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児子原島殺人事件について

『児子原島殺人事件』


そう名付けられた事件は、今から二年半前に児子原島という孤島で起きた。

 

その日、資産家として有名だった財前信一郎が所有していた孤島に建てられた別荘で、

とあるパーティーが開かれていた。

 

財前はそのパーティーに、長年彼のメイドとして仕えていた女性を含めた九名の友人を招待した。

 

招待客の中には、霧島誠の姿もあった。 

 

霧島の他には、財前の顧問弁護士や彼の主治医、

古くからの友人であり警察もお手上げの難事件を幾度も解決してきた名探偵などが招待されていた。

 

パーティーは何事も無く終わり、

招待客達は二階にある十部屋の客室で各々の時間を過ごしていた。

 

だが、パーティーが終わってから一時間程が経った午前一時、別荘中に悲鳴が響き渡った。

 

二階の客室にいた招待客達は何事かと思い慌てて一階へ下りると、

そこには椅子に座った状態で首から血を流している財前の姿があった。


「・・・ダメだ。既に亡くなっている」

 

慌てて財前のもとに駆け寄った医者は、彼の手首を握りながらそう言った。


「皆さん、まずは落ち着いてください。落ち着いて、その場から動かないように。

それから、大富豪さんには誤っても触れることが無いよう気を付けてください」

 

名探偵は招待客達に向けて、そう注意を呼び掛けた。

 

一時間程前まで一緒に酒を交わしていた財前の変わり果てた姿を見て、

霧島や他の招待客達は一瞬にしてパニックになった。

 

それからは、本当にあっという間の出来事であった。


「皆さん落ち着いてください。

大富豪さんがここにいる誰かに殺されたと考えるのはまだ早い。

そう考えるには証拠がまだ一つもありません。

単なる事故だという可能性だって十分にあります。

だから皆さん、どうか落ち着いてください」


名探偵はパニックになっている招待客達に向けて何度もそう言ったが、

彼の声は興奮状態の招待客達の耳には届いていなかった。


「誰よ!誰が殺したのよ!」

 

パーティーには、子役時代から活躍している有名な女優も参加していたのだが、

財前の遺体を見た彼女は誰よりもパニックになっていた。


死亡した財前のいる一階の大広間には、

彼が趣味で集めていた拳銃が至る所に飾られていたのだが、

興奮状態の彼女はそのうちの一つを手に取ると、拳銃の銃口を招待客達に向けた。


「落ち着いてください。その拳銃は本物だが、弾は入っていない。

だから、そんな事をしても意味が無いんです。

だからどうか、その手に握っている拳銃を下ろしてください」

 

名探偵は彼女をなだめるようにそう言った。


だが次の瞬間、一発の銃声が別荘中に響き渡った。


「・・・おい、嘘だろ」

 

医者はそう呟きながら、その場にうつ伏せになるように倒れた。


弾が入っていないと思われたその拳銃から発射された銃弾が、医者の胸を貫いたのだ。

 

その場に倒れこんだ医者の胸から流れ出てくる血を見て、招待客達は考えることをやめた。


『次は、自分が殺されるかもしれない』

 

目の前で繰り広げられた悲惨な状況を目の当たりにした彼らの本能が、

考えることをやめた彼らの身体を動かした。

 

女優が撃った銃弾に倒れる者。


そんな彼女に対し、テーブルの上に置いてあった食用ナイフで応戦しようとする者。


辺りは一瞬にして血の海となった。


そして気が付いたときには、霧島以外の全員が亡くなっていた。


その後の捜査で、財前の死は心臓発作である事が分かった。


首にあった傷は、死ぬ間際の財前が自分で引掻いたものであり、

身体中に付いていた赤い液体の正体は、こぼれた赤ワインであった。


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