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~ 白い花 ~  作者: MiYA
4/4

~ 卵 座 ~

司は 何度か


「兄貴-!」


と呼んだが …


哲からの 返事も 哲 の 姿も見えなかった


良く聞く 狐につままれたような …


不思議な気持ちを抱いたまま …



司 は 哲 に 貰った 黒い革のバック と


借りてきた 桶と柄杓を持ち …


霊園の道を 駐車場に向かって歩いた



水場に 桶と柄杓を戻すと …



何だか急に 胸騒ぎを感じ …



今来た道を戻り 墓へと戻った …



戻ると …


墓の前に ハッキリ と 見えた …


白い花束の中に …



一輪だけ 真っ赤な薔薇 が …



「 兄貴!! 」



司 は 慌てながら


墓石の横に刻まれた 名前を確認した …



平成 二十七年 七 月 十三 日 …


小野 哲 … 享年 四十ニ才 … 永 眠 …



切なさが 司 の 心を貫いた …



司 は その場に 踞り …



「ごめん … ごめんな 兄貴 … 俺 … 生きていて … ごめんな … 」



司 は 泣いた …


心が 張り裂けそうだった …




暫くして 呆然としたまま …


駐車場 へと 向かって 霊園の道を歩いた…



哲との 様々な 思い出が


胸の中に 溢れる …


楽しかった 子供の頃や …


憎いと 怒りを抱いた 事 …


生きる とは 死ぬとは …


人生とは 何なのか …


肉体を 失った 魂は


何処へと 向かうのか …


そんな 想いばかりが 心を巡る …



駐車場について …


来た時と同じように …


ツバメタクシー に 乗った …


だ が …



司 の 心 は 其処には無く


想いの中を 駆け巡っていた …



帰り道は 口数の少なくなった 司 に …


運転手も 疲れてしまったのだろう …


と 気 を 遣 い


あまり 言葉を掛けはしなかった …


タクシー が 昼過ぎに 裏野ハイツに着くと …


司 は 料金を払い タクシーを降りた …



まだ 呆然としたまま …



部屋の鍵を開け リビングの ソファーに


ストンッ と 座った …



整理のつかない 頭の中は …


グルグル と 渦を巻くように


只 想いが 巡るだけ …



ソファーに 躰を横たえ …


軈て 司 は スゥ- スゥ- と 寝息を立てた …



サワ~ サワ~サワ ~サワ ~



見た事も無い 立派な 大樹の繁る森には …


夜空が 拡がっていた …



「此れは 夢か ? 綺麗な星空だ … 不思議な事があって 気が沈んでいたから 少し助かるな …」



司 の 耳に …



太鼓 と 笛の音が聴こえた …



~ ♪ ~♪ ~♪ ~♪ ~♪~♪~



♪~ 村~の 鎮守の 神様の~



司 は 音や唄に誘われるように


森 を 進んだ …



♪~ 今~日は めでたい お祭り日~



ドンドン !ヒャララ ~ ドン ! ヒャララ ~


ドンドン ! ヒャララ ~ ドン! ヒャラ ラ ~



軈て 森の中に …



♪~ 朝~から 聞こえる 笛 太鼓 ~



ポッカリ と 草原のような 開けた空間が現れた …



其処には …



見覚えのある 卵形の石が見えた …



「あれっ … 祭りじゃないのか … 」



司 は 少し 残念そうに 呟いた …



裏野 ハイツ の 横にある 卵形の石 …



気にならない 訳 は 無い


存在感 溢れる 石 だが …



触るのも じっと視るのも …


石に失礼なのではと思い 遠慮していた …



でも 夢の中ならば と …


司 は 恐る恐る 近づくと …


そっと …


両 手のひら を 卵形の石にあてた…



ドッ ク ン … ド ッ ク ン …



不思議な 卵形の石 の 鼓動が 波を打ち


司 の 手のひらから 躰を伝う …


ビクッと 司 は 手を離した …


其でも …


石の 鼓動 に 合わせ …


司 の 脳に メッセージが流れた …



ド ウ … 生 キ ル ?


何 ヲ シ テ … 生 キ ル ?



司 は 声にして 応えた …



「解らない … 只 … 此の病気が治れば良いと … 其しか … 解らない … 」



ドクンッ ドクンッ ドクンッ …



病気 ガ 治レバ …


何 ヲ スル … ?



司 は 再び 応えた …



「… ずっと 病気だったから … 解らない…何をしたら 良いんだ … 俺 … 」



ドクンッ ドクンッ ドクンッ ドクンッ!




探 ス カ ?


我 ト 伴 ニ …



司 は 困惑したような 覚悟したような …



そんな 顔をして 頷いた …



スゥ- ッ と 司 は 石 の 中 に吸い込まれるように 姿 を 消 した …




ドン! ドン! ヒ ャ ラ ラ ~ ドン! ヒャララ ~



♪~ 朝~まで にぎわう 宮の森 ~





三ヶ月後 …



司 の 家賃が 振り込まれず


不信に思った アプリコット ハウス の 社員が 102 号室を訪ねると …




ソファーで 眠るように 死んでいる 司 を発見した …



検視の結果 …



死後 三ヶ月は過ぎているが



不思議な事に 腐乱等は無く …



たった 今


息を引き取ったように見えたという …




それから もう一つ …




裏野 ハイツ の 横の 卵形の石が



忽然と消えていた …



卵形の石が あった場所は



土が焦げたように 真っ黒くなり



グルグルと卵形に巻かれた


線のように凹凸を作り




誰かの 悪戯なのか …



真っ白な 蓮の花が 1本 咲いていた …




卵形の石 と 司 の 魂は …


何処に 消えたのか …


誰 に も 解 ら な い …



誰 も … 誰 に も …



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