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誰に導かれなくてもぼくらは生きる  作者: 城乃華一郎
序章
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8.セカンドインプレッション

2016年11月2日:タイトルのピリオドを他に揃えて半角から全角に修正

 一周回って、この世界をどう楽しんでやろうかという思考になってきた。笑えないのは趣味じゃねえ。ああ、まったく趣味じゃねえ。

 まず考えてみよう。まだデメリットや消費の確認は取れていないが、ユニークスキルとやらのおかげで、俺に敵意を抱ける奴はいない。これはデカい。

 チンピラ悪党敵役の類に八割方引っかからないなら、快適な異世界ライフが送れるだろう。

 軍だの戦争だのも、俺にヘイトを集めてから、敵意を消せば、やり口の是非はともかく精神ごと叩き壊せる。補助魔法なり、自前なりで対象を拡大できるようなら、いけるだろ。


 唇をひん曲げて笑いながら、二の腕を掴んでいたカグナの手をそっと振り払う。歩くのには邪魔だった。

 すると、彼女は、行き場を見失った掌を、ためらいがちに握りかけ、ぐっと握り込んでから大きく広げ、腕を下ろした代わりに、口を開く。青い目線はずっと、見上げるように、俺の顔。


「キスケは、その…たまに、笑顔が怖いな…」

「そうか? ワリィ。でもお前、軍のえらいさんの割には、コワモテに免疫が薄いんだな」

「振り払うのも、出来ればやめてほしい…少し、傷つく」

「雑ですまんね」


 鏡がない。そういや俺は今、どんな顔の奴になってんだ?

 ついでに聞いてみるか。


「なあ、カグナ」

「なんだ? 言い過ぎたかな、ごめん」

「いやあ、いいんだ。他人が俺をどう見るかはしょうがねえ。俺にはどうにも出来ねーって。むしろ、カグナから見て、俺はどんな奴に見えてるんだ? もっと聞かせてくれよ」


 ウェルカム、と両手で来い来いのジェスチャーをしてみせる。

 ちなみに俺から見たカグナは、新卒二年目で仕事姿も服に着られなくなってきたあたりの会社員って印象だ。自分の立ち位置に苦慮してる感がまだあるものの、懸命に立場をこなしている。頬は幼い丸みをまったく持たず、開けた額は明るく知性を示し、するりと横に長いタレ目タレ眉が、爽やかでいて、やさしい。

 その自然な太さの眉が、ハの字の真ん中を開き気味に目を見開き、笑った。


「純粋な人間族ではないのかな、獰猛な、格好いい、覇気を感じるよ。歯並びも綺麗だ。肉付きは、その割には細い気もするが…。技術ではなく、何かの概念(スキル)を修めていると見た」


 格好いい、の部分だけ、後付けでねじ込まれたみたいに声のトーンが高かった。ははっ。男にしちゃ、標準ぐらいの肉の付き方かなと、自分で見える範囲では思っていたが、さすがファンタジー系ということか。背丈は十分に高いと思うが、横幅や太さはこれで細身らしい。しかし、その俺よりもさらに細身のこいつは、どういうことなんだ?

 頭に対して肩幅は倍ほど、小顔を支える首も華奢だ。今は、結い上げていたポニーテールを解いているから、首に対する髪幅も見比べられる。滑らかな質感の髪は、青髪と一口に形容しても、潤いが人間のそれとは随分異なり、一本一本が重たそうに見えた。それで、シルエットが、下に行くほど外側へ膨らむというより、まっすぐ下向きに髪束が落ちているのだろう。


「カグナは綺麗だよな。青いのに、あったかい感じがするよ。上着が黒なのもあるか、似合ってる」

「それは…」


 泣きそうな顔になられた。ええー、ほめたじゃないっすか。

 眉と目で作られた両ハの字が、歪んだしわで、八の字に変わる。口元までへの字というより、八の字だ。いろいろ重ねてくるなあ、こいつ。


「それは、見た目は、亜人なんだ、当然人間族から見て、魅力のあるようになっているさ…」

「そうなの?」


 そんな世界観聞いたことないぞ。出てくるキャラが全部見た目悪くないとかはありそうだとわかっても、亜人に限定しての話は知らん。


「亜人は、基本的に、人間と婚姻するために存在する種族だからな。種の根幹を成す魔法がそうなんだ」


 そうとは、人間から見て魅力的ということか。ええ、愛玩種族とかじゃねえだろうな。笑えないぞ、それ。


「だから、私達は、人間を愛する。本能的に、人間を求める。けど、人間達から見て…キスケから見て、私を、本能的に求めるかは…」


 それ以上は、言わずとも伝わってきた。うっすら涙の浮いた目よりも雄弁なものはないだろう。

 自信がないってことだな。


「安心しろ」


 ぐい、とつむじを抑えるように、撫でてやる。


「お前みたいなのを、嫌いになれるわけねえだろ」

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