04
「私さ、今v系ハマちゃったんだよね・・・。」
「えー。マジないんだけど。あんた病んでる系?」
「違うから!ナルとかそーいうんじゃないってー。」
「ナルとか超ウケるー。」
「だからー!違うって言ってんじゃんかー!」
「じゃあ何?超イケメンとかそーゆー落ち?」
「・・・まあ、否定はしないけど。」
「うわ、図星とかー。てことはアレでしょ。ビジュアル系だけにビジュアルだけ的なー」」
「めっちゃムカつくんだけど!!」
「そんなむきになんないでよー、ごめんって。」
「・・・とにかくこのPV見て!曲、最高だから!」
「はいはい、わっかたってば・・・。」
今日はno fry発売後8日を過ぎ、東京からスタートした地方遠征も北海道を折り返し地点とし、本日は宮城県仙台市にてインストアイベントが行われていた。
今日は土曜ということもあり、学生だろうか、若い年齢層が多いように見えた。
イベントはいつものコンビ兼トリオの漫才に、歩夢と後太の安定した進行により順調に進み残すは握手会。
東北の中心の仙台ということもあり、近隣の県からのファンも多いのかたくさんの人が長蛇の列をつくっている。
そんな握手会も一時間を過ぎた頃、あきらかに浮いた2人組の順がやってきた。
金髪に日焼けした小麦色の肌、長い付けまつげ。
珍しいファン層に歩夢は少し驚いた。
「キャー!マジ本物だ!超やばい!」
片方の少女が感激したように言う。
「麻美、マジうるさいから!」
もう片方の少女は周りを気にするように言った。
「あはは、ごめんって友香。実物がカッコよくてつい」
「ありがとう。arkのインストは今日が初めてだよね?」
歩夢は二人の勢いに苦笑いする。
「そ、そう!実はあたしら、最近arkのこと知って!マジいいなって。」
友香と呼ばれた少女は照れくさそうに言う。
「あたしは友香の紹介で。もち歩夢推し!」
麻美は目を輝かせて言うと、友香も負けじとあたしもと続く。
「二人とも嬉しいこと言ってくれるね。明日のライブには来るの?」
「もちろーん!楽しみにしてまーす!」
歩夢の問いに麻美は元気よく答える。
「明日は頑張ってください!」
友香はうっとりした表情で歩夢を見つめ言った。
「二人もね。一緒に楽しもうね!」
歩夢は二人の手を握り言う。
「はーい!まかせて!」
麻美はウィンクして笑う。
「すいません、そろそろ」
だいぶ時間がおしたようで係員が二人を誘導する。
「あ、はい。麻美行くよ!」
「わかったって。じゃあ明日!」
なかなか握った手を離さない麻美に友香はあきれたように言い、二人は次のメンバー、リリスに続く。
そのとき別れ際、友香は歩夢に寂しそうに薄く微笑んだ。