表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/51

未来へ羽ばたく家②

いつものように二人で酒を交わしていると、

迫間がおもむろに上着のポケットから一枚の封筒を取り出した。


「これ、貰ってくれるかな?」

 

迫間から手渡された封筒の中身を見て、松永は驚いた。


「ちょっと、これどうしたんですか?」


封筒の中には、一万円札が三十枚ほど入っていたのだ。


「この一年間でそれしか貯まんなかったんだけど。

松永君も知ってる通り、僕って独り身だし。

それに、お酒を呑むこと以外にこれと言った趣味も無いから。

だから、よければ松永君に使ってもらえたら嬉しいなって思って。

漫画家になるのって、結構お金が必要なんでしょ?その足しにしてよ。

こんなおじさんにいつも付き合ってくれてるお礼だと思って、どうか受け取ってくれないかな?」

 

封筒の中身を見て驚いている松永に、迫間はそう言った。


「いやいや、こんな大金受け取れるわけないじゃないですか」


「そんなこと言わずに、松永君に使ってもらいたいんだよ」

 

迫間はなんとかして松永に封筒を受け取ってもらおうとした。

 

しかし、結局は松永が、

「こんな大金、やっぱり受け取れません」 

と言い、現金の入った封筒を迫間に返した。

 

迫間は少しだけ寂しそうな顔をしながら、封筒を上着のポケットに戻した。

 

それから数日が経った日の夜、迫間は交通事故で亡くなった。

 

迫間が亡くなった日の翌朝、彼が交通事故に遭ったことを知らない松永が家のポストを開けると、

そこには一万円札が三十四枚入った封筒が入れられていた。

 

そして封筒の裏側には、

『ごめんね』

と一言そう書かれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ