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電子守紋

 (たまき)は凍った鳥を持つと、

 雪輪兎(ゆきわうさぎ)を抱きかかえた(ゆう)と急いで環の家に向かった。

 急いで家の中に入ると、環、悠、雪輪兎はリビングに座った。

電子守紋(でんししゅもん)って、どういうこと?」

 悠が雪輪兎に聞いた。

「これは多分、“千鳥(ちどり)”の電子守紋だと思うわ。(いにしえ)の歴史と繋がったネオードノヴァは学習し、私たち“守紋”の存在に気づいたはず。いつか“守紋”をコピーした“電子守紋”を作り出すと思っていたの。こんなに早いとは思わなかったけど」

「じゃぁ、これはデジタルで作られた守紋ってこと?」

 環は雪輪兎の方を見た。

「そうね。ただ、いつか電子守紋を作るんじゃないかとは思っていたど、コードノヴァの意図や目的までは分からないわ」

 雪輪兎の言葉を聞きながら、環はそっと千鳥の電子守紋に触れてみた。

「ふぅ……ん」

 環は何かを探すかのように触れていた。

「ちょっと探ってみるよ」

 環はバーチャルキーボードを表示すると

 千鳥の電子守紋の方に向いて、素早くキーを打ち始めた。

 バーチャルキーボードの上にはバーチャルモニターが表示され、

 コードが流れるように表示されていった。

 環は画面に表示されていくコードを見ながら言った。

「これは――」

 手を止め、悠の方を見た。

「守紋を見つけて攻撃するプログラムがされている…」

「なんで、守紋を攻撃するんだ?」

 悠は眉をしかめながら言った。

「これ自体では、目的までは分からないな」

 環が答えた。

 バタン――。

 玄関のドアが閉まる音が聞こえてきた。

「環、誰か来てるの?」

 玄関の靴を見ながら、環の母親が言った。

「お母さん、悠が来てるんだ」

 リビングに来る足音に向かって、環が答えた。

「悠くん、こんにちは」

 環の母親がリビングの扉を開けながら言った。

「おじゃましています」

「あぁ、その子があたなの守紋の兎さんね」

 環の母親は、微笑みかけながら雪輪兎に近づいて撫でた。

 びっくりした顔をした悠に向かって環が言った。

「お母さんには全部話しているんだ。夏休みのことも、守紋のことも」

「なんだ、じゃぁ私も声を出してもいいのね」

 雪輪兎が弾んだ声で言った。

「そもそも、僕の守紋の蝶の一つは、お母さんから引き継いだものだしね」

 環が言った。

 悠は、あぁ…と思い出したかのように環の方をみた。

 悠も高祖父から守紋を一つ受け継いでいたのだ。

「あら、これはどうしたの?」

 テーブルの上の凍った鳥と

 バーチャルキーボードの状況を見て環の母親が聞いた。

 環は、今日のこれまでのことを母親に説明した。

「そう……」

 環の母親は、少し考え込んで続けて言った。

「“東湖(とうこ)”に行ってみる?東湖でなら、何か分かるかもしれないわ」

「トウコ?」

 環と悠が同時に聞いた。

 ガタッ!バサッバサッ!

 皆が音のする方を見た。

 ソファの上で、

 真っ白いふわふわの毛に

 真っ赤な血が流れ出している雪輪兎が横たわっていた。

(油断した!)

 環はさっきアクセスした時に、

 千鳥の電子守紋をシャットダウンしなかったことを後悔した。

 悠は、素早く竹虎(たけとら)の守紋符を出した。

 それはくるりと回転し、

 ポンッと一瞬で守紋符から虎の姿になった守紋は、

 千鳥の電子守紋を竹の葉でぐるぐるに巻いて動けなくした。

 同時に、竹の葉で雪輪兎の傷をふさいだ。

 雪輪兎はぐったりしていた。

「東湖に行きなさい。そこには、湯場(ゆば)があるからそこで傷を癒せるわ。それから、私の弟に会うといいわ。環、あなたの伯父さんよ」

 環は早口で話す母親に両腕を捕まれていた。

「大丈夫よ。東湖はお母さんが育った場所なの。あなたに渡した牡丹蝶(ぼたんちょう)を伯父さんに見せなさい。それで分かってくれるわ」

 環は母親の目をしっかりと見ながら答えた。

「分かったよ」

 環は手早く竹に包まれた千鳥の電子守紋を上着のポケットに入れた。

「悠くん、あなた確か雲龍(うんりゅう)の守紋を持っているのよね。雲龍が東湖まで連れて行ってくれるわ」

 環の母親に聞きたいことはたくさんあったが、

 今は早く雪輪兎を助けたいという気持ちでいっぱいだった。

 雪輪兎を抱えた悠は、環の母親の顔を見て頷き、雲龍の守紋符を出した。

 環の母親は素早くベランダの窓を開けた。

 雲龍の守紋符はくるりと回転すると

 ポンッと一瞬で、ベランダで雲龍の姿になった。

「さぁ、早く行って!」

 環の母親の声に背中を後押しされるように

 環と悠は、雲龍の背中に乗った。

「東湖まで」

 環の母親が言うと、

 雲龍は後ろを振り返り懐かしそうに環の母親の目を見つめた。

 そして、すぐに前を向き、ブワァ――ッと一瞬で空に飛んで行った。

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