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凡骨の冰姫  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二章 第二の師・武芸王アラン邂逅編

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第二十二話 作戦開始!

――アギト商会掃討作戦決行日。


 〈パーシアン〉南西にある巨大な館、アギト商会の総本山。

 その周囲に集められたバラスティの精鋭たち。まだ鳥も鳴かぬ早朝、戦の火ぶたが切って落とされようとしていた。


 正面扉の前にフィンとレノ含む地上制圧隊、裏門の前に地下制圧隊が揃う。


「お、おい。なんだお前ら……!」


 館の門番が槍を構える。フィンは静かに右手を挙げた。


「はじめるぞ。ディル、キール。動け」

「「了解!」」


 ディル率いる騎馬隊、キール率いる天馬隊は魔石を握りしめ、錬金術によって魔石を獣化。七組の騎馬兵と七組の天馬兵が動き出す。


「行くぞディル=ヴェン騎馬隊!! 盛大に暴れろぉ!!!」


 騎馬隊は門番を轢き飛ばし、正面扉を突き破り、中へと侵入。

 寝起きの商人たちは突然の騎馬の登場に悲鳴を上げる。


「う――うわあああああああああああああっっっ!!?」


 天馬隊は空へと飛び立った。

 アギト商会掃討作戦はこうして幕を開けた。



 --- 



「おらおらおらぁ!! どけどけどけぃ!!!」


 先頭で槍を回し、突撃するディル。

 立ち塞がる敵を槍で蹴散らし、壁を、障害を突き破り、暴れまわる。


「奴らバラスティ家の連中だ! ふざけやがって!!」

「誰のおかげでこの領の経済が安定してると思ってやがる!!」


「クソに(まみ)れた金なんざいらねぇんだよぉ!!!」


 アギト商会の罵詈雑言を槍を振るって吹き飛ばす。

 宙を舞う商人たち。アギト商会の面々はディルの勇猛な戦いぶりに怯む。マーナの作戦通り、初撃で相手を混乱状態にすることに成功していた。


「うろたえるな! 俺達には俺達の戦い方がある! 見せてやれ! 特製ワイバーンダイナマイト!!」


 眼鏡と白衣を纏った男性商人の指示で、特製粘土でコーティングされたダイナマイトが商人たちの手から投げられた。ダイナマイトは空を飛び、推進力をもってディルに迫る。


「へぇ、面白い玩具じゃねぇか!」

魔応(まのう)物質で構成された粘土、それを搭載したダイナマイトだ! 魔力で自在に操ることのできる特注品だよ!」

「面白い、が……温い!!」


 ディルは槍を振り回す。


「なっ!?」


 白衣の商人は驚いた。

 ディルは器用に、縦横無尽に動くダイナマイトの導火線を槍の矛先で断ち切ったのだ。


「パワータイプだと思ったか? 残念だったなぁ!!」


 ディルは槍の柄で白衣の商人の顔面を殴り飛ばす。


「俺は……万能タイプ(パーフェクト)なんだよぉ!!」



 --- 



 〈アギト・ホーム〉最上階。

 窓を突き破って天馬隊が突入する。


「敵襲! 敵襲! うわあああああっ!!?」


 慌てふためく商人たちをペガサスに乗った女性七人が叩き飛ばしていく。


「情報通りなら、このまま真っすぐ行ったら会長室に着く。大将首取って手柄独り占めにして、騎馬隊の男共に差をつけるわよ!」

「「「了解!!!」」」


 三騎のペガサス兵が会長室に突入する。


「ひいぃ!?」


 アギト商会会長のプギーは突然の敵襲に腰を抜かし、椅子から転げ落ちる。


「もらった!!」

「――いやいや、人生そんな甘くないっしょ」


 二本の鎖が部屋を舞い、突入してきたキール以外の二騎のペガサスを斬り裂いた。キールのみ、ペガサスを巧みに動かして鎖を躱した。

 神父服の裾から鎖をのぞかせた男がプギーの前に現れた。キールは男が手に嵌めている手袋を見て眉をひそめる。


(手袋の甲に焔の紋章! 焔炉の騎士団(ファーネス)か!!)


 キールはペガサスから飛び降りる。


「ハクト(ペガサスの名前)! 二人をお願い!!」


 キールのペガサスはペガサスを失って落下するキールの部下二人を背に乗せ、部屋から離脱する。


「そんな!!?」

「た、隊長ッ!!」


 部下二人を逃がしたキールに対し、焔炉の騎士団(ファーネス)の男――ロゼロは拍手した。


「素晴らしいな。その歳ですでに隊を率いるカリスマ性が備わってる」


 薄く開かれた瞼から、黄色の鋭い瞳を見せるロゼロ。


「あまり褒めないでよ、照れるでしょ」

「女の子は照れてる時が一番かわいいからね、もっともっと褒めてあげる」


 キールは銀の槍を構え、突撃する。

 キールの連続突きをロゼロは右手の裾に忍ばせた仕込み刀をガシャン! と出し、その刃で弾いた。キールの攻撃を防ぎ切ったロゼロは足を上げ、蹴り上げのモーションを取る。キールはバックステップを踏み、蹴りの軌道から逃げるが、靴の先から飛び出た刃に反応できず右腕に刃を掠らせた。


「暗器使い……!」

「ってわけさ」


 ロゼロは両手の裾から長い鎖を出す。鎖の先は鋭利に尖っている。


「槍さばきも見事! 楽しめそうだな……」

(コイツ……強い!)

【読者の皆様へ】


この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

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「もっと頑張ってほしい!」

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