~ 私 の 病 ~
鎮守様 …
お母さんを導いてくれた事 …
本当に 有難う 御座いました …
心から 感謝致します …
卵形の石の前で 佐野 弘 は 祈っていた…
「弘さぁ~ん! そろそろ 行かなくちゃ!」
弘 は 右手を上げて
「あぁ 今 行くよ 清美 !」
そう応え 立ち上がると 卵形の石に一礼し
車で待つ
妻 清美 の 元へ ゆっくりと歩いた …
102号室の前で 軽く会釈をし …
心 の 中 で …
小野さん ! お元気で …
そう呟き 妻と暮らす新居へと 引っ越して行った …
102号室の ドア の 向こうでは …
弘 と 同じように …
小野 司 が 過ぎ去る 弘 の 足音に 頭を下げ …
「佐野 さん … 有難う 御座いました … お幸せに … 」
そう呟いていた …
玄関から ゆっくり と 暗い室内へと歩き
司 は ソファーに腰を降ろした …
其から ボゥ~ っとした 顔をして …
佐野 さん とは …
世界の医療の最先端技術や 医薬品を紹介している
translational medical と言うサイトで知り合って
個人的に メールを交わすようになった…
隣に住んでいるのを知るキッカケになったのは
俺が うっかり 薬 以外の医療品を 医師に頼み忘れた時に
本当に困ってしまって …
佐野 さんに 頼んでみたら …
「大丈夫ですよ! 其なら直ぐ手配できますよ ! 安心して下さいね !」
と 医療品を送ってくれた …
俺は 佐野さんに 感謝している …
家から出る事さえ 儘ならない 俺を
助けてくれたのだから …
佐野 さん みたいな人は
幸せにならなければイケナイ
心から そう思う …
隣に住んで居る事を知ってから …
佐野 さん の 不思議な お母さん も …
三日に一度は 壁を抜けて現れて …
カァ~ワァ~リィ~ナァ~イ~ィ ?
と 夕飯を持って 様子を見に来てくれていた …
お母さん も 成仏 出来て 本当に良かった
幽霊とか 霊 とか 言うんだろうけど …
そんな事 関係ないっ!!
俺だって …
人間じゃない者みたいに 生きているし …
佐野 さん とも メールで話したけれど …
魂って 言うのは …
其の人間の 想いそのものが 反映されて
其の 強い想い 執着が 形として 人の目に映る
だから 大切な事は …
想いを残さず 潔く 逝く事 …
それが 魂を磨くって事なのだろう …
と そう思う …
俺も …
何時 死んでも おかしくない …
そんな 躰 だし …
何だか …
俺も 母さんに 会いたくなったな …
毎年 年末しか行っていないけれど …
思いきって 行ってみようか …
母さんの 大好きな …
白百合を入れて
白い花だけで作った 花束を持って …
此の 真夏に …
何も知らない 奴等に
化け物って 言われながら …
ハハハッ!!
40才にして 初めての挑戦だな !
良しっ! 決めたっ!!
司 は 早速 クローゼットへ向かうと
重装備とも言える
紫外線カットの遮光服や 手袋 帽子 等 を 揃え
リュックには 薬や 医薬品等の
忘れ物がないように
確認しながら 入れた …