第一話 天才と何とかは紙一重って言うけど実際は違うと最近気づいた
ども~、お久しぶりです。eifosです。
もう片方はもう少しで書きあがるのでもう少々お待ちください、なにとぞご迷惑をおかけしまして誠に申し訳ありませんでした!
それではどうぞ。
第一話 天才と何とかは紙一重って言うけど実際は違うと最近気づいた
*++ Ⅰ ++*
「うーーー、ねえみんな何かいいアイディアないの!?」
今日の会長はすこぶる機嫌が悪いようだ。まあ原因は分かりきっている、昨日の第一生徒会からの宣戦布告騒動だ。あれから部屋に戻り、ずっと考えたのに何も浮かばなかった。今日もこうやって集まり、考えているが何も浮かばず仕舞だ。
「まあまあ会長、落ち着きましょう?焦ってもいい考えは浮かびませんよ?」
「わかってるわよ!あんたも文句言う前に考えなさい!ていうか司、何か情報は入ってこないの?」
「残念ながらまだ何も」
「うう、ほんとどうすりゃいいの・・・?これじゃ負けちゃうよ・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・』
会長のネガティブ発言のせいでみんなが黙り込んでしまう。ああ、イヤな空気だ、このままダンマリを決めこ・・・・・・むわけにはいかないか、それじゃあ何の解決にもならないな。よし、初心にかえってみるか。まず今日の議題は〔誰でも知っている意外なスポーツ〕だったな。よく考えてみりゃこの議題、かなり無茶な議題だな。まず意外って時点で数は限られるし、そこにみんな知ってるが加わるともー不可能に近い気がする。気づくの遅せーよ俺!でも第一生徒会に策無しで真っ向勝負は絶対避けたいところだ。うーん、この際だから裏の裏をかいてありふれたもので勝負ってのもアリかな、たとえばボードゲームとか?俺が思考を巡らせていると由岐がこの沈黙を破り、ある提案を出した。
「ねえサヤ、一つ思いついたんだけどいいかな?」
「え!なになに!?」
「鬼ごっこ、ってどうかな?」
『・・・・・・はぁ?』
由岐以外のメンバーたちの口から間の抜けた声が発せられる、もちろん俺の口からも。鬼ごっこってなんだよ、鬼ごっこって。
「あのな由岐、もーちょい具体的に説明しろよ。なにが言いたいのかさっぱりわからんぞ?」
「つまりアレよ、ほらテレビでよくやってるじゃない。芸能人が賞金賭けて逃げ回るヤツ。あんなヤツがいいんじゃなかなーってさ」
「つまりサバイバル鬼ごっこってヤツだね、由岐ちゃん?」
「さっすがざくろ、よくわかってるじゃない」
ああ、アレね。要するに制限時間いっぱい逃げきるってヤツね、確かにそれなら勝敗も分かりやすいし誰も予想なんかしてないだろう。これなら第一生徒会とも戦えるな。
「確かにそれはいい案ね。麻木、どう思う?」
「俺は賛成です、これなら俺たちにも勝機はあると思います。でも由岐、そのサバイバル鬼ごっこに明確なルールってあるのか?」
「ルール、か。たぶん無いわね。」
「じゃあまずそっからだ。会長、今日中にルール考えとくんで明日の放課後、第一生徒会とアポ取っておいてください」
そういって俺は勢いよく席を立ち、部屋を出る。
「え!ちょっと麻木、どこいくのよ!?」
「帰ります!じゃあまた明日!」
「だからちょっと待たんかい!!」
会長の叫びを無視して俺はダッシュで昇降口へ走るのだった。とにかく今はルールが最優先だ!
+** Ⅱ **+
シュウが部屋を飛び出していったおかげで会議はそれから進展することなく終わってしまった。サヤは第一生徒会との話し合いの予定を取り付ける為に玲士郎のところへ行き、残った私、水上 由岐と1年ズは仕方なく帰ることに。とはいえこのまま帰るのもなんなので二人と一緒に近くのマックへ向かった。
「あの水上先輩、麻木先輩どうしちゃったんですか?あんなに急いで帰るなんて」
「昔っからああなのよ。一つのことに集中し過ぎると周りが見えなくなるってカンジ、まあそれがあいつの長所であって短所なんでしょうね」
「昔っから、ってどういう意味?」
「あいつとは小・中・高って全部一緒の学校なの。ま、流石にクラスまでは一緒じゃないけどね」
ストローで爽健美茶をすすりながらざくろの質問に答える。するとざくろはむくれたように顔を背け、何かモゴモゴとつぶやき黙ってしまった。何か悪いことしたかな、私?少し考えても結局わからなかったので後回しにすることに。
「幼なじみ、ですか。もしかして麻木先輩のこと好きだったりしますか?」
「ええ?何でそうなるの?」
「ほら、古今東西幼なじみが恋人に発展することが多いじゃないですか」
ありえない、と一蹴しハンバーガーの包みを開け、頬張る。だいたい幼なじみが恋人になるなんて今時流行らないって、そんなことが起きるのは物語の中だけ。それにあいつ彼女いるし、私が入っていく隙間なんて微塵もないはず。
「ねーねー二人とも、そろそろ帰らない?もう六時回っちゃったよ」
「げ、もうそんな時間なの。仕方ないわね、今日はお開きにしましょ」
「そうですね。それじゃ俺こっちなんで、また明日」
「うん、また明日」
「じゃあね~」
店を出て司と別れる。それからしばしの間、ざくろと二人きりの帰り道。あたりは薄暗く、ぽつぽつとある街灯がなんとも言えない幻想的な雰囲気を作り出していた。
「ねえ由岐ちゃん、久しぶりだね。こうやって帰るの」
「んー、そうね。中学の時以来だもんね」
そういえばざくろと一緒に帰るのなんて一年ぶりくらい、なんか気恥ずかしいな。ざくろはどう思っているかはわからないけどその会話を最後に私たちは、一言も言葉を交わすこと無く分かれ道まできてしまった。
「じゃあまた明日」
「うん、またね」
トーンの落ちたざくろの声に違和感を覚えたが私はそのまま振り返らずに歩き出す。
「ゆ、由岐ちゃん!」
「ん?なに?」
さっきとは裏腹に少しうわずったようなざくろの声にまた違和感を覚えつつ、振り返った次の瞬間、頭の中は真っ白になった。
「ーーーーー!!」
私の唇に重なるざくろの唇、普段感じない感触に頭の回路はショート寸前。目の前の目を閉じたざくろの顔を見るとさらに恥ずかしくなり赤くなるのが自分でも分かった。あーーーとにかく落ち着け私!!ざくろの唇がふれていたのは時間にして五秒ほどの短い時間だったが私にとってはとっっっっても長く感じた。
「・・・・・・・・・・・・」
陸に打ち上げられた魚よろしく口をパクパクする私。焦りすぎて言葉が全くでてこない、というか何も考えられない。
「その、せ、宣戦布告だからね!」
「は?」
やっとでてきた一言、違う、一文字。何とか落ち着いてきたみたいね、つーか何よ?宣戦布告って?
「由岐ちゃんは誰にも渡さない!絶対に迎えに行くから!!」
「や、だから何言ってんのよあんたは!?」
「じゃあまた明日、ばいばい!」
「せめて理由ぐらい聞かせろってば!」
私の叫びも空しく、ざくろは路地の角へ姿を消してしまった。行ってしまったなら仕方がない、帰るか。ショート寸前の頭でなんとか割り切り、歩き出すと不意にさっきのことが頭をよぎる。突然のキス、しかも女の子同士、で。・・・・・・何思い出してんのよ私は!!あーーもう恥ずかしい!とにかく顔が熱い。今すぐこの場を立ち去りたい一心で足早に家路についたのだった。
+** Ⅲ **+
その日の放課後、私、皇 沙夜香と第三生徒会の面々は中会議室にいた。もちろん第一生徒会との話し合いのために。といってもルールを知っているのは麻木だけ、会長である私にも教えてもらってない。まぁあいつのことだから心配する必要ないと思うけどできれば私にくらい教えてくれてもいいと思うんだけどなー。
「すまない、遅れてしまったみたいだね」
「いえ問題ありません。では始めましょうか」
少々遅刻(とはいえ二~三分ほどだが)してきた第一生徒会のメンバーたち。参加するのは会長の藤宮先輩と副会長の青山君、書記の一年生の子の三人だけのようだ。
「さて単刀直入に言おう、勝負の内容はなんだい?」
「その説明は俺からさせてもらいます」
そういって簀巻き状態の模造紙を手にホワイトボードの前へ移動する麻木。一体どんなモノに仕上がったんだろう?あいつのことだからうまくやってくれたんだろうけど。
「まず勝負内容は学校の敷地すべてを使った制限時間付きの鬼ごっこです。鬼役が第一生徒会、逃げ役が第三生徒会です。」
「ふむ、鬼ごっこか。悪くないな。では詳しく聞かせてくれ」
「はい、ルールは単純で制限時間内に第三生徒会のメンバー全員を捕まえればそちらの勝ち、一人でも逃げきれば俺たちの勝ちです。制限時間は九十分、鬼である第一生徒会は全メンバーを投入して構いません。これは敷地全体を使うということを考慮してのことです。これが大まかなルールです。ただし部屋などに鍵を掛けて立てこもるなどは反則です」
うわー、これじゃこっちがに不利なルールじゃない。何やってるのよあいつは!六対三十ちょっとじゃどー考えてもこっちが危ないわよ、とりあえず今は黙ってるけどこのまま終わったら絶対グーで殴ってやる。
「なかなかおもしろそうじゃないか。青山、君はどう思う?」
「いいんじゃないですか。どちらにも平等なルールだと思います」
「それじゃあこれで決まりで良いですか?」
「ああ構わない、時間もあまり無いことだしね」
「では詳細は今日中にそちらにお送りします」
ありがとうございました、と一礼し麻木は模造紙を抱えて隣の席へ戻ってきた。結局最後まで私たちに不利なルールは変わりないまま終わってしまった。一体何を考えているのやら。それからの話し合いでルール変更は無し、そして勝負の日にちは明後日と決まった。時間にして一時間ほどで話し合いは終わり、私たちは作戦会議のため生徒会室へと向かった。
「さて作戦を聞かせてもらいましょうか副会長?」
「そんな怖いオーラ出さないでくださいよ、ちゃんと作戦ありますから。まず俺が指定した逃げられる範囲、覚えてますよね?」
「ええ、学校の敷地全体よね」
「それが最大の利点です。だって考えてみてください、いくら人数が多い第一生徒会といえど三十人ちょっとでしょ?それだけの人数でこのバカ広い敷地からたった五人を探すんですよ、しかも一時間半以内で。施設の使いようによってはかなり有利に戦えますよ、まあそのためには下見が必須ですから空白の時間を作ったんですよ」
正直びっくりだ。端から見れば明らかに不利なルールをこうも逆手に取るとは、学年十番以内は伊達じゃないってわけ、単なるアニメオタクとは違うのね。
「麻木、あんたホントに頭切れるわね。そこは尊敬できるかも」
「いえいえそんなに褒めないでくださいよ、なんか恥ずかしいですね」
なんて口で言っている割には見事などや顔、まったく何というかこいつらしいわね。ん、あれ?今日はツッコミが無いな、いつもだったら由岐が「その顔で言うセリフじゃないでしょ」、とかツッコむはずなのに?
「由岐?」
「・・・・・・」
窓際にたって夕日色に染まる町並みを眺め、黄昏る由岐。その夕日を浴びた横顔は幻想的で、そしてまるでガラス細工のように繊細で触れたら壊れてしまう、そんな不思議な雰囲気を醸し出していた。正直言って彼女を見たとき、同姓である私ですらドキッ、っときてしまった。別に私はそっちの気はまったく無いけど何というかほら、そういうのあるじゃない、ああもう、ええい!とにかくそういうのなの!あー、話がそれた。ゴホン、まぁあれだね、なんか考えごとしてるみたいで私の言葉は耳に入ってないみたい。
「おい由岐、会長が呼んでるぞ」
「ん、ああ。何か言った?」
「だから会長が呼んでるって」
「ゴメン、完璧聞いてなかった。なに?」
「何か考えごとしてたんでしょ。いつものツッコミが無いからどうしたのかなー、って思ってさ。じゃあそろそろ解散にしましょうか」
自由にしてるみんなを集めて明日の連絡をする。明日は勝負に使えそうな場所や建物を下見に行くのだ。麻木曰く「なるべく見通しがよく、人が集まるところ」が良いらしい。それをみんなに伝え、今日は解散!
+** Ⅳ **+
いつも通りの白い階段を登り、とあるドアの前で足を止める。〔水上〕と書かれた表札、ここが私の家であり死んだ母が残してくれた数少ない形ある遺産のひとつだった。正確には母が残してくれた莫大な財産を使って借りたモノ、といった方がいい。物心つく前に母は死に、父は私と母の死から逃げるように外国へ単身赴任、おかげで身寄りのない私は小学生のころからここにひとりで住んでいる。別にそのことが不幸で自分がかわいそうだ、とかっていうことを強調してるつもりもないし、世界が自分だけに冷たいとか卑屈な考えもしてない。それにほかと比べれば私なんかずっとマシな方だ、金があるあたり。ここはこのあたりでは珍しいオートロックのマンションで学校からもそんなに遠くないので今でもここにいるだけだ。友人は皆、うらやましがるけど実際はただ静かなだけ、むしろ私は家族と一緒に暮らせる方がうらやましいと思う。ただいま、といっても帰ってくる言葉はもちろんない。すでにこれは小さい頃からの習慣になってるから意味っていう意味はないんだけどね。自分の部屋にバッグを放り投げ部屋着に着替えて、そのままベッドに横になる。解いた長い髪がクシャクシャになっちゃうから普段はやらないんだけど今日はそれどころじゃなかった。昨日の一件のおかげで今日一日ざくろとはまともに話してない。なんというかあの子の顔を見るとどーしても昨日のことを思い出してしまい、恥ずかしくなってぎこちなくなっちゃうんだよな~。あの子はどうなのかわからないけどいつもほどの元気が無かったみたいだった。要するに昨日のって告白、だよね・・・・・・。いきなりのキス→他の人には渡さない→迎えに行く・・・・・・・・・・・どう考えても告白以外の何者でもないよね、これ。そういえばあのとき司がシュウの話題を持ち出したときからなんか様子ヘンだったような?・・・・・・あー!!もうやめやめ、このことは割り切ろう。勢いよく体を起こし、天井からカーテンの引かれていない窓へ目を移す。
「・・・・・・雨」
思わす思っていたことが口にでてしまった。日が落ち、暗くなった町にしとしとと降る雨。天気予報では晴れだったはず、はずれたな。雨を見た瞬間、私の心の中にあったモヤモヤがどこかへ消えて少し軽くなった、かも。雨が流してくれたんだなきっと。そのままカーテンを閉め、リビングに向かう。もちろん食事のために、ね。いい加減、割り切ろう。
次回予告
予想外の雨で外の下見が出来なくなってしまい、ちょっと誤算の第三生徒会。仕方なくいつも通りの活動(駄弁り)をすることに。そんなとき、6月に控えた学園祭についての話が持ち上がった。そこで司の一言がとある混乱を招くことに………




