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たぶん、私は狙われている

作者: いのりん

過日読んだ広告コピーの本(365日広告のコピー)と、尊敬する作家様がXにあげておられた合唱部時代のときめき?エピソードにインスパイアされています。

広告コピーの引用は『』で囲っています。

 大学デビューに成功して二年目の初夏。


 二十歳になった私は今、同じゼミの大嶋くんと二人きり。シャレオツなパンケーキを食べにいくために、並んで電車を待っている。


 ちなみに、大嶋くんの方から誘ってきた。

 彼は色黒で金髪で体格がよく、太い首にはネックレスがジャラっとしていて、なんだか女慣れした風の外見だ。


 たぶん、私は今、二つの意味で狙われいる。


 一つは、大嶋くんから恋愛的な意味で。

 そしてもう一つは、もっと人間の本能に根差した、浅ましい欲求的な意味でだ。


 後者を明言するのは乙女として恥じらうべきところかもしれないが、誰にも聞かれぬ独白なのでハッキリと言ってしまおう。


 そう、ヒトの持つ三代欲求が一つ


 食欲的な意味でだ。


(やっべ、蕎麦食いたくなってきた……)


 なにせ今の状況、過日、どこかで読んだ広告コピーのまんまなのである。


 『駅のホームにある、あの立ち食い蕎麦屋の換気扇、たぶん、絶対、私の事を狙っている。』


(うわぁいい匂い……なんか、パンケーキよりも蕎麦のお口になっちゃったな……)


 おっと、いけない。

 慌ててその考えを打ち消す。


 流石に言えないでしょ。

 つーかマズイでしょ。


 3分くらい前までは『信州信濃の新そばよりも、わたしゃ貴方の側がいい』的な感じを出してた女が、急に恋愛(そんなこと)より今は蕎麦食いてえんだモードに変わったとか、バレたら大嶋くんも引いちゃうでしょ。


 ああ、でもいい香り。

 食欲をそそる、醤油と出汁の匂い……


「どうかした、上野さん」

「はっ!……あのね、なんだかいい匂いするなって」

「ああ、蕎麦の匂いだね。確かに」


 笑う大嶋くん。

 彼といい感じになりたいから、ここは我慢だ。


 高校時代の過ちを繰り返す訳にはいかない。




 過日、女子ソフトボール部で真っ黒に日焼けしてガハハしていた私。

 クラスマッチの男女混交ソフトボールに選手として出場する事になったが、初回にエラーをして先制点を与えてしまう。


 ベンチに戻って凹んでいると、スポーツ万能のサッカー部男子である木根くんが、先生にバレないように私にこっそりカ◯リーメイトを渡して一言。


「心配すんな、俺が逆転してやるから」


 白い歯を見せながら言われたその台詞。

 私の顔は赤く染まった。


 恥辱によって!


(な、情けをかけられた、だと……ソフトボール部の四番打者で、他校から『和製ブストス』と恐れられている、この私が?)


 私は奮起した。

 悔しさをバネに、ミスを取り返すべく、その後3本のホームランをかっ飛ばしMVPを獲得。チームを優勝に導いた。


 その打ち上げで、新しく買ったカロリーメイトを箱ごと木根くんに渡して一言。


「借りは返したぜ!」




 ……うん、冷静に振り返ってみると、なんか後半、もっとこう、何か違う展開にできたよなって……


 だから今日は、きゃるんとした女の子に徹する。

 いくぜ青春のストライク!

 それいけ、私。


「なあ、上野さん。列車くるまで時間あるし、俺ちょっと蕎麦食ってきてもいい?なんか小腹空いちゃって」

「え、ずるい。わたしも行きたい!」

「いいの?パンケーキ入る?」

「余裕余裕!別腹だよ。」


 ポカンとした顔の大嶋くん。

 し、しまったァー!!!


 い、いや大丈夫だ。まだ慌てるような事態じゃない。彼に快く付き合う器のヒロイン(かけ言葉)ムーブの範疇のはずだ。たぶん。


 ピンチはチャンスという名台詞もある。


「立ち食い蕎麦?わー、そんなワイルドなところ、私初めて入るんだけどぉ」的なノリでいこう。


 迷わず行けよ、行けばわかるさ。

 栄冠は私に輝く!


「へいらっしゃい」

「そば、ネギ天カス多め、コロッケつけて下さい」

「あいよ、手慣れてるね嬢ちゃん」


 ポカンとした顔の大嶋くん。

 し、しまったァー!!!


 ***


「ーーと言うわけで、本当は私、あんまり女の子らしくないんだよ。恋愛経験も皆無だし……期待外れだったらごめんね」


 ガタンゴトンと揺れる電車の中で私は白状した。たぶん隠し通せないので、傷が浅いうちにごめんなさいしとこうという判断である。


「いや、比較されずにすんで逆に助かるよ。俺、男子校の野球部出身でさ、こうやって女子と二人で出かけるのも、実は初めてなんだよね。」

「えっ、そうなの!?」


 全然そんな風に見えなかったよ。でも、私も大学デビュー以来猫かぶってたし、お互い様なのかな。


「ねえ、上野さん……良かったら今度は一緒に野球観戦とか行ってみない。俺、シーガルズのファンでさ。」

「え!私もだよ。由良木投手のユニフォーム持ってるよ!」

「よかった!あとさ、俺たち二十歳じゃん。やってみたいことがあるんだよね」

「もしかして、ビール片手に野球観戦ってやつ?わかる、私もやってみたい!」


 彼の提案にテンションの上がる私。そういえば今、ナチュラルに「次もある」事になったな。


 電車からアナウンスが流れる。

 もうすぐ目的地に到着するというお知らせ。


 聞いている最中、ふと予感がした。


 この恋は、きっとうまくいく。

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その野球小僧、前世知識で鍛錬中につき
― 新着の感想 ―
前半の2択目を、「大島君が」食欲的な意味で語り手さんを狙っている、と読み違え大混乱した私。 食◯的な黒いのりんさん回かと思ったら、狙っていたのは蕎麦屋で対象は彼女の胃袋、と言うお話でした(笑) 申し訳…
> ビール片手に野球観戦ってやつ? タバコ片手に愚民め‥的に煙を吐き出しながら下界を睥睨はしますとも。 想像の中ではわたくしは何にでもなれますもの、ホホホ。
チャラい学生に擬態しようとも、本能には抗えません。 やっぱり、人間素直が一番ですよね。 昔ながらの立ち食い蕎麦屋の店主が、心の中で「俺も若ぇ自分は、暗くなるまで白球を追いかけていたもんだ」と呟きつつ…
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