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波乱の宮廷舞踏会④

「おいよせエルンスト!王宮内での決闘は禁止行為だ!陛下に知れたらお叱りどころの騒ぎでは無いぞ!!!」


 フランクは愛する弟を侮辱され興奮気味のエルンストの腕を掴み決闘をやめさせようとする。しかしエルンストはフランクに語気を強めて訴えた。


「父上!俺は母上に変わり弟をあらゆる脅威から守ると誓ったのです!弟への侮辱を放置する事は俺自身の誓いに反します!」


 そう言ってエルンストはフランクの腕を振り解き右手に冷気を纏わせた。すると棒状の氷が出来始めやがて氷の剣になった。エルンストの氷魔力で空気や周囲の水分を集め凍らせたのだ。エルンストは氷の剣を構える。


「ほぉ。貴様は氷の魔力持ちか。剣まで作れるとなると実力はA級魔力保持者か?ならばワシの火の魔力とどちらが強いが勝負しようじゃないかぁ!!!」


 グスタフも剣を構え炎を纏わせた。瞬間二人は大声をあげて互いに突撃し剣をぶつけ合う。そのまま鍔迫り合いになりエルンストは周囲に冷気の白煙を、グスタフは火炎を撒き散らし押し合った。


「ワシの炎に触れても溶けん氷の剣とは!奸臣のガキにしては中々やるな!」

「閣下こそ!だが弟の為俺は負けはしない!!!」


 二人は同時に後ろへ飛んで離れるとグスタフは左腕を前に出し炎の塊をエルンストに向けて放つ。エルンストも対抗して冷気を纏わせた氷の塊を放った。放たれた二つの塊は二人の間でぶつかり衝撃波と氷が蒸発した事による水煙を出す。


「キャー!!!」

「うわぁぁぁ!!!」


 衝撃波と水煙に会場はさらに混乱状態になった。会場の出入り口付近は我先にと避難する沢山の貴族や給仕係でごった返す。


「どけ!俺を先に通せ!」

「私が先よ!巻き添えを喰いたくありませんわ!」

「閣僚である吾輩が一番避難を優先されるべきだ!道を開けろ有象無象ども!」

「おいワシを押すな!危ないだろうが!わぁ!!!」


 フランクも避難する貴族らに押されて出入り口へ向かったが途中でずっこけて倒れ身体中を踏まれまくった。


「あだっ!ぐえっ!おいワシを踏んで行くなほげぇ!!!」


フランクは逃げる者達の踏み台にされそのまま気絶した。そうして会場には決闘する二人の他には入り口付近で轢かれたヒキガエルのように倒れたフランクと滅多に見れない決闘騒ぎを見とどけようとする命知らずな一部の若い貴族令息らが残った。


「くそっ!!!閣下と放つタイミングが被ってしまった!ならば!」


 エルンストは魔法の杖を取り出し杖先をグスタフに向け小さく呪文を唱えた。するとエルンストの周囲に水色に光る魔法陣が複数現れ魔法陣の中から鋭く尖る大きな氷柱がいくつも出現した。


氷塊豪雨(レーゲンアイスザプフェン)!!!」


 エルンストが唱えた瞬間沢山の氷柱は一斉にグスタフに向け高速で発射された。グスタフは腰のベルトから出した魔法の杖で火の魔力を込めた赤く光る防御魔法陣を張り迫ってきた氷柱を溶かした。一部の氷柱はグスタフの後ろで見ていた令息の真横を飛んでいき窓ガラスを粉砕した。


「何の次はこちらの番だ!獅子吼火球(ベーレンフランメ)!!!」


 今度はグスタフが杖をエルンストに向け呪文を唱えると巨大なライオンの吼える顔をした炎の塊がエルンストに向かってきた。エルンストもグスタフと同じように氷の魔力を込めた防御魔法陣を展開してこれを防いだ。


「中々決着がつきませんね閣下!」

「もうワシは杖は使わん!サーベルのみで貴様を斬る!」

「望むところだ!!!」


 二人は再び向かっていき剣で打ち合いを始めた。魔力を纏った剣同士がぶつかり合う鈍い音が会場内に響き渡る。周りの令息令嬢達は剣での接近戦に熱狂し両者にエールを送った。一方その頃アルベルトはと言うと……


「はぁ、はぁ、どうにか大臣閣下から逃げられたみたいだけどこれからどうしよう……」


ロムルスとレムスと共に王宮内の男性トイレの一室に隠れていたアルベルトは今後どのようにするべきか迷い頭を抱えた。ロムルスとレムスはそんなアルベルトを心配そうに見上げる。


「ロムルスもレムスももしかして僕を心配してくれているの?ありがとうね……!?」


アルベルトは自身を心配してくれる二匹に感謝して頭を撫でた。直後誰かがトイレに入る気配を察し息を潜める。


「もっ、もしかして陸軍大臣閣下かな……見つからないようにしないと!」

「ワン!ワンワン!!!」

「うぅワワン!ワン!!!」

「ちょっ、ちょっとロムルス!レムス!」


危機が迫るのを察したロムルスとレムスは侵入者をアルベルトに近づけまいと先程までとは一転勇気を出して吠え立てたが見つかりたく無いアルベルトは慌てて二頭を止めようとする。しかし侵入者には気づかれてしまったようで足音が近づいて来た。しかしその次に聞こえた声はグスタフでは無かった。


「ロムルス!レムス!そこにいるのですか!?」

「あれ?陸軍大臣閣下では無いのですか?」

「その声はベルンシュタイン伯爵家のアルベルト様ですか?」

「えっ!?あっはい!あなたは……?」

「私は宰相秘書官のヨハンと申します。脱走した陛下の猟犬を捜索中でしたがこのトイレがある通路付近で足音と吠え声を耳にしたので……何故一緒にトイレに隠れているのか事情を話して下さいませんか?」



★★★


「何!?ロムルスとレムスが囲いから逃げたじゃと!?」

「はっ、給仕係を通じて会場にいたワシに報告がございました。世話係の者が囲いの鍵をかけ忘れたとの事で現在手分けして捜索中です。ワシの秘書官であるヨハン君も手伝っており見つかり次第彼から報告が来る事になっております」

「えぇいあの世話係共何をしておるのじゃ!」


 エルンストらが決闘を始める数分前、国王控え室ではマルガレーテが軽食に用意されたハムと卵のサンドイッチを食べていたがその時入室して来たヴェンツェルから自身の猟犬二頭が脱走したと聞き驚いた。


「ロムルスとレムスは見知らぬ者には攻撃的な犬じゃ!何かあってからでは遅い!余も探しに行くぞ!」

「しかし陛下、会場で副宰相閣下のご令息がお待ち……」

「テオドールとは踊らぬ!そもそも余はあやつの面と鼻につく性格が苦手じゃ!行くぞアデリーナ!」


 マルガレーテは自身との謁見とダンスを希望しているヨハネスの息子テオドールからの誘いを断ると宣言し自身の猟犬達を探しに行こうとドアの前まで移動した。だが次の瞬間ドアがバンと勢いよく開き息を切らした兵士が入ってきた。


「なっ、何事じゃ!余が部屋から出ようとしている時に!」

「陛下!緊急事態です!舞踏会会場内で決闘が発生致しました!!!」

「何ぃ!?どういう事じゃ!」


 疲れてへたり込んだ兵士から決闘騒ぎが起こった事を聞き国王控え室にいた全員に緊張が走った。


「一体誰と誰が戦っておるのかね!」

「陸軍大臣閣下とベルンシュタイン伯爵家のエルンスト様です!」

「何!?グスタフ殿とエルンスト殿が!」

「何故あやつらが決闘など……!」


 ヴェンツェルとマルガレーテは戦っている者達の名を聞き目を丸くして驚いた。ヴェンツェルはすぐに主君の方へ振り向き決闘を止める事を優先するように進言する。


「陛下!ロムルスとレムスについてはヨハン君達に任せ決闘騒ぎを収束させる為に会場へ参りましょう!ワシは一足先に行って参ります!」

「陛下、私も閣下と共に参ります」


 ヴェンツェルは決闘騒ぎを収束させる主君より先に為アデリーナと国王控え室を出て会場へ走って向かった。マルガレーテも控え室に来た兵士と共にドレスを少したくし上げ小走りでヴェンツェル達の後を追いかけた。


「全くベルンシュタイン家の連中は無礼な奴らばかりじゃ!!!なぜ余が決闘を止めに行かねばならぬ!」


 一方会場ではグスタフとエルンストが決闘を続けていたが中々決着が付かず両者共に疲労が蓄積し苦しい表情になっていた。


「このままではきりがありません。陸軍大臣閣下、次の勝負で全ての体力と魔力を込めて斬り合い先に負傷させた方が勝ちというのはどうでしょう」


 息を荒くしながらエルンストはグスタフに対して提案をする。


「良いだろう!次で決着をつけてやる!」


 同じく疲れから息切れを起こしていたグスタフは提案を了承した。二人は力を振り絞り剣に魔力を込めながら構えた。グスタフの剣は今までよりも勢いの強い炎で覆われ、エルンストの氷の剣はより大きく太くなった。周りの令息令嬢の声援が最高潮に達する中二人は決着をつける為相手に向かい走り出した。


「「はあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」


 二人が雄叫びをあげて向かい合い剣をぶつけ合おうとした瞬間、アデリーナとヴェンツェルが現れ二人の間に素早く割って入った。ヴェンツェルはエルンストの剣をサーベルで止め、アデリーナはスティレットでグスタフの剣を止めた。


「「なっ!!!」」


 突然の女王の近侍と宰相の介入に驚きの声をあげ目を見開く二人。ヴェンツェルがサーベルに炎の魔力を伝え赤く光らせるとエルンストの氷の剣が一瞬で白い煙をあげ蒸発した。


「陸軍大臣閣下でも溶かせなかった氷の剣が……!」

「どういう理由かは知らんが決闘は良くないぞいエルンスト殿!」


 剣を失ったエルンストは驚愕したまま後ろによろめいた。一方アデリーナもスティレットから強力な青い電流を放ちグスタフを吹き飛ばした。


「ぐあっ!!!」

「陸軍大臣閣下、王宮内での決闘は規則違反です」


 声をあげ床に倒れたグスタフにアデリーナは表情一つ変えず淡々と言った。グスタフとエルンストの決闘が強制的に終了させられたその時出入り口から兵士の大声がした。


「女王陛下ご入場である!道を開けよ!」


 兵士の声と同時に出入り口側で決闘を見ていた令息達が道を開けた。間も無くマルガレーテが会場へ入って来ると入り口付近で倒れたままのフランクを見つけた。


「こいつはフランクか。怪我をして気を失っておるようじゃ。医務室まで移動させ気付けのブランデーでも口に含ませよ」

「ははっ!」

「余はこの決闘の後始末をせねばならぬからな」


 マルガレーテは近衛兵にフランクの処置を命じた後決闘を起こした二人の前まで来た。マルガレーテに気づいたグスタフとエルンストはすぐさま姿勢を正して跪く。マルガレーテは当事者二人を見下ろして言った。


「王宮内での決闘は禁止行為のはずじゃ。グスタフ、エルンスト、なぜこうなったのか理由を説明せよ」

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