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泥に塗れたそれは  作者: 天空 浮世
龍の住む池

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12/19

12

 皐月(さつき)さんを家に送り届けた翌朝、私はもう一度池に来ていた。雨はまだ止んでいない。彼女は来月には引っ越すそうだ。姉のいない今ここに住む道理もないのだろう。


 彼女に、今後どうするかと聞かれた。

 (うみ)の居なくなったこの世に今更未練などはない。そもそも人を二人も殺して普通に過ごすなど、あまりにも都合が良過ぎる。


 ススキの中をかき分けて進む。池に近づいて中を覗いても波紋が広がるのみの暗闇で、何も見えない。

 私の妻を殺した女はもう殺した。復讐は終わったというのに心は一切晴れていない。

 

 彼女の言った通り、私がこの池に来なければ海が死ぬことはなかった。そもそも河童について知らなければ。

 確か、封筒だ。茶色の封筒。そこに、河童の話があって、私はそれが届いた翌日に川に向かったんだ。あれさえなければ、河童の話さえ聞かなければ。そういえばその横にあの女もいたな。話のタイミングで、仕事の時間だと……運が悪いというにはあまりにも出来すぎている気がするが。


「いまさら気にしたところで。どうせもう終わったことか」

 後のことは、あの使えなさそうな警察にでも任せるとしよう。

 頭の疑問に蓋をして、水面に軽くパシャリと触れて立ちあがると――。


 ドンッ。


 ドポンと池に男が落ちる。池の前に立つ一人の女の影。

「ありがとう。あなたのおかげでこれから自由に暮らせるわ」

 いまだ水面をもがくそれを横目に、女は池に指輪を捨てその場を後にした。

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