勇太くん誘拐失踪事件③
翌朝、署に泊っていた藤堂の携帯に一本の電話が入った。
「
藤堂さん!犯人から連絡が来ました!」
電話をかけてきたのは霧島誠だった。
その日の朝、いつの間にかソファに座ったまま眠りについていた誠は、
電話の鳴る音で目を覚ました。
「息子は預かっている。
息子を返して欲しければ、今から四時間後の午前十一時ぴったりに、
新宿駅の新南口にあるコインロッカーに現金五百万の入ったバックを入れろ。
ロッカーの鍵は黄色の袋に入れて、ロッカーの隣に置いてあるゴミ箱に入れるように。
それと、現金をロッカーに入れるのはお前がやれ。
もし少しでも遅れたり、お前以外の者がロッカーに現金を入れるような真似をすれば、
その時点でお前の息子を殺す」
男は誠にそう伝えると、電話を切った。
藤堂が予想していた通り、やはり勇太の誘拐は身代金目的であった。
犯人から電話があった四時間後の午前十一時、
藤堂や松野を含めた十名の警察官と霧島誠は新宿駅にいた。
犯人の要求通り、警察が用意した現金五百万の入ったバッグをロッカーに入れた誠は、
ポケットから取り出した黄色い袋にロッカーの鍵を入れると、
隣に置いてあったゴミ箱の中に袋を入れた。
十名の警察官は、様々な場所から誠とロッカーを監視していた。
だが、何時間待っても犯人は現金を取りに来なかった。
それどころか、その日の朝の電話を最後に、またしても犯人からの連絡が途絶えたのだ。




