作品設定紹介その6(世界設定と蝶や蛾の紹介)
★世界設定★
(霊魔力)
修道女アグネスなどが持つ属性魔力。火や水など普通の属性魔力を持つ人間から突然産まれてくる事がある大変希少で不思議な魔力でこの魔力を持つ者は肉体から幽体離脱をして霊体と呼ばれるもう一つの体を作りその霊体に意識を移す事が出来る。霊体は物を持ったり喋る事は不可能だが見たり聞いたりする事は可能で魔力で結界を張ってある場所以外は自由に移動でき壁をすり抜けたり空を飛ぶ事が可能である。人間以外の自然界の生物ではごく一部でしか確認されていない。またその特性から人間社会においてもスパイなどの諜報活動において重宝され特にフソウ国では忍者の家系で意図的に霊魔力者同士の婚姻を結び霊魔力を持つ子孫を生まれやすくする事で優れた忍を輩出した歴史もある。一方でその希少さや霊体になるという不気味さ故に特にユーロッパにおいて迫害の対象になって来た面もあり、アグネスも幼い頃周囲に霊魔力が発覚した事が原因で母親を殺され村を追い出された。
(イリス教)
ボナヴィアを始めユーロッパ大陸全体で広く信仰されている一神教。唯一神とその意思を伝える預言者である預言者イリス(イーリスやイレス、イリオスとも)を信仰対象とし三つに分かれた枝付き燭台がシンボルである。また経典は通称(聖典)と称される。二千年前に中東イースシアで始まったとされ古代王アトムの太陽の帝国拡大を機にユーロッパに伝播したとされる。教義は現実のアブラハムの宗教に似通った部分が多く男尊女卑の思想や進化論の否定など同様の課題も抱える。また教義の中に(生き物は多足であるほど不浄)というのもありそれにより蝶や蛾だけで無くその幼虫も愛でるアルベルトは毛嫌いされている。宗派も分かれており預言者の代理である教皇を頂点におく正統派、中世の宗教改革によりボナヴィアやドルツ諸国で誕生した改革派、そして東ユーロッパで信仰される聖教派などが代表的な宗派である。ボナヴィアでは王族や貴族の多くが正統派であるが宗教改革の中心地となった歴史から平民には改革派を信仰する者も多数いる為アインブルク朝による独立時に定められた憲法では正統派を国教として優位性を示しつつ政教分離と国王による両宗派の保護が義務化されている為聖職者が政治に直接参加する事は無い。ただ現在の女王マルガレーテは前述の教義の問題により両宗派ともあまり良い関係では無い。
★蝶と蛾★
(アカメユキシャク)
・分類:鱗翅目シャクガ科フユシャク亜科
・開翅長:雄15〜20mm、雌9mm
・分布:北〜東ユーロッパから極東イースシアの森林地帯
・食草:マツ科のモミ属やトウヒ属の葉
・魔力:火(雌の成虫のみ)
・モデル蝶:複数種類のフユシャクの仲間
・生態:火の魔力を持つシャクガの仲間。名前の由来は雌の体が真っ白で目が赤みを帯びている事から。雄も似た体色だが色はやや茶色みがかったクリーム色に近い。北方系の蛾で幼虫の食草であるモミやトウヒが生える雪深い森林地帯に好んで生息する。フユシャクと呼ばれる真冬に成虫になるグループの蛾でこの仲間の例に漏れず雄の成虫は一般的なシャクガと同じ広く薄い羽を持ち飛翔するが雌は羽が小さく退化しており飛ぶ事が出来ない。その為フェロモンを出して雄を誘引し交尾を行う。火の魔力は雌の成虫のみが持つが非常に弱く発火する事は無い。雪を避け体を温める他に雄に対し自分の生命力の強さを示し繁殖に繋げる為のアピールにもなるのではないかと考えられている。なお雌雄共に成虫は食事をせず寿命は僅か一週間程とされる。
(ゼーレルアゲハ)
・分類:鱗翅目アゲハチョウ科属不明(ユニオンアゲハ属?)
・開翅長:20mm
・分布:ブリトニア領ゼーレル諸島(ヒンド洋)
・食草:ミカン科の柑橘類の葉?
・魔力:不明(風魔力?)
・モデル蝶:セーシェルアゲハ
・生態:ヒンド洋に浮かぶかつてガロワ共和国領で現在ブリトニア王国領となっているゼーレル諸島に生息していたとされるアゲハ蝶。雄は黒地の翅に構造色の青く美しい色の鱗粉を持つが雌は焦茶色で質素な翅をしている。ガロワ統治時代に島々を探検した学者が記録した雄雌のペア一組の記録しか残っておらず絶滅したと見做されている。一方翅の特徴が同じヒンド洋のガロワ領ユニオン諸島に生息する現存種のユニオンアゲハに酷似している為ユニオンアゲハの亜種或いは人為的にもたらされたユニオンアゲハが繁殖したという説もあるが本種はユニオンアゲハより10mm小さくまたユニオン諸島とゼーレル諸島は距離も離れている為別種であるという意見もあり真相は謎である。生態の面もユニオンアゲハと似ていると仮定すれば食草は柑橘類でありまた風魔力を有し飛翔時に翅から発生する風を強化し素早く飛ぶのに適していたと考えられる。
(クラドルヴァ辺境伯領の在来カイコ)
・分類:鱗翅目カイコガ科カイコガ属
・開翅長:雄30mm、雌35mm
・分布:ボナヴィア王国クラドルヴァ辺境伯領(飼育個体のみ)
・食草:クワの葉
・魔力:無魔力
・モデル蝶:カイコ(欧州系)
・生態:ボナヴィア王国西南部のクラドルヴァ辺境伯領内でのみ飼育されている在来種の蚕。言い伝えによればガロワ王国で迫害を受けユーロッパ中に散らばった宗教者により餌のクワと共に辺境伯領にもたらされたと言われそれから数百年近く生糸を取る為この地域で飼育されて来た。成虫の見た目は一般的な蚕と同じ白色で幼虫も同様だが頭部上にある眼状紋と体の第三節にある半月紋と呼ばれる模様は他の蚕より色味が薄く尾角と呼ばれる尻尾も短め。ボーナーヴァルト山脈の山に囲まれた狭く寒暖差が激しい辺境伯領の環境に適応した種でもあり幼虫成虫共に通常のユーロッパ種の蚕より体が小さく幼虫はやや餌の不足に強くまた頭部が大きめである為領内で育てられる硬めのクワの葉も齧る事が出来る。ただ辺境伯の厳重な管理の元隔絶された環境で育てられてきた為糸の質を上げる品種改良が進まず微粒子病など病気に対する抵抗性も低いとされる。前国王は王国全土でこの蚕を育てる絹生産国化政策を進めたが辺境伯の猛反対の他成長が遅い事や病気に極端に弱い事などから計画は頓挫した。近年領内に東洋からカイコノイシバエ(ヤドリバエ科)という特殊な魔力を持った寄生バエが侵入し幼虫が石になって死んでしまう石蛆病が蔓延した事で絶滅寸前に陥ったがアルベルトの活躍により辛うじて絶滅を回避し個体数は回復、現在は王国政府の協力の元他の蚕と掛け合わせ品種改良を行う為の基礎とする為より大切に保護されている。
(お知らせ)
最新話を投稿予定でしたが先に世界設定を投稿する事に致しました。次回いよいよ後編開始です。
次回更新予定:19日




