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未来へ羽ばたく家⑤

【大富豪は九名の友人に招待状を送った。

その中には長年彼に仕えているメイドや、彼の顧問弁護士などもいた。

そして招待状を受け取った九名全員が、彼のパーティーに参加するために本土から

小型船に乗りこの孤島へとやってきた。】


→そもそもこのパーティーは、僕が財前にお願いして開いてもらったものだ。




【今回私が招待した者は皆、君の言う通り私にとても親切にしてくれるよ。

それは彼らが良い人間であるからに違いない。

けれども、どうしても彼らのことを心から信用できないんだ。

それは僕が大富豪だからだろう。

金は人生を豊かにするが、それは時として暴力の原因にもなりうるんだ。

数多の事件を解決してきた君ならわかるだろう?

僕は怖いんだよ。

僕が保有する多くの資産や財産のせいで、たった一つの僕の命が脅かされる日が来るのがね】


→財前がこんなことを言うわけがない。

彼は自分以外の人間を、ただの駒としか考えていないような人間だ。




【女優はそう言いながら、俳優のズボンのバックポケットに手を突っ込んだ。

そして、女優が俳優のバックポケットから取り出したそれを見た記者は、その場で尻もちをついた。

「やめなさい!今すぐそれを下ろすんだ!」

私は手のひらサイズの小型拳銃の銃口を記者に向けている女優にむかって言った。

だが、彼女はまるで何かに取り憑かれているかのように、

なんの躊躇もなく記者に向かって引き金をひいた。】


→僕は警察に、財前が趣味で集めていた拳銃を手に取った遥が発砲したと話した。

それ自体は事実だ。

だが、あの拳銃には元々は銃弾が入っていなかった。

銃弾を用意し、拳銃に銃弾を込めたのは僕だ。




【そこで大富豪は、以前から親交のあった俳優に全てを話したうえで、彼に女優を紹介した。

自分よりも素敵な男性が現れれば、彼女もきっと自分のことを諦めてくれるだろうと思ったからだ。】


→僕は財前と遥の関係を知らなかった。

僕は財前から、

「遥が君のことを好いており、君と是非一度会ってみたいとうるさいんだよ」

と言われ、彼女を紹介された。

まさか二人があんな関係だったなんて、想像すらしていなかった。

あの時、僕はまだ勇太が財前と遥の子供だという事を知らなかった。

それどころか、遥のお腹の中に勇太がいることすら知らなかった。




【大富豪の思惑通り、二人は徐々に距離を縮めていった。】


→財前から遥を紹介された日の夜、僕は遥かと一夜を共にした。

だが、それも財前と遥の計画のうちだったのだろう。

それから数週間が経ったある日、遥から赤ちゃんが出来たと連絡があった。

当然僕は、遥のお腹の中にいる赤ちゃんを自分の子だと思った。

だが、それも全て嘘だったんだ。

僕が遥と一夜を共にしたあの日、勇太は既に彼女のお腹の中にいたのだから。




【《誰が、大富豪を殺したのか?》】


→僕だよ。それに、彼だけじゃない。




【なぜならこれは、ただの推理小説なのだから。】


→これはただの推理小説だ。

事実は小説と大きく異なる。

警察が信じた僕の供述も、果たして事実だろうか?

いや、違う。

すべては、殺人犯の俳優である僕が仕組んだものだ。



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