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『夕殺人の這う範囲』の全ての読者たちへ⑤
児子原島殺人事件の後、僕は多少の罪悪感に苛まれた。
殺したいほど恨んでいたが、
実際に殺すとやはり罪悪感というものが多少は湧いてくるのだという事を知った。
だから僕は小説を執筆した時、その中に全ての真実を隠しておいた。
もしそれに気付いた者が一人でもいれば、僕は真実を打ち明けて自首しようと思っていた。
だが、その真実に気付いてくれた者は誰一人としていなかった。
あんなに分かりやすい場所に隠しておいたのに、誰一人として気付かなかった。
僕は最初から、全てを仕組んだのは【殺人犯の俳優】だと打ち明けていた。
何処にそんなことを書いていたかって?
もちろん、すぐに気付かれないために多少の手は加えてある。
だが、僕の小説を手に取った者であれば、
必ずその部分に目が行くような場所に隠しておいたのだ。
まさに今、君が読んでいるこの本を閉じて表紙を見てごらん。
表紙には、『夕殺人の這う範囲』というタイトルが書かれているだろう?
【ゆさつじんのはうはんい】
ほら、とっても簡単なアナグラムだろ?




