~ ドアを開けて ~
司 の 病 は …
要約するなら 日光を浴びると 死に至る…
と言えば良いだろうか …
色素性乾皮症 … 通称 X P …
難病である 此の病気と闘いながら
司 は 40才になった …
略 30才で 死に至ると 言われる
此の 恐ろしい病に於て
神経症状の 異常が少なく
自力で歩行し 自力で食事が摂れ
一人暮らしが 出来る事の方が 希な事なのである …
司 は 両親の手厚い愛の中 …
25才迄 実家で過ごしていた …
父が 事業を行っていた事もあり …
病気以外の不自由は
何一つ 感じずに …
25才の時 …
不幸な出来事が 司を襲う …
両親が 卑劣な テロリスト達が 引き起こした 飛行機事故で 命を 落とし …
両親の葬儀が済むと…
父の後を継いだ 長男の 哲 が
司 を 厄介者と 思っていたのか …
親族会議を開き 司を前に
総資産からすると 微々たる 金を渡すかわりに
此の家から出て …
今後一切 小野家とは縁を持たぬ事を迫り 誓約書に サインをさせた …
親族の中で …
誰 一人 哲に意見する者も 司を擁護する者も無かった …
難病を抱え 天涯孤独となった 司 は …
日の出町とは 別の街の 住宅に住んでいたが …
人前に出る事が無いのに加え
日の射し込まない部屋に 一人暮らす 変わった男に
世間の目は 冷たく …
噂か 偏見なのか …
同じ住宅に 長く住む事は 許され無かった
…
暫くは 其の街の中で 引っ越しを 繰り返していたが …
インターネットで 偶然 見つけた
日の出町の景色に 惹かれ …
同じく インターネットの賃貸情報で
裏野ハイツを見つけ 司は 引っ越しをして来た …
此処に 来る一年程前から
左足の調子が悪く
「あぁ … とうとうキタか … 車椅子になるかも知れないな …」
と 覚悟していた 神経症状も
裏野ハイツに 入居して 1ヶ月程で 治まったのか …
痛みも 変形も 消えていた …
明日は なるべく 日光を避け
朝早くから 出掛けられるよう
タクシー会社に連絡をした …
日の出町の タクシー会社 ツバメ では
介護タクシー も扱っているので 利用したいと告げ
病気の話しと 注意点も話した …
介護タクシーと言っても
大抵は 老人介護であり
今までは 断りたいと タクシー会社が言っているのだと
司 が 感じてしまう程 雜な 返答が 多かったのだが…
「 日の出町に 同じ病の人が居るのだろうか… 」
と 司が 感じる程 親切に車内での対策法を提案して貰えた …
司 は 嬉しくなり
「駅まで … 」
と 告げた 行き先を 変更して …
電車には乗らず 行き帰り ツバメ タクシーに お願いする事にした …
お金は掛かるが …
其の分くらいの蓄えは あるのだから …
気持ち良く 母に会いに行く事に 決めた…
其の日の夜は …
何だか 幼い頃に 戻ったような 気分だった …
むし暑いせいか 寝つけず …
真夜中に ふと 冒険したくなり …
念のため 遮光マントを 羽織り 玄関のドアを開けた …