャーをつけて、適当に履いたズボンを脱いで、白色のワンピースを身につけた。バサッと男らしく着てしまったその姿は、小学生男子のようだった。突起した先端が収縮する頃には、部屋から再び出てきていた。

「あー、杏里?」

 化粧を落として顔が地味になっていた母は、起きてすぐ洗面所を占領し始めた。彼女の化粧は1時間を優に超える。私はお水のみ飲んで再び戻ろうとした。そしたら母が洗面所からこう言い始めた。

「杏里?私は今日も用事があるから、親戚の子の面倒宜しくね」

 うん前に聞いたな。私はやる気なく、

「はーい」

 と答えて部屋のドアを開けたが、その後で母からの衝撃的な一言が飛んできた。

「この家に来るらしいから、対応宜しくね」

 へ??反応をする前に、私は茫然としてしまった。


 私が家に帰ってきてから1時間後、母が家から出ていこうとしていたらチャイムが鳴った。

「はいはーい♪入ってきてくださーい!!」

 そう話かけて鍵を開けていた。バンと開いたら、いきなり部屋に駆け出してくる少年の姿が私の視界を横切ってきた。

「何この家ー!!!!めっちゃ狭いじゃん!!!」

 元気のいい声だ。この星の小学生は幼さに磨きがかかっているから、部屋に入ってきてソファにボンボンと飛び乗ったり端っこにおいてある観葉植物の葉っぱをちぎったりし始めた。いきなり部屋に入ってきてその対応はないだろう。そう思いつつも、私はあたふたしていた。

 もしかしたらこの言葉にお前が言うなと言われてしまうかもしれないが、幼い人間は嫌いである。見た目が幼い人間はまだ許したとしても、精神的に幼い人間は本当に大っ嫌いである。例えば今入ってきた小学生。まずは私を見てスルーするのではなく挨拶をするのが妥当な所であろう。そうでなかったとしても走り始めてわちゃわちゃと騒ぐのはもってのほかだし、それに相手に失礼に思われるような言動をとるなんて言語道断だ。更にはソファを痛めるような行為をとるのもおかしいし、レイアウトを壊すようなこともしてはいけないに決まっている。言いたいことはいくらでもあった。しかしながら私は往々にして強引な人間に対して弱い。だから強く言えなかった。今は勝手に物干しに出ていたみたいだったが、それも下着とかほしていたからやめていただきたかった。

 私はじろっと連れてきた親戚という女の顔をみた。全く子供に視線を置いていなかった。

「あらーじゃあ行きましょうかねえ」

「ここに帰ってくるの?」

「いや、あの子には後で帰るように言ってるからね」

「1人で居させるわけには行けなかったの?」

「いやよーうちの夫、そう言うのめちゃくちゃ怒るのよ。もう10歳なんだから、1人で居させてもいいと思うのにねえ」

「それでこの家においておくと」

「崇には友達の家に遊びに行ってきたって言うように言ってあるわ。それだったらあの人だって何も言わないでしょ?」

「それは面倒ねえ。私の子はもう17歳だし、もう本当にしっかりしているから、何も心配することないわよ」

「ほんと、あんたの夫、羨ましいわあ。私の夫も教師なんてやめて、どこかの会社に勤めて単身赴任とかしてくれないかしら」

「じゃあその分のストレスも、今日晴らしてしまいましょう」

「いい男、連れてきてるんでしょ??」

「勿論よ」

 おいおいそこのばばあ2人、完全に話聞いてんだからな。私はおほほほほほほと上品の面を被った下品な笑いする2人にたいして、最大限の侮蔑の意味を込めたにらみを利かせた。類は友を呼ぶというのはこの世界におけるポピュラーな諺の1つであるが、私は今その言葉の真意をしみじみと感じていた。いやこれはもしかしたら朱に交われば赤くなるの方かもしれない。こちらの方がより、狂った最低な思想考えを友達の間で共有し共存し破滅しているイメージが鮮明になったからだ。この2人は、私にとってそんな存在に思えた。自分とは違う存在で、最も自分と関わりたくない人種だと思えた。

「それじゃあ、行きましょうか」

 そう言いながら親戚のその人は一度も子供の方を見ないで、私の方をじっと見てきた。濃い目に描かれたアイライン、不自然にこけている頬、艶っぽく白髪の1つも見当たらない髪の毛、全く染み一つ見えない肌、痩せているという領域を超えたくびれ、そしてその体にはまったく似合わない大きな胸に、それを見せつけるような胸元が大きく開いた服。どこをどうとってもきれいな女性には見えなかった。人間が作り上げたクリーチャーにしか見えなかった。地球人の浅ましさが、母とその友達の浅ましさが、情けなくて仕方なかった。もしもこんな母と実の親子関係だったら、絶縁間違いなしである。本当に、私が宇宙人でよかったと思えて仕方なかった。

「うちの崇をよろしくね」

 そうして取り繕った笑いを浮かべて、2人は部屋から出ていった。私がそのドアの方向を見ていたら、後ろからドーンと押されてしまった。

「お姉ちゃん、遊ぼう!!」

 ゴロゴロゴローっと転がっていく私の心配なんて全くしないで、崇と呼ばれたその親戚の少年は私に構い始めた。

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