夢の薬のフォークロア
掲載日:2026/05/23
ある偶然によって、異世界より地球に少数の回復薬がもたらされた。
その回復薬は決して万能薬などではなかったが、地球の医学を根底から覆すには十分であった。
世界中の学者たちがいくら調べてもその成分ははっきりとはせず、わかったのは地球上では生成も再現も不可能だということだけだった。
つまり数に限りがある、使えばなくなるということでもあり、当然の帰結として世界の為政者や権力者たちの間で奪い合いが始まった。
時には一本の回復薬をめぐって、複数の国を巻き込んだ大戦すら起こった。
いつしか回復薬は、それを手に入れることができた幸運な勝者たちによって秘匿され、門外不出となった。
そうなると民衆の間で口の端に上ることも減り、徐々に忘れられていった。
それでもいくつかの不確かな伝聞が、いつしか神話となって語り継がれ、その一部が今も記録に残されている。
したがって、世に言われる霊薬――すなわちエリクシール、アムリタ、ネクタル、ハオマ、ソーマ、仙丹、変若水などと呼ばれるものは、すべてこの回復薬のことを指しているのだ。




