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イエロースピネル

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

ルース0.13ct

原石0.56ct

タンザニア産


Spinel

スピネル

和名:尖晶石

硬度:7.5~8.0

分類/グループ:酸化鉱物/スピネルスーパーグループ

 宝石になるものは基本オキシスピネルグループのスピネルサブグループ

晶系/産状:等軸晶系/八面体、12面体、塊状など

化学組成:MgAl2O4

劈開:不明瞭

比重:3.54~3.70

屈折率:1.710~1.735

副屈折率:なし

分散度:0.020

蛍光(通常認識):あり(赤色系統)

長波蛍光:赤

短波蛍光:赤

条痕:灰白色

主な色:黄色以外各色(黄色はインクルージョン由来のみ)

多色性:なし

発見年:不明

登録年:1779年

発見地:不明


大昔から宝石として利用されてきた石ではあるものの

昔は赤色は「ルビー」とされていた弊害で

ルビーと誤認されて利用され来ており

有名な「黒太子のルビー」(Black Prince's Ruby)は

入手当時(14世紀)にコランダム(ルビー)と思われ

大英帝国の王冠にこちらも有名なカリナンⅡと共に使用され

長い歴史のある英国の王冠の中では

最古の王冠であるが

18世紀になってからようやくルビーではなくスピネルと判明した。


混同もあったとはいえ長く宝石として使用されてきた石であり

各色様々あって石種としてはレアなものではないのだが

今回紹介したのは

そんなカラーバリエーションも豊富で多彩な宝石ではあるが

唯一黄色のスピネルは存在しないと言われ幻の宝石と言われています。

なおここで言われる黄色のスピネルというのは

透明で全体均一に黄色な

例えるならクリソベリルやイエローサファイアのような物を指します。


そんな幻の1石であるイエロースピネルですが

内部に鉄のインクルージョンを含む場合は

角度によっては黄色に見えるというレベルでは存在しています。

ただインクルージョン由来な為に大抵濁った感じで綺麗とは言い難く

カット難易度も高くなる為にルースでとなると

途端に見つからなくなります。


なぜ存在しないのかというと

鉄インクルージョンではなく

例えばサファイアで黄色~金色になる要因、

鉄イオンがスピネルに入ると

組成の結びつきの関係で

青~青緑になるためと言われています。

その為に透明スピネルに鉄インクルージョンが入って

反射で黄色く見えるというものしかなくなります。


まだまだ今ほどミネラルショーもなく

SNSも発達していなくて情報交換が難しかった

おおよそ20年ほど前はこういった知識も少なく

鑑別は高額になるために

簡易測定である比重、屈折、熱伝導率などから

スピネルと言われ販売はされていましたが

詳しく検査するとスピネルではないというのは

よくある話で

「イエロースピネル」という幻を追い求め

私自身も2度購入し検査、

知人数人も見つけては検査というのを繰り返しましたが

結果はスピネル判定は1個もなく

イエローアンドラダイトガーネット(トパゾライト)、

ヘッソナイトガーネット、クリソベリル、

トルマリン、ジルコン、ベリル、シトリンと

散々な結果でした。


誰一人として全体透明なイエロースピネルを見たことがない為

どういったレベルの物か分からないので

片っ端からとりあえず購入して検査するという方法しかなく

こういったことが往々にしてありましたが

昨今はこういう情報も出そろってきている為に

イエロースピネル表記で販売していることはなく

悲劇は減っています。

もし全体透明で均一なものがあったら

ソーティングがないものであれば違う石かもという覚悟を持って

購入したうえで検査に出すことをお勧めいたします。


これだけでは語ることは少ないので

スピネル全体の話も記載致します。


スピネルというのは分類にも書きましたが

スピネルスーパーグループに属し

AD2X4という基準組成式で表されるものになり

それぞれ

A = Fe, Mn, Mg, Mn, Si, Ge, Co, Cu, Sb, Zn,Ti, Ni;

D = Fe, Cr, V, Mn, Al, Co, In, Ir, Rh, Pt, Ni;

X = O2-, S2- or Se2-.

になる物を指し、

サブグループとして

最後のX部分が

O2の物をオキシスピネルグループ(Oxyspinel group)

S2の物をチオスピネルグループ(Thiospinel group.)

Se2の物をセレニオスピネルグループ(Seleniospinel group.)

と大別しその中で一般的にスピネルと言われるものは

O2のオキシスピネルグループに属し

A2+D3+2O4の基準組成式のスピネルサブグループと

A4+D2+2O4の基準組成式の

ウルヴォスピネルサブグループ(Ulvöspinel Subgroup)に分かれます


普段目にする宝石のスピネルはこのスピネルサブグループに属し

スピネルの亜種とされる物だけ列挙すると

銅・鉄のクプロスピネル

亜鉛のガーナイト

鉄・アルミニウムのヘルシナイト(ブラックスピネル)

ガーナイトまで変化していないが亜鉛を多く含むガーノスピネル

ヘルシナイトの亜種のセイロナイトなど複数が属しており

鉱物学的には連続固溶体を成しているために

細かく分類する場合は

スピネル-ヘルシナイト系列

ガーナイト-スピネル系列

マグネシオクロマイト-スピネル系列の3つに大別されています。

ただし通常の宝石「スピネル」としては

ここまで細かく分類されていません。

簡易な分け方として宝石のスピネルは

マグネシウム・アルミニウムと言う組成の為

マグネシオスピネルとも言われたりします。


ほんの10数年前までは安価な宝石として

手の出しやすい部類でしたが

1990年代にベトナムのルクイェン地区で

ルビーが発見されたことにより鉱山開発されたあとに

現在最高品質とも言われる

コバルトが発色要因の真っ青なスピネルが発見され

コバルトスピネルとして大人気の石の一つとなり

その影響からかスピネル全体も人気が高まっていき

じわじわ価格が上昇し

さらには2018年にナイジェリアで

通常暗い青だったガーナイトに

こちらもコバルト含有で

前述のコバルトスピネルとほぼ同等の明るさを持つ

コバルトガーナイトが発見され

さらに人気が加速。

昨今では真っ赤なスピネルやコバルト発色のスピネルは

非常に高額になっています。


天然スピネルの発色要因は様々な色相の微量元素が関わっており、

主な物だけでもコバルト、クロム、鉄、バナジウムなど。

この微量元素の含有比率で発色が異なってきており

一口に青といっても紫がかっていたり灰色がかっていたりと

非常に多彩で色相環を作る際には果てがないほど

多く存在しておりスピネルだけを集めるコレクターもいるほど。


スピネルの発色要因は主に

水色~緑~黄緑~緑 二価鉄+三価鉄

青・青紫 鉄+コバルト

バイオレット 鉄

紫~赤紫~オレンジピンク 鉄+クロム

赤、ピンク クロム


合成スピネルも存在し

フラックス法(チャザム法)の物 (ガーナイト)と

火炎溶融法 (ベルヌイ法)(マグネシオスピネル)の物があります。


その歴史は古く1890年ごろに合成サファイアを

ベルヌイ法で作成する研究過程で

1910年に偶然アルミニウムとマグネシウム、

それと着色材のコバルトを混ぜた際に

青い合成スピネルが出来上がったという偶然の産物。

ただし天然スピネルと同じ比率で素材を混ぜた場合

ヒビが入りやすく修正の為に再加熱すると分離してしまい

濁ってしまう欠点のある物で

安定して製造が出来るようになるのは

より材料比率や温度調整が判明してからになります。

日本には1950年代半ば、

第二次世界大戦後に宝石店や時計店に並びだしたのですが

そもそもスピネルという宝石自体世界全体で見ても

まだまだ知名度が低い状態であったために

アクアマリンタイプ(水色)

ジルコンタイプ(無色)

サファイアタイプ(濃い青)

エメラダ(明るい黄緑)

エリナイト(濃い緑)

アレキサンドライトタイプ(変色性)

など他の宝石名を使用したもので流通していました。


もう一方のフラックス法(チャザム法)の合成スピネルは

1970年代からアメリカで研究されたのですが

亜鉛スピネルを目指した物が火炎溶融法では温度足りなかったために

着手されたものとなりますがこちらも試験的な物で

市場には流通していないようです。


特に合成スピネルを語る上で欠かせない物に

少し上でも触れましたが

挿絵(By みてみん)

通称エメラダと呼ばれる合成スピネル(ベルヌイ法)があり

緑寄りの黄緑の物があるため

合成で作れるんだから天然にもあるはず!

と余計にイエロースピネルを求める人が出た要因をも言われます。

ただこの黄緑のエメラダや

明るい緑のエリナイトと呼ばれる合成スピネルは

試験的に作られたものでコストと見合わなかった上に

蛍光性が強すぎて他のどの石とも似ても似つかない為に

他の宝石の代替品としては使えず

少量作られただけに終わり今現在も再作成されていない物で

合成・人造石コレクターが探し求める物になっています。


最後に余談で確証のある話ではなく

与太話の一つですが

スピネルに黄色がないのは

黄色になる成分になった場合

それはクリソベリルと判断されるからだという説もあります。

スピネル MgAl2O4

クリソベリル BeAl2O4

ただし硬度で見た時に

クリソベリルは硬度8.5となるし

スピネルスーパーグループの分類からも外れる為

ただの誤情報、間違った認識というのが一般的で

黄色のスピネルは

インクルージョン由来の物しかないと思った方がいいです。


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