07
クソ、クソクソクソクソクソ・・・!!!
頭の中で叫んだ。
思考回路はぐちゃぐちゃに乱れ、まるで螺旋のように巡る。
どうして、どうしてどうしてどうして!
歩夢はひたすら走り続ける。
雨に濡れようがどうでもよかった。
むしろそんなこと、思考の隅にすらない。
湧き出る不の感情に、他のことなど考えることは不可能だった。
なんで、こんな身体に生まれた?
なんで、男として生まれてこなかった?
なんで、女なんだ?
できるだけ、触れずにいる疑問にスイッチが入ればもう止まらない。
事件はもう起きてしまったのだ。
そして自分はまた一人傷つけてしまった。
ああ、裏切った。
歩夢は罪悪感と呼ばれる感情にみまわれる。
それと同時に深く傷ついた。
もちろん、裏切ったのは自分なのだから傷つく権利などないのだけれど。
だから、自分を恨むことしかできなっかた。
クソ、クソクソクソクソクソ!!!
こんな言葉で、自分を虐げることしかできない。
なんて情けない、歩夢のは思う。
今までにも何度かこんなことは起こっていた。
それは今日のように歩夢の目の前ではもちろんのこと、きっと歩夢の知らないどこかでも。
今現在だって、真実を知った誰かが涙を流したり、憤慨していたり。きっと。
結局強く想われるほどに、裏切ってしまうのだ。
性別は公にしたくはない。
そんな自分のエゴは罪なのだろうか。
自分自身に嘘をつきたくない、そんな感情まで罪なのだろうか。
どちらにせよ、女と公表しようが男と公表しようがそれは嘘ではないか。
まるで子供の屁理屈のようで、バカらしく思えてくるこの思考も歩夢にとってはこの世に二つとない大きな悩みだった。
何事にも譲れないほどの。
「くそったれ・・」
立ち止まり、上がる息を吐き出すようにつぶやく。
言葉は雨にかきけされアスファルトへ溶けていった。