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未来へ羽ばたく家④

「夜分遅くにすいません」

 

藤堂は家の中から出てきたエプロン姿の女性に向かって、

警察手帳を見せながら言った。

 

刑務所を後にした藤堂は、霧島家へと向かっていた。


『刑事さん、霧島さんの家に行ってみなよ』

 

面会室を出る藤堂に、迫間が言った。

 

それがどういう意味なのかは分からなかったが、

藤堂は迫間の言う通り霧島家に行くしかなかった。

 

霧島家は誠と勇太の二人だけだと思っていた藤堂は、

家の中から見知らぬ女性が出てきて少しだけ驚いた。




勇太の母親、つまり誠の妻は二年半前に起きた児子原島殺人事件の際に亡くなっている。

 

果たして目の前にいる女性は霧島家とどんな関わりのある人物なのだろうか?

 

すると、藤堂にまじまじと見られたエプロン姿の女性は、

「初めまして。この家の家政婦をしている関と申します」

会釈をしながらそう言った。


「すいません、家政婦の方でしたか。

こんな時間に申し訳ないのですが、誠さんはいらっしゃいますか?」


「旦那様なら、一昨日から福岡に行ってます」


「福岡ですか?」


「ええ、新しく始まるドラマの撮影か何かみたいで」


彼が執筆した『夕殺人の這う範囲』のせいで、

今では霧島を小説家だと勘違いしている者も多い。


だが、彼の本業は役者だ。


「あんな事があった直後なのに、霧島さんも大変ですね」


「相当ショックを受けているご様子でしたけど、

だからこそ仕事をしている方が気が紛れるから良いと仰っていました」


「なるほど、そうですか。

ところで、もしよければ家の中を少しだけ調べさせてもらっても良いですか?」

 

すると彼女は、二つ返事で藤堂を家の中へ案内した。


「勝手にお邪魔して、霧島さんに確認を取らなくても大丈夫ですか?」


「もし刑事さんがいらっしゃったら何でも協力するようにと、旦那様から言われているので」


「そうでしたか。それでは、遠慮なく」


藤堂は言葉通りずかずかと家の中を調べ始めた。


「お坊ちゃまも呼んできましょうか?ご自分の部屋で宿題をしているはずなので」


「いえいえ、大丈夫です。あの、誠さんの部屋はどちらになりますかね?」


「旦那様の書斎でしたら、この奥になります」

 

藤堂は関に案内され、誠の書斎へと向かった。


「すいませんが、ちょっと調べさせてもらいますね」


「わかりました。リビングの方にいますので、何かあればお声がけください」

 

誠の書斎には、家族三人で写っている写真や、

彼が出演した映画のポスターなどが飾られていた。

 

本棚には様々なジャンルの小説が並べられており、

その中には彼の執筆した『夕殺人の這う範囲』もあった。

 



何の気なしに彼の小説を手に取った藤堂は、ページをパラパラとめくった。

 

すると、赤いボールペンで何かが書かれているページを見つけた。

 

書かれている文字を読んだ藤堂は、

「・・・なんだよ、これ」

思わずそう口にした。


 藤堂がさらにページをめくると、他のページにも赤い文字で何かが書かれていた。



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