軍人娘と知略の王子
はじめての短編ですが途中で切った感満載です。
どう書けばいいのかちょっとまだわかんないですね。
2015/08/31年齢の描写を削除
「私と結婚してください」
夜会で彼は私に恭しくそう言った。
そんな彼を見ながら私は心にもないことを言う。引き攣りそうになる顔は鋼の精神力でねじ伏せた。
「はい。よろこんで」と。
先ほど私に結婚を申し込んだ男、ジェルノーゼ・フル・グラッドはこの国の第三王子である。
頭がよく、兄弟仲もよいので将来は第一王子の補佐として宰相になるのだろうというのが貴族間でのもっぱらの噂である。
そんな彼がお忍びで私、マルティナ・ゼッタ・プロテーヌ侯爵令嬢のところに訪れたのは彼が求婚する夜会の三日前だった。
女性にしては高くなりすぎた身長とやんちゃだった兄、弟に囲まれて育った私は両親の期待を完全に無視しておしとやかには程遠い、軍人になった。
軍人時代には女性ということで侮られやすかったので鍛えに鍛えて接近戦では上位に食い込む成績を勝ち取った。筋肉だけは元々つき難かったのか、あまりつくことはなかったが。
そんな軍でブイブイ言わせていた私のもとに両親からの手紙が届いた。
内容を簡潔に言うと『そろそろ結婚相手を探すために一度戻ってきて夜会に出席しなさい』というものだった。
普段の私なら何をこんなものと鼻で笑ったかもしれないが、当時の私は周りの同性が結婚して群を辞め、少し寂しくなっていたのかもしれない。5年ぶりに私は実家に帰った。
そして第三王子が私を訪ねてきたというわけだ。
◇ ◆ ◇ ◇ ◇ ◇
「マルティナお嬢様、お客様がお見えになっています」
夜会までの暇な時間を淑女らしく編み物している(させられている)ところに侍女が客の来訪を伝えてきた。
編み物をするのもちょうど億劫になっていたところにお客様だということで私はまだ名前も顔も知らないお客様に精いっぱいのおもてなしをするように伝えて客間に向かった。
「待っていました」
客間に入るとそこにはわたしと同じくらいの身長であまり体つきもよくない、金髪金眼の男の人が待っていた。そこで私ははて、と記憶を探るがこんな筋肉の付いていない人との交流はなかったはずだ。
「あぁすみません。僕とあなたには交流がありませんでしたから、私が誰かわからないのは当然です」
わたしの不穏な空気を察してくれたのか、その男の人は自己紹介をしてくれた。
「僕はジェルノーゼ・フル・グラッドです。ここまで来れば誰かわかるんじゃないですか?」
「!?」
私は声にならない声を上げた。
何故なら彼は顔こそ見たことはないがかなりの有名人、第3王子だったのだから。
「ジェルノーぜ様。この様な姿で申し訳ございません。何か御用でしょうか」
この目の前にいる第3王子を少し性格の悪い方だと思いつつも声には出さない。
彼は途轍もなく頭の良い方だという噂をよく耳にする。
そんな彼がここにきたのだから、恐らくは軍関係の事だろうと、そう思っていた。
「僕は名目上の妻を探しています」
「は?」
だからその言葉を聞いて思考が数瞬間止まっていたとしても誰も責めないだろう。
それほどまでにその言葉の意味がわからなかった。
「だから僕はお飾りの妻が欲しいんです」
と、彼は少し不機嫌そうに繰り返した。
「ええ。それは分かりましたが、私に何かお手伝いできる事があるのでしょうか?お言葉ですが私は軍人の身であるので、何かお手伝いできる様な事はないと思うのですが…」
そう。私は女でありながら王子と同じくらいの身長だし、軍人である私にはあまり親しくしている様な貴族の令嬢などいない。
それにこの王子の目を見て何か企んでいる様な、そんな気がした。
そう答えると彼は更に目に剣呑なひかりをともした。
「僕は貴方にこの役をお願いしたい」
「ええっ!?」
今度こそ貴族令嬢にあるまじき声が出てしまった。
それに気づいた。
彼の何かを企んでいるという目の輝きが先ほどより増している様に感じられた。
これは聞かないと後々大変な事になる気がした。
野生児に近い私の勘はなかなか良く当たるのだ。
「そもそもどうしてジェルノーゼ様は名目上の妻など探しているのでしょう」
その瞬間、彼の目の輝きが一層増した気がするがその時の私はそれを気のせいだと切って捨ててしまった。
「いえね、僕が将来宰相になるのではないかと言われているのはご存知ですか?」
「ええ。それくらいは…」
「僕もそのつもりだったんだけど、お兄様がより強く僕を王都に繋いでおこうとしてね。婚約者をあてがおうとしている様なんだよ」
「はぁ」
少し茶目っ気を出した様に言う王子と困惑する私。そんな状況を特に気にする事なく王子は言葉を続ける。
「でもねぇ。あてがわれた令嬢、これがまた酷くてさ。何ていうか高慢ちきで鼻持ちならないやつっていうの?なんだかそんな感じで結婚したくなかったんだよね」
当たり前でしょ?と問いかけられてもどう答えていいのかわからない。
「それでお兄様についつい言っちゃんだよ『僕には昔からお付き合いしている方がいる。もう5年程になるけど、向こうの都合で結婚できなかった。でも僕はその事結婚するんだ』って」
「それでどうして私なんですか?」
それだけ聞くと別に他の人でもいいはずだ。
私がそう聞くと王子はいやぁ、と頭を掻いた。
「お兄様にじゃあそいつを連れて来いって言われてさ。でも喋った内容はてきとうだからそんな人実際にいない。どうしようかと考えていたら…」
「ちょうど5年振りくらいに王都に帰ってくる未婚の女性がいるという話を聞くじゃないか。これはチャンスだと思ったんだよ」
王子様が少し間をおいて一気にまくし立ててくる。この流れは何かまずい気がする。
「なので僕の結婚相手としてお兄様に紹介させてほしいんだが」
「そ、それは…」
そもそもこれを受けることによっての私のメリットもない。政略結婚も多いこの世の中だけど、さすがにこの縁談は何もメリットがないように思える。いや、次期宰相と名高い第三王子と婚姻関係を結べるというのはメリットなのか…。
頭の中でぐるぐる考えていた私の考えを見透かしてか王子は苦笑していた。
「もちろんあなたにもメリットがあるように色々と考えてきましたよ。勿論あなたに何かを強制するということはありません。そして新居として広めの屋敷を頂いてるのでそこを好きに使っていただいて構いません」
「はぁ…」
「お兄様にバレなければ恋人を作っていただいても結構です」
普通ならこんな条件の出され方をして、こんなに愛のない宣言をされたら断るかもしれないのだけど、そしてもちろん普段なら断るのだけど、この時の私は周りの結婚と、久しぶりに帰ってきた実家で頭がどうにかなってたらしい。結婚を承諾した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夜会で成功?を収めた私たちはそのまま第一王子のところにあいさつに来た。
「まさか本当に結婚したい奴がいるとは思わなかったぞ、ジェル」
「僕はそんなに信用がありませんか」
開口一番に本当に驚いた顔をするのはジェルノーゼ様は信用されてなかったみたい。
苦笑してそう返すジェルノーゼ様。
「それで、こちらが私の結婚相手のマルティナ・ゼッタ・プロテーヌ侯爵令嬢です」
「ほう…。そなたが噂の弟の結婚相手か」
「お初御目にかかります。マルティナ・ゼッタ・プロテーヌと申します」
「弟は仕事にのめりこむと睡眠を忘れる癖がある。そんな時は引っ張ってでもとめてやってくれ。そなたにはそれができそうだ」
「はぁ」
これは果たして褒められているのだろうか?
こうして挨拶も終わって私達…というか私の新居に二人で向かうことになった。
その間ずっと腰を抱かれていたのは何故だろう?
「こうしているほうが仲良しな夫婦っぽいでしょう?仮にも5年ほど付き合っていることになっていますから」
ということらしい。
そしてこの結婚のあと、私が溺愛され、結婚のためにジェノーゼ様が方々に手をつくしていたことを知るのはもう少し後のお話。
FIN
一応あとの話もありますが…。それはまたの機会に。
勉強します。