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夜明け前が最も暗い  作者: 富永 真一
3/6

シーザー?

「それだけですか?」

万吉はやや不満そうに言った。万吉もその二年前の夏休みそのサークルの集まりに参加している。熱海への二泊三日の宿泊合宿で、夜遅くまで授業論や教育論で盛り上がる。


万吉は当時の悟子の真行を紹介して「この人は、並の器ではない」と言った言葉を挙げ、将来の市の教育を背負っていく人だと再び敬道にその目で確かめたことを言って欲しいと目で訴えた。

「あの人の授業は一度見たことがありますよ。体育でした。リレーのね。子ども達が自分たちで考えて自分たちで動いていました。若いのにあれだけできるのは一流の指導力でしょう。ただ、それ以上は今のところ申し上げられません」


「それももっともだぁ」

と万吉はいつものくだけたもの言いにもどって、薄くなった白髪頭を撫でて笑った。そして、すぐに佇まいを正して、

「しかし、あんた、失礼。教頭にもあの人の力が分かるときが来ますよ」


「今おいくつなんでしょう? わたしより一回り以上は若く見えましたが」


混迷の続く川内市の教育行政。いじめ問題、不登校児童の増加。保護者と学校間の不和。教職員の離職。


数々の問題で難航する市内の教育を改善の方向に舵を切れる抜擢人事の開始に子どもの様に心躍らせる万吉にも理解を寄せないわけではなかったが、敬道はどこか冷めている。これだけの状況を耐えて忍ぶことはできたとしても、人事の一つや二つで改善しようとする考えに甘さを見ずにはいられなかったのである。


「さぁて、どうでしょう。三十八、九ってとこじゃないかな・・・・・・」


「校長には、若いですね。しかも教頭すら経験していない」


「大事を為すに、歳なんてあまり関係ないですよ。英明な方は二十歳でも大きなことをする。教頭、かのジュリアスシーザーはいくつで王位についたかご存知か。二十歳そこそこでヨーロッパのみならずアフリカや中東まで領土を広げたではありませんか。その間、たった数年ですぞ」

万吉は真顔で腕組みをしたまま、そう言った。


                  つづく



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