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合成・人造石

挿絵(By みてみん)

大昔から人類の大半が魅了されてきた宝石と言う物を

人の手で合成するという事に成功したのは

1902年フランスのベルヌイが成功させた

合成ルビーだと言われているが

製造に着手し始めたのは1800年代後半と言われ

長い目で見ても200年もたっていない技術で

まさに人類の汗と涙の結晶とも言えるものではあるが

世間一般的には天然に劣る偽物という区分けで

長い間工業用に使用されており

宝飾品としては偽物として見られていた。

2020年以降になってようやく天然が高騰しすぎたために

安価な代替品として認められ始めた感があり

合成・人造石にも着目されるようになってきた。


なお念のため付け加えておくと

合成石と人造(人工)石は分けられており

どちらも人の手で合成されたというのは変わらないのだが

合成石は天然にも産出するものを人の手で合成した物で

人造・人工石というのは天然には産出しない組成の物。

ちなみに合成も人造も人の手で結晶合成させたもの

という定義の為、

結晶していないもの、

例えばガラスやプラスチック製は非晶質の為

合成・人造どちらにも入らず模造石という別枠になる。


このような合成・人造石というのは基本大量生産される物の為

なんでレアストーンでとりあげるのか?と疑問でしょうが

ほんの少量作成されたただけで終了してしまい

以降作られていない物も多く、

なおかつすでにレシピが伝わっておらず

再現が不可能なものもあり

レアな合成・人造石を集めるコレクターも

案外多く存在しています。

そんなレアな合成・人造石を少量紹介していこうと思います。


YAG派生品

人造石の代表とも言えるYAGイットリウム・アルミニウム・ガーネット

こちらの成分を変えたものと言うのは案外多く存在しており

1969年に登場してから

CZキュービックジルコニアが1976年に出てくるまでは

ダイヤモンドの代替品として多く普及していたもので

宝石代用品としての用途以外にも

かなりの工業用途、

特にレーザー発振用途が主な用途でこれは現在も続いている。

そんなYAGの派生には

YIG、YAlG、YGaAG、Ce:YIG、Nd:YAG、Er:YAG、Cr:YAG

など非常に多岐にわたっており

その多くは工業用途であるため一般に出回ることが少なく

宝石代替品としてルースになる事がまずない為

見つけることすら困難なレア人造石


C-OX(Cubic-Oxide)

1976年にCZキュービックジルコニアが成功したわけだが

そのCZではどうやっても作れなかった

エメラルドの緑とサファイアの青を目指して作られた

1982年に試験的な作成品の人造石。

通常のCZのZrO2に

添加剤としてY2OまたはCaOを加えるのは同じながら

その比率を大きく変えて作成されたのだが

比率を変えすぎて添加剤と言う枠を超えて

単一結晶にならず、固溶体の状態になったために

酸化物の混合体と言う意味でCubic-Oxide、

略称C-OXと呼ばれる物が出来た。

ただ本当に試験的な作成だけで

目指した色からは濃くなりすぎただけでなく

1結晶内部で分離してるような状態となったため

ほんの少量しか作成されておらず

昨今入手が非常に困難。

またCZ自体は機械の向上などもあり

昨今様々な色が新たに作成されているが

C-OXの色味の物はない為

人造・合成石コレクターが探し求める1石となっている。


合成ブラックオパール(ギルソンオパール)

昨今では京セラの合成ブラックオパールが成功し

ある程度近い物は作成が出来てはいるが

1950年代にフランスのギルソン社で作成された

合成ブラックオパールは游色の具合も抜群によく

天然のライトニングリッジ産にも劣らない見事な出来で

非常に人気はあったのだが

開発者のピエール・ギルソンがその作成レシピを秘匿し

だれにも伝えなかった為、

凡そ50年間誰にも真似ができない合成石となっていました

京セラ製の物は多少のレジンを使っているらしいという話もあり

近い見た目になったとはいえ今もってギルソン社製の物は

人気が根強くギルソンオパールという別名が付けられ

合成石の中では飛びぬけて高い物となっています。


合成ブロメライト

組成式 BeOという非常に単純なベリリウム酸化物で

天然にも産出はするのですが数が少なくレアストーン。

それを1970年にアメリカで合成された物。

こちらはブロメライトの特性で

屈折率が低くダイヤモンドの代用品としての開発とするには

動機が弱いと思われ工業用途が主だと思われるが

調べてもあまり情報が出てこず

合成ブロメライトのルース自体ほぼ見かけない為

少量生産で終わったのか?ということで

今回紹介させていただきました


合成モアッサナイト

昨今では新たに各色作成されており

あちこちで見かける為に

レア?となるとは思いますが

1996年以前に開発された当初は

SiCという単純な組成でありながら

硬度9.25と高く

なにより屈折率や分散の値がダイヤモンドに近く

一番ダイヤモンドに近い合成石として大注目されたのですが

最初期のモアッサナイトはインクルージョンが入り込みやすく

完全無色にすることが困難で

最初期の物は透明に濃い暗い緑が混ざりこんだ

お世辞にも綺麗と言えない物しかなく

ながらく市場に登場していなかった。

ようやく1996年にアメリカの会社で宝石質結晶の作成に成功し

大々的に販売するようになった。

1996年以前と言ったのは元々SiCという合成には

炭化珪素質砥粒としてカーボランダムという通称で

研磨剤用途として長く作られていたもので

1説には1940年ごろからカーボランダムは

宝石用とになるのでは?と噂されていたそう。

その後2015年8月にアメリカで、

2016年にはほぼすべての国で特許が切れたために

各色様々な色も開発され

硬度も高い為にCZより頑丈なダイヤ代用品として

合成が行われており沢山流通している。

ただその弊害で最初期の物は全く見なくなったため

最初期品は今や幻の合成石とも言えるレベルで見かけない。

ちなみに天然モアッサナイトは

アメリカのキャニオン・ディアブロ隕石内の

天然SiCに命名された名前であるため

大きな結晶でもきれいな結晶でもないが

天然に存在するために合成石となっている。


イイモリストーン(IL)

飯盛研究所で製造・供給されていた人造石で

最初期はロウカン翡翠を目指して作られた

メタヒスイと言う物から始まり

ビクトリアストーンと言われる

今で言うとラリマーにそっくりな

独特の模様のキレイな人造石で

日本国内では人造石に対して偽物という風潮が強く

受け入れられなかったが

1970年にツーソンショーに持ち込まれ人気になり

海外では広く愛され、

ほとんどが海外に流れてしまったため

あまり日本に残っておらず入手が困難になった人造石。

途中話に出したようにラリマーにそっくりな為

ビクトリアストーンはラリマーを模したと言われることがあるが

ビクトリアストーンの方が開発が先で

1974年にラリマーが発見されているためありえない。

この製法は研究所のスタッフに手書きのノートが受け継がれているが

飯盛博士本人の遺言に従い製法を公表しておらず

今なお不明のまま。


スターバーストストーン

ビクトリアストーンを解析・復刻を独自に行い

オーストラリアでビクトリアストーンを目指して作られた

スターバーストストーンという模造石も登場しているが

こちらも原料の入手が高騰した影響で

生産がストップしているらしく

入手が困難になりつつあるらしい。

また見た目はどちらも非常に似通っているため

スターバーストストーン=ビクトリアストーンと

混同してきている実情もある。


合成ベリル

ベリルの合成は非常に多く行われており

エメラルドやアクアマリン、

最近では合成レッドベリルなど数多くつくられており

全体で言うとレアなものではないのだが

その中でアメリカのチャザム社で開発された

エメラルドのクラスター作成技術は継承されておらず

チャザムエメラルドと独自の名前が付けられるほど

稀少で人気な合成石で入手が困難になりつつあります。

もう一点

2007年のバンコクショーで発表された

ロシアのTairus Created Gems社が作成した

パライバトルマリン人気にあやかって作った

パライバ色の合成ベリルがある。

こちらは熱水合成法で作られたもので

熱水法はその特性上時間がかかるのもあり

試験的に作成された物だったようで

レシピも公開されておらず

以降他の研究所でも作成されておらず

パライバベリルという通称で非常に人気があり

多くはカットルースにされた為に

ほとんど残っていない為非常に入手が困難になっている。


チタニア(合成ルチル)

1948年に発表されたTiO2というチタン酸化物で

各国で製造があった

最初からダイヤモンドの代替品としての開発で

青色が開発されたりとカラーバリエーションもあるが

逆にどうしてもチタン本来の黄色を取り去る事が出来ず

無色にしようとしても少し黄色みを帯びている事と、

硬度的には6.5とダイヤに及ぶべくもなく

少し後1953年にチタン酸ストロンチウムが

登場すると一気に廃れてしまい

以降再開発もされておらず人造石好きが探す石となる。

ただ5年間ほど各国で作られていたため

それなりの量はまだあるので

今のうちに確保をお勧めする1石。


合成フローライト

フローライトの合成も行われているのだが

こちらは主にキャノンのカメラのとあるレンズ用に作成されており

なおかつ現在はそのレンズ自体も1機種になってしまっており

作成数が非常に数が少なく

原則市場に流通していない為

そもそも合成フローライトの存在自体知らない人も多いほどに

稀少な合成石。

昨今はスマホのカメラの機能向上もあり

カメラ需要が減った結果ほんの少量の流通があるため

生産中止になる前に抑えた方がいい合成石。


各種人工火山ガラス

人造・合成と言う枠からははずれますが

ごく一部で作成されている

火山岩を砕いて入れるとその地方独特の色が出る為

各国で制作があったのだが継承者がいなくなって

製造がストップしている物が出始めている。

有名な物で言うとアメリカのセントヘレナガラス、

イタリアのリパリーガラス、

日本でも新島ガラス(現在も作成はあります)

三宅島ガラスなど

それぞれでこんなに色が違うのかと思うほど

多用な物になっています。

リパリーや新島のは抗火石を砕いて入れた物、

セントヘレナは火山灰を入れた物と入れる物が違うそうですが

過去GIAにセントヘレナガラスが持ち込まれ検査された結果は

微量の火山岩の粉末を含むただのガラスという結果であったらしい。

ただ火山のある地域では同様に出来る可能性があるために

地域名を独自につけているが全然縁もゆかりもない

ただの詐欺という場合もあるため注意が必要で

特にお土産品などは気をつけねばならない。


副産物品その他

有名どころで言うと

フォード社の車塗装用塗料が積み重なって出来た

現在は塗料の変化によって二度と同じのは作れないと言われる

エナメル質のフォーダイト、

ドイツで発見された15世紀の銅の精錬副産物であろうという

数百年前の精錬方法だからこそできたと言われる

ふわっと表面が青く光るシーバーアゲート

これらもレア品と言われてはいるものとなる


合成ペリクレース

MgOの組成式で表され

天然ペリクレースは原石段階で1ct以下という小さな物しかなく

カットルースは極めて稀なもので

高融点、溶融金属に浸食されにくい性質に着目され

1960年頃から作られた合成石で

カットルースもある程度作られているが

残念なことに空気中の水分に反応し崩壊するらしく

コーティング処理が必須な物となり

その性質上姿を消してしまった合成石。


人造タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム

主に電子工学用途に使われる人造石で

日本国内でも各社が製造しているが

工業用途が多い為にルースになる事は少なく

あまり流通がない。


その他工業用途メイン

上記○○酸リチウムもそうではあるが

この他にも沢山の工業用途がメインで

結晶が市場に出回らない物も多く存在しており

例えばタングステン酸を用いた物や

酸化ビスマスを添加したものなど非常に数多く存在しており

極めて稀にカットルースになって市場に出てくることがある

私自身ビスマスナトリウムタングステン酸というのを入手したのだが

この1個しか見たことがなく非常にレア

これらの多くがロシアで合成されたもので

合成・人工宝石研究をけん引してきたと言っても過言ではなく

この背景にはソビエト連邦時代までさかのぼり

デマントイドガーネットやダイヤモンドなど

数多くの宝石を産するだけに需要が分かっているのと

国力の誇示にもなるために

国が資金を惜しみなく出していたのが最大の強み。

これはソ連解体後のロシアになってからも継続し

宝飾用、工業用のみならず軍需用にも目を向けていたために

発展してきていました。

ただ昨今はご存じの通りの情勢の為に

ロシア製合成・人工石どころか天然宝石さえ入ってこない状況の為

現在は大量生産に力を入れている中国製や

質では負けていない日本製、

ロシアに対抗するよう各地で研究を行うアメリカ製などが

頑張っている

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