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どじっ娘JKは宇宙人でこの世界を征服するそうです。  作者: 春槻航真
第13章、高校野球と母親の決意
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94枚目

 目が覚めて一番最初に驚いたのは、炊飯器にご飯を入れつつ首を傾げる母の姿を、台所で発見したことだ。母はわざわざ釜を取り出さずにご飯を入れていた。零れたらどうするのか、どうせ水を入れに行くのに面倒じゃないのか。そんな疑問がわいてきたがとりあえず喉の奥に押し込んだ。

「おかあさんおはよー」

「わ!?!?ちょ、ちょっと杏里!!」

 私は Cosmo girls と書かれたTシャツを着ながら、まだパンツもろくに履かずに台所へ来ていた。私としてもこの時間に彼女が起きていることが珍しかったのだ。そうじゃなくとも帰ってくること自体が珍しいのだから、こんな格好で出歩くのも勘弁していただきたい。痴女ではないのだ。決して。

「あんたなんて格好で出歩いてんのよ」

「キャミソールのめっちゃ若々しい下着でお米炊こうとしているあんたに言われたくないわ」

 私は珍しく彼女に突っこみを入れた。あまり母に対してあんたなんて呼び方しないのだが、この辺の遠慮がなくなってきた感は同級生たちの悪い癖だ。

 私はダルダルのTシャツをあたかも極短のワンピースかのように着こなしながら、お母さんのもとへと近づいていった。

「なにしてんの?ご飯炊くの?」

「あーうん、どうやるの?杏里教えて?」

「……普通大の大人ならご飯くらい炊けるようになってるはずなんだけれどもなあ……っておい!!」

「ん?」

「何であんた米そんなに入れてんだ?」

「えだってここに4ってメモリがあるじゃん」

「お母さん、知ってる?これは水を入れたうえでのメモリなんだよ?というか炊くとき水を入れるって知ってた?」

 母は信じられないことに首をぶんぶんと横に振った。嘘だろう。この人は仮にもここまで三十数年間暮らしてきたのだろう?そんな人が、米のとぎ方どころか、米をとぐのに何が必要かすら知らないだなんて、信じられないことだった。

「とりあえずこれ戻すね」

「正しいやり方教えてよ」

「それはいいんだけれどもさあ……」

 私は少し呆れながらこんな質問を飛ばした。

「何でそんなこと覚えたいの?」

 え、えーっと考える母を尻目に、私はご飯のセット方法を教えた。因みにうちは無洗米だから、研ぐ方法は教えなかった。洗剤使われたら困るし。

 さてそれよりも、今日は高校野球というものを勉強しなければならないのだ。私はようやくだぼだぼのTシャツを脱ぎ、少し寄せてあげてブラジャーを付けた。こんなことをしても胸は大きくならないのだが、まあ儀式みたいなものだ。一向にフィット感の変わらないブラジャーが、むかついて仕方なかった。ちょっとくらいきついと言ってもいいんだぞ?そんな馬鹿なことを考えているうちに、私はすっかり着替えを済ませていたのであった。

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