09
翌朝、歩夢はホテルのベットにいつまでも横になっていた。
目は随分前から覚めているものの、身体が言うことを聞かないのだ。
若干熱もあるのだろう。じわりと汗をかくき妙に寒気がする。
確実に昨日の雨に打たれたことが原因なのは明白だった。
しかし、時間は刻一刻とすぎていくものでそろそろ部屋を出て皆に合流する時間。
歩夢はため息をつく。
昨日今日と、迷惑をかけ過ぎているのだから。
「まいったな。」
一人ごとは虚しく宙を空ぶる。
ピンポーン
そこにインターフォンがなった。
だれだろうか、マネージャーが迎えにくるとしても早すぎる。
歩夢は重い身体を起こた。
「俺、後太。開けてくれるか?」
インターフォン越しに後太の声がして、歩夢は鍵を開ける。
「よう、昨日はお疲れさん。」
少し、バツが悪そうに進は言った。
「後太も。・・昨日はありがとう。」
自分でも気持ち悪いほどの清々しい表情に、進は少し面を食らったようだった。
「いいってことよ。・・まあなんだ、昨日のことぶりかえさせて悪いんだけどさ。」
「なに?」
ちょっと困ったように後太言う。
そんな表情がころころ変わる後太に苦笑いしてしまう。
「昨日の子に預かった物があってさ。」
すると後太はポケットから何かを取り出した。
それはきっと手紙だった。
とっさにコンビニで買ったのだろうか、事務的な茶色の封筒。
可愛らしい字で歩夢宛てと書いてある。
「まあ、強制はしない。読むのは自由だ。」
そう言って後太は部屋をでて行った。
歩夢は迷うことなく、封を開ける。
dear歩夢
さっきはごめんなさい。
凄くびっくりして、ひどいことを言いました。
だってずっと男だと思ってたから。
正直だまされたって思う。
でもやっぱり好きだし、もちろんarkも好きです。
男装かもしれないけど、私は歩夢くんが好きです。
これからも応援してます。
fromゆか
「はは、男装か。」
歩夢は笑った。
「うん、確かにそうだ。」
無意識に涙がこぼれる。
「ありがとう。」
小さく呟く。
そんな自分にさえ、彼女が受け入れてくれたことが酷く嬉しかった。
「いつか、本当のことを伝えるから・・。」
手紙を握りしめ、歩夢は誓った。