彼氏は背後霊です
私には付き合って二年になる背後霊がいます。彼はとても頼りになる人で、「なにがあっても俺が守るから」といつも言ってくれていました。
ところがある日、そんな彼にふと疑問を抱いてしまったんです。
「この人、なんでいつも後ろにいるんだろう?」
「守るって、普通前じゃない?」
「ていうか……私が盾にされてない?」
疑ってはいけないと何度も自分に言い聞かせましたが、一度芽生えた疑念はなかなか消えてくれません。
そんなモヤモヤを抱えたまま出かけた休日のデートで、事件は起きました。
私たちは駅前をぶらぶら歩いていて、「そろそろお昼にしようか」なんて話していました。周りにもカップルが何組か歩いていて、その様子を何気なく眺めていた私は、あることに気がつきました。
どのカップルも、彼氏が車道側を歩いているんです。
気になって振り返ると、彼はいつも通り私の背後にいました。
……やっぱり、守る気なんてないんじゃ?
私は目で訴えましたが、彼は「ん?」と首を傾げるだけでした。どうにかして気づかせようと「車道だね」と意味不明なことを言ってみましたが、彼は「車道だね」とニコニコするだけです。
こいつ、絶対に私を守る気なんてない。私の中で疑念が確信に変わっていきます。でもそんなはずない、彼はそんな人じゃないと信じたい気持ちもあって、感情がごちゃ混ぜになった私は、気がつくと車道に飛び出していました。
めちゃくちゃ轢かれました。
幸い相手はスクーターだったので命に別状はありませんでした。ただ頭を強めに打ったようで、丸一日意識を失っていたらしいです。
病院のベッドで目を覚ましたとき、心配そうに私を見下ろす彼と目が合いました。安堵と喜びが入り混じった表情で何か言いかけた彼を、私は手で制して尋ねました。
「なんで守ってくれなかったの?」
空気が凍りついた気がしました。
彼は気まずそうに目をそらし、しばらく黙ったあと、こう言いました。
「だって、急だったから」
「君こそ、なんで急に飛び出したりしたの?」
私は失望しました。危険なんてだいたい急にくるものですし、そもそも彼が車道側を歩いてくれていれば防げた事故でした。それを棚に上げて私を責めるその態度に、彼への気持ちが一気に冷めていきました。
もう彼とは別れようと思っています。
誰かいいお寺を知りませんか?




