第零話 戦う生徒会
ども!はじめまして、そしてお久しぶりです。震災やなんだかんだで掲載が遅れました。
それではどうぞ!
第零話 戦う生徒会
*++ Ⅰ ++*
生徒会戦、それは私の通う私立星鐘学園で行われる伝統ある行事のことだ。4月の始業式から12月の二学期の終業式までの8ヶ月間、それぞれの生徒会は双方で決めたルールに則り競技を行い、先生の立ち会いの元、勝利した生徒会には勝ち星が与えられる。そして二学期の終業式までに一番多くの勝ち星を稼いだ生徒会に来年度の行事執行権、つまり学校の行事を執り行う権利を与えられるのだ。生徒会の数は三つ、今年度の執行権を得た実力主義の第一生徒会、頭脳派で民主主義の第二生徒会、そしてこれを書いている私が所属する第三生徒会。今までの記録を見る限り、第三生徒会は一度も執行権を獲得したことはないらしい。・・・・・・さて、前書きはこの辺にしておいてそろそろ始めましょうか。これは共に掛け替えのない時を過ごした仲間たちと勝利を目指し、戦った一年間の記録であり、第三生徒会を勝利に導いた副会長の物語。
+** Ⅱ **+
星鐘学園中央校舎三階 第三生徒会室
生徒会戦開戦宣言から二週間。まだどこの会も動きはなく、膠着状態といったカンジだ。俺、麻木 秋哉の所属する第三生徒会も例外に漏れず、目立った活動はなかった。月曜の憂鬱な授業を終え、第三生徒会のプレートが掲げられたドアをくぐると見慣れた二人が出迎えてくれた。
「あ、麻木、早かったわね」
「シュウ、おつかれー」
「おう会長、由岐お疲れ」
窓際の執務机に座る美少女、彼女の名前は皇 沙夜香。我らが第三生徒会の会長にして俺たちのマスコットキャラクター!低身長でロリ体型なのに大人っぽいロングヘアーにしてちょっと背伸びしたカンジがまたたまんないんだな~!あ、因みに同級生だからね。
「会長」
「何よ?」
「好きです、付き合って下さい」
「はいはいまた今度ね」
おお!これは脈アリか!?・・・・・・いや、この間もこうやってあしらわれた様な気がする。だがしかし俺は諦めない、会長が頷くまでは!!
「というかさシュウ、そのボケいい加減飽きたよ。ほかのネタ考えない?」
「バカ野郎、ボケじゃねえ。マジだマジ、本気と書いてマジと読むほうのマジだ」
「結局どのマジでも意味は同じでしょーが」
本を片手にソファーに座り、俺の一世一代(?)のカミングアウトをボケとカン違いする長い茶色がかったくせっ毛をうなじあたりで縛った少女、彼女は水上 由岐。小学校から一緒で正直なとこうんざりしてたりする。彼女の茶髪は染めたものじゃなくて地毛らしい。それに世間一般で言う美人の分類に入るらしく中学の時から男女問わずモテモテなんだけど本人は興味ないみたい。
「あ、そんなことよりさ麻木、お茶入れてよ。今日はアンタに任せるからさ」
「はーい、了解でーす!由岐、お前は?」
「ん、任せるわ」
手に持ったバッグをソファの脇に置いて、茶葉の並ぶガラス棚をあける。さて、今日はなににしようか?ダージリンは昨日飲んだしアッサムはちょうど切らしちゃってるし・・・・・・かといって緑茶ってカンジじゃないんだよな、今日は。うーん仕方ない、あんまり得意じゃないけど中国茶にしてみますか。手を伸ばし、棚の一番奥から花の絵柄がついた缶を取り出す。蓋を開けると中からジャスミンのいい香りが漂ってくる。茶葉を少し冷ました(といっても九十度くらいだけど)お湯と一緒に急須に入れてだいたい二分ほど待つ、それから湯呑みに注ぐと優しい花の香りが部屋中に広がる。うん、今日はなかなかうまくできたな。
「はい、ジャスミンティーの完成です」
「お、珍しいじゃない中国茶なんて」
「うーん、あと少し深みがほしいな。もうちょっと蒸らしてもよかったんじゃない?」
「うっさい、中国茶はニガテなんだ」
「ふふふ、次は期待してるわよ?」
みんなのぶんを配り終えて自分の湯呑みを持って由岐の向かい側に座る。ジャスミンティーに口を付けてみると由岐の指摘どおりもう少し深みが欲しい。やっぱり中国茶は練習しないとな・・・・・・なんて和んでいると部屋のドアが勢いよく開かれ、一人の女子があわてた様子で入ってくる。
「会長!大変です、今すぐきて下さい!!」
「ちょ、一体なによ?慌ただしい」
「とにかく大変なんですよー!」
「ほらざくろ、落ち着いて落ち着いて。何があったの?」
乱れた柔らかい長い黒髪をなおしながら、第三生徒会唯一の一年女子、高島 ざくろちゃんはとんでもないことを口にした。
「だ、第一生徒会から第二・第三生徒会に対して特例宣言書が発行されました!」
「あの、ざくろちゃん、その内容って・・・・・・?」
特例宣言書とは執行権を持っている生徒会にのみ与えられる権利の一つで特定の生徒組織、つまり部活や俺たち生徒会に対して一方的な命令が下せるという反則じみた権利のことだ。本来は規則違反などを改善させるために作られたんだけどそんな権利を連発されたらたまったモンじゃない。ということで年に3回までっていう回数制限が設けられてるんだ。でもそれをこのタイミングで、しかも生徒会相手に発行してくるなんてつまり・・・・・・。
「第一生徒会からの宣戦布告です!」
はぁ、今年の生徒会戦は初っぱなから荒れそうだ・・・・・・・・・・・・。
星鐘学園中央校舎一階 昇降口前掲示板
ざくろちゃんに連れられ、俺たち二年メンバーは急いで一階の掲示板へ向かった。掲示板のところへ着くとそこには小さな人だかりが出来ており、その一角に第三生徒会二人目の男子メンバー、鏡美 司の姿があった。あっちも俺らが来たことに気づきこっちを向く。
「司く~ん、呼んできたよ」
「ありがとうね。先輩、もう高島から報告受けましたか?」
「ああ、第一生徒会から宣戦布告があったんだってな」
「はい。ある意味宣戦布告ですね。まあともかく見てください」
人混みをかき分け、掲示板の見えるところまで移動する。ついこの間までは何も張られていなかったコルクボードにはA4サイズの紙が張ってあった。
「えーなになに、【特例宣言、第三生徒会は五月七日までに我々第一生徒会に対して必ず生徒会戦を行うこと、これに従わない場合、処罰の対象となる。】だって。サヤ、どうする?」
「ど、どうって、そりゃあ・・・・・・勝負しなくちゃ・・・・」
「やられましたね、先手を打たれた。これじゃあ勝負せざるを得ない、しかもあの第一生徒会相手に」
「でも麻木先輩、それって相手にとっても部の悪い賭ですよね?」
「そうだな、確かに部がいいとはいえない。でもよく考えてみろ、今はもう四月の下旬。で、期限は四月中のみ。つまり緻密な作戦を練っている時間がないんだ、だから両生徒会とも作戦なしで戦うから各自の実力がはっきり出る戦いになる。そうなると能力重視でメンバーを集めた第一生徒会の方が有利といえるだろ?そんな奴ら相手に作戦なしで戦うのは無謀としかいえないな、まあとはいえ賭であることに代わりない。でも相手も勝算があるからこんなハイリスクハイリターンな作戦を打ち出してきたんだろうな」
くっそ、まさか奇襲なんて反則じみたことしやがって。流石は藤宮 玲士郎、すごい決断力だ。伊達に第一生徒会の会長やってるわけじゃいみたいだな。
「え、ええ~っと、あと二週間くらいしか時間ないよね?・・・・・・麻木、どうしよっか?」
「とりあえず生徒会室に戻りましょう。はやく作戦考えないとほんとにノープランで戦うことになっちゃいますよ」
「う、それだけは避けたいわね。はあ、何でこんなことになるんだか・・・・・・」
愚痴をいいたくなるのもわかりますけど、これが現実です。愚痴っても仕方ありません。・・・・・・なんて思っているのだが正直俺だって愚痴のひとつやふたつ言いたいところだ。この宣言書は完全に予想外、寝耳に水とはまさにこういうことなんだろう。でもあっちだってハードスケジュールだ、なんていったって二週間に二回も生徒会戦をやるんだ。この条件を逆手に取れればいいんだけどな。
星鐘学園中央校舎 三階第一生徒会室
秋哉たちが悩んでいたそのころ、第一生徒会の副会長、青山 英太もまた悩んでいた。会長、藤宮 玲士郎の発案した奇襲作戦は見事に成功した。しかし裏を返せばこちらもある程度のリスクを負ったことにもなる。本来であれば競技内容を決めて、二、三週間たってから競技を行うというのが今回は異例中の異例、たった二週間の間に二回も戦うことになる。しかもまだ競技内容は決まっていない、これじゃあ作戦の立てようがない。相手も同じ条件だからといってもやはり不安だ。仕事を終え、部屋に戻ると、執務机に座りコーヒーをすする玲士郎だけが彼を迎えてくれた。
「会長、特例宣言書張り終えました」
「む、ありがとう。本来であればほかの役員に頼むのだが、今日は人手が足りなくてね。君も飲むかい?」
結構です、とやんわりと断り、手に持っていたファイルと余った宣言書のコピーを棚に置く。それから長机の上に積まれていた書類の数々(主に来月の行事関係)と向き合う。それからしばしの間、沈黙が続いたが英太の一言がその沈黙を破った。
「あの会長、今回の作戦、大丈夫でしょうか?確かに電撃的な奇襲でしたけどこちらもリスクを負ったことになります」
「ああ、その点については問題ない。予想される競技の作戦はある程度用意してある」
「・・・・・・いつの間に」
「ははは、これくらいしておかなければこんな無茶苦茶な作戦、リスクが大きすぎるよ」
苦笑しながら副会長の英太も知らないことをサラっという玲士郎。まさか作戦を立ててあったなんて、どうして自分には教えてくれなかったのかを英太が聞いてみると。
「君を信用していないわけではないけど、極力情報が漏れないようにしたかったんだ。許してくれ」
「いえ、構いません。それより会長」
「ん?なんだい?」
「いい加減仕事しませんか?」
「・・・・・・あー、うんそうだね」
執務机の上には書類の山が三つほど鎮座していた。これでも粗方英太が片づけてくれたのだがやはり量が量なのでまだ追いついていなかった。仕方なく玲士郎は書類の山に手を着ける。それを見届け、心のどこかにイヤな予感を抱えながら英太も作業へと戻る。そして翌日、英太の予感は的中する事になのだった・・・・・・・・・・・・。
ここまで読んでいただきありがとうございました。さてここで言い訳をひとつふたつ。
最近いいアイディアが浮かばず気分転換のつもりで書いてみました。『私と世界が始まった日』についてはもうしばらくお待ちください(汗)そんな訳でこっちは基本後回しになってしまいますがどうか見捨てないでください。
それではまた次回。




