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合い(愛)言葉電撃作戦

作者: レブラン
掲載日:2025/12/01

『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』の投稿作品です

 朝、スズメの鳴き声と共に俺は目が覚めた。

 寝室のドアを開け、リビングへと向かう。

 キッチンには朝食を作っている妻の姿が見えた。


「おはよう、あなた」

「ああ、おはよう美沙みさ


 美沙とは結婚して45年ほどが経つ。

 子供は成長し家には居ない。今この家には俺と妻の二人暮らしだ。

 定年を過ぎやることはなく、顔を洗い歯を磨き終えるとテーブルへと席につく。

 テーブルの上には新聞と朝食が並べられ、俺はテレビを付け新聞を手に取り読む。

 これが毎朝のルーティンワークとなり当たり前となっている。


「オレオレ詐欺被害件数増加か」


 新聞の見出しにそう書いてあった。

 被害件数は過去最高のうなぎ登りとなっていた。


「テレビのニュースでもしていたのだけど最近多いわね。あなた」

「ああ、いつうちにもそう言ったのがくるのかもわからんからな」


 新聞を置くと、腕を組んだ。


「どうしたんです?」

「いや、実際そうなった時のために俺たちで合い言葉を決めておかないか?」

「合い言葉ですか?」

「ああ、もし俺や美沙が一人のときにそう言った電話が来た時のためのものだ」

「良いわね。なら何にしましょうか」


 反応は良い。俺は密かに計画を練っていた。

 結婚してからこれまで美沙には全然感謝の言葉を言っていなかったことに。

 友人と雑談していた時に言われて気づかされた。

 ただ、気恥ずかしくて感謝の言葉を述べたのは定年終わりの日の一言のみ。

 今回のような事を考えて合い言葉に乗じて、感謝を伝えられるような言葉を探した。

 だが、“愛してる”や“好きだ”のような直接的な言葉はなんだか恥ずかしくて言えない……。


「そうだな……」


 思い浮かぶのは、どうにも気恥ずかしい言葉ばかりだ。

 45年も連れ添って、今さら何を照れているんだと自分でも思う。

 それでも、いざとなると素直になれない。

 ふと、朝食の料理に目が留まる。


「――手料理が美味い」


 振り絞って考えた言葉がこれだ。

 あれだけ直接的な言葉は避けたかったが、ついつい口走った言葉。


『本日11月22日はいい夫婦の日』


 俺が言い終わったのを見計らったかのように、テレビのニュースが流れ始めた。

「あらあら」そう美沙は頬に手を置き微笑む。「め、飯を食べるぞ!」と、俺は並べられた朝食に箸を取って食べ始めた。


見て下さりありがとうございます。

テーマに合い言葉があったので長年連れ添った夫婦のやり取り的なものを考え執筆させていただきました。

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